SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.2

北海道所属のまま目指す
3歳ダートグレード戦線

ブラックバトラー(JBC2歳優駿)

ブラックバトラー(JBC2歳優駿)

 JBC2023は、地方馬の勝利や、4競走の発売額が70億円を超えるなど、大盛況で幕を閉じた。JBC開催は、始まってしまえばあっという間に1日が過ぎ去っていく。JBC2歳優駿JpnIIIが加わってから、私は門別にいる状況が続いているが、1つのカテゴリーしかない門別競馬場でも、開門を待つ車が国道沿いに列を作り、数時間経てば駐車場が一杯になってしまうほど。JBCスプリントJpnIのゴールシーンは、記者席でもイグナイター(兵庫)に歓喜し、拍手が沸き起こった。場所は離れていても、地方競馬に携わる人たちの一体感は凄い。

 JBC2歳優駿JpnIIIは、フォーエバーヤング(JRA)の圧勝だったが、大きく立ち遅れながら3着に追い込んできた地元のブラックバトラー(北海道)の走りもインパクトはあった。騎乗していた落合玄太騎手は「デビュー戦以来に騎乗させてもらいましたが、当時はゲートの中で脚をバタバタさせていたぐらいの馬なのに、今回はゲートが開いた時にビタッと膠着してしまいました。急かして行っても仕方ないのでリズム重視で道中は運びましたが、直線の脚を考えると残念でなりません」と悔しそうな表情で振り返っていた。

 「あの出遅れがなければ……」という声が多かった一方で、「逆に1頭でノーストレスだったことが、あれだけ脚が溜まる要因になったとも考えられるので……」と、落合騎手から意外な答えが返ってきた。シニスターミニスター産駒は揉まれ弱い傾向がある(自身の現役時もブリンカーを着用)ので、その辺りも理解した言葉だったように感じた。

 そのブラックバトラーは今後、北海道所属のままダートグレードへの挑戦を決めている。全日本2歳優駿JpnIも視野に入れつつ、中距離を走ってきたことから、1月17日に1800mで争われるブルーバードカップJpnIII(船橋)への出走が濃厚だ。

 新たにダートグレードに昇格したブルーバードカップJpnIII、雲取賞JpnIII(大井)、京浜盃JpnII(大井)では、ホッカイドウ競馬の2歳重賞が指定競走となっている。ブルーバードカップJpnIIIは、8月10日に行われたブリーダーズゴールドジュニアカップが指定競走となっており、その優勝馬が後にサンライズカップで5着以内となるか、JBC2歳優駿JpnIIIで地方馬上位3頭以内となった場合、優先出走権が与えられる。雲取賞JpnIIIと京浜盃JpnIIは、指定競走であるサンライズカップの優勝馬と、JBC2歳優駿JpnIIIの地方馬上位1頭が、どちらかのレースに優先出走できる。

 ブラックバトラーは指定競走を勝っているので、ブルーバードカップJpnIIIには確実に出走できる。雲取賞JpnIIIもしくは京浜盃JpnIIは、JBC2歳優駿JpnIIIの上位1頭なので、優先的に出走できる可能性は高い。

 優先出走はなくても、出走馬選定委員会による選定の中で、地方所属時の総収得賞金順という項目もある。南関東には及ばなくても全国的に賞金がアップしている状況で、他地区の馬でも賞金上位にランクされる馬もいそうだ。南関東の重賞でも、ホッカイドウ競馬所属馬が鎌倉記念を勝利し、平和賞ではワンツースリーを決めた。ローレル賞でもホッカイドウ競馬所属馬が2着に健闘している。南関東所属馬が賞金的に必ずしも有利な状況とは言えないだろう。

 直近で言えば、兵庫ジュニアグランプリJpnIIには、他地区枠でホッカイドウ競馬所属馬が3頭選定されている。ネクストスター門別を制して5連勝中のトラジロウを筆頭に、栄冠賞優勝馬のストリーム、平和賞を逃げ切ったカプセルと重賞ウイナーがズラリと揃った。カプセルとトラジロウは、来年もホッカイドウ競馬所属として過ごすとうかがっている。他にも、サンライズカップを制し、JBC2歳優駿JpnIIIで4着に食い込んだパッションクライは、「まだ背丈が伸びて成長する要素を感じるので、ひと冬越して来年頑張りたい」と山口竜一調教師が話していたように、他場に移ることなく来年に備えるそうだ。

 ダート競馬の新体系と併せ、ホッカイドウ競馬では移籍をしない馬たちに対し、在厩3歳馬手当や他場重賞競走出走奨励金、さらに他場重賞遠征費補助といった制度を設け、『北海道出身馬』ではなく『北海道生え抜き』のスターホースの誕生に力を注ぎ出した。2歳戦がブランド化されているホッカイドウ競馬。全日本2歳優駿JpnIはもちろん、新たに始まる3歳ダートグレードでも、ホッカイドウ旋風が巻き起こることを期待したい。

トラジロウ(ネクストスター門別)

トラジロウ(ネクストスター門別)

カプセル(平和賞)

カプセル(平和賞)

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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