女性騎手たちと親交のある、
競馬リポーターの大恵陽子さんが、
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(毎週金曜 更新予定)

COLUMN

Vol.55 10年ぶりのLJSは濱尚美騎手が優勝!


先週18日に行われたレディスジョッキーズシリーズ(LJS)名古屋。
昨年11月の盛岡、高知の戦いを経て、名古屋の地で濱尚美騎手(高知)の総合優勝が決まりました。

今回のコラムでは、LJS名古屋のオフショットなどをご紹介します。

まずは、優勝者の濱騎手。
高知で2連勝を挙げ、暫定1位でこの日を迎えたのですが、前日にはサイドの髪を青く染めてきました。



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「いつも行っている美容院の予約が取れなくて、初めてのところに行ったんですけど、『明日イベントがあるので、とにかく青くなるように染めてください』ってオーダーしました」

普段は全国各地に散らばっている女性騎手が集まるLJSはちょっとしたイベント感があり、おしゃれをしたい気持ちが沸いてきたのでしょう。

そんな高揚感が漂う中、第1戦は神尾香澄騎手(川崎)がマイペースに持ち込んで逃げ切り勝ちを決めました。



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神尾騎手にとっては初めて騎乗するコースで、砂質も違えば、小回りも慣れなかったと思いますが、外から先手を取るといいペースに持ち込みました。

検量室前に戻ってくると、いい笑顔。



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坂口義幸調教師も笑顔で出迎えました。



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騎乗したニシノステラは坂口厩舎所属の丸山真一騎手が主戦。
レース後はタイミングが合わず丸山騎手に会うことができなかったのですが、

「ここまで馬を作ってくださった厩務員さんや丸山さんに感謝しています。丸山騎手にはまだ会えていないのですが、お礼を伝えたいです」

と話しました。

そして暫定2位の神尾騎手が勝ったことで、総合優勝の行方は第2戦の結果次第になりました。

神尾騎手が勝ち、濱騎手が3着以下なら神尾騎手の逆転優勝。
神尾騎手が勝てなければ、濱騎手は自身の着順に関わらず優勝、という状況。

これにソワソワしたのは、追いかけられる立場の濱騎手。

「ちょっと装鞍に行ってきますけど、またスグ戻ってきます!ポイントとか状況が気になるので」

と、第2戦の装鞍を終えるとダッシュで報道陣がいる検量前に帰ってきました。



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濱騎手、神尾騎手それぞれに取材を受けつつ、ポイントについては報道陣に逆取材しつつ迎えた第2戦。

さぞパドックの控室はピリピリした緊張感が漂っていたことだろう……と思いきや、プライベートの話で盛り上がって女子会みたいだったようです。
宮下騎手も「昔のLJSはピリピリしていて怖い印象しかなかったんですけど、みんな和気藹々としていました」と。
なんせ、LJS名古屋出場騎手5名中3名がデビュー3年未満。フレッシュな顔ぶれになりました。

そんな楽しい雰囲気でも、馬に跨るとスイッチが切り替わるのがジョッキーたち。
運命の第2戦は、木之前葵騎手(愛知)が制しました。



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木之前騎手はLJS盛岡と高知は鎖骨骨折のため欠場し、この日がLJS2021初出場。

「最後にアピールできてよかったです」

と、直線では同じ名古屋の先輩・宮下騎手が迫りくるところをしのぎきっての勝利でした。



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余談ですが、名古屋競馬場の直線の写真には背景に団地が写るのですが、3月11日の開催をもって現在の名古屋競馬場は幕を閉じ、弥富に移転します。
よって、上の写真のように団地をバックにした直線の攻防が見られるのもあと僅かとなりました。

さて、検量室前に戻ってきた木之前騎手はマテラシオンの首筋を撫で、厩務員さんとグータッチで喜びを分かち合いました。



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一方、宮下騎手は惜しくも2着でしたが、第1戦も2着で高ポイントを獲得したことで、順位を上げて総合3位に入賞。



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「5人中3位※はちょっと微妙ですけど、入賞できてよかったです。
息子たちに『女性だけのレースがあるよ』と言ったら、『がんばってきて』と声をかけてくれました。
帰ったら『3位になったよ!賞金ももらえたよ』と伝えたいと思います。
きっと『ゲーム買ってくれる?』って言うと思います(笑)」

※欠場などによりLJS名古屋に出場したのは5名となりました。

また、深澤杏花騎手(笠松)はこの日、2戦とも3着で上位争いまであと一歩。



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この日は朝、「がんばれよ」と地元の人たちから送り出されて名古屋競馬場にやってきました。

「普段、喋る機会のない他地区の女性騎手と話せてすごく楽しい時間でしたけど、詰めが甘いレースが多く、勝てるところも勝てないレースがあったので、次の機会があるならもっと上達したいです」

LJS高知の時も地元の厩務員さんたちは画面越しに深澤騎手を応援してくれていました。
それだけに結果を残せなかった悔しさが増しそうですが、デビュー2年目といっても開催自粛などでレースに乗っている期間はそれほど長くないですから、ここから経験を積んでどんどんステップアップしてほしいです。



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それぞれに悲喜こもごもだったLJSは、怪我や休養中の騎手が出たため最終的に5名での戦いとなってしまいました。
しかし、まずは何より「女性だけのレース」として10年ぶりに復活できたことに大きな意味があるように思います。

来年度は女性騎手の参加人数が増え、そしてLJSを続けていった延長線上にこのレースの再びの定着、さらにはJRAの女性騎手も加わって発展していく未来を描くことができればなぁ、と個人的には思う次第でありました。

  • 大恵 陽子競馬ファン歴25年 女性競馬リポーター

    グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。

  • 大恵 陽子
    競馬ファン歴25年
    女性競馬リポーター

  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。