SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.3

DGの体系整備にともない
地方の重賞体系にも変化

フォーエバーヤング(全日本2歳優駿)

フォーエバーヤング(全日本2歳優駿)

 JBC2歳優駿JpnIIIと兵庫ジュニアグランプリJpnIIの優勝馬が激突した全日本2歳優駿JpnIは、フォーエバーヤングがイーグルノワールに7馬身差の圧勝。北海道2歳優駿JpnIII時代のディアドムス以来、9年ぶりに門別1800mのタイトルホルダーが2歳ダート王に輝いた。勝利インタビューで、矢作芳人調教師は、海外に目を向けつつも3歳ダート三冠を意識したコメントをされていた。2024年のダートグレードは、3歳と古馬のレース体系も整備されており、本格的に国内ダート競馬の改革が進む。

 まずは、冬の古馬頂上決戦として定着していた川崎記念JpnIが4月3日に移行する。上半期のダート競馬を締め括る帝王賞JpnIに日程が近づいた(2024年は6月26日)ことで、中距離馬が2つのビッグレースを目標に置きやすくなった。西日本では、名古屋グランプリJpnIIが12月からゴールデンウィーク開催(2024年は5月6日)に移る。西日本から帝王賞JpnIを目指す上で、注目の前哨戦となる。

 そして、古馬短距離・マイル路線は、ゴールデンウィークの開催で定着しているかしわ記念JpnI(2024年は5月1日)に加え、新たにさきたま杯JpnI(2024年は6月19日)が加わった。フェブラリーステークスGIと併せ、3つのビッグレースが上半期で行われる。短距離馬にとっては、1400mのビッグレースは芝で行われていない状況から、芝の短距離馬も目を向ける可能性もあり、かなりスリリングなレースが期待できる。1400m前後の距離においては根岸ステークスGIII(1月26日)を皮切りに、かきつばた記念JpnIIIが2月29日に1500mで争われる。ハンデキャップからグレード別定に斤量面の変更も発表されたが、3月26日に高知で行われる黒船賞JpnIIIまで、毎月下旬に設定されている。この距離を目指す陣営にとって、ローテーションを組みやすくなったのではないか。

 ダートグレードが整備されたことで、南関東の重賞の配置も変化が生じた。正月開催の恒例重賞だった報知オールスターカップは、今まで川崎記念JpnIが施行されていた開催に移行。川崎記念JpnIとの密接な関係は残しながらも、3月6日に組まれているダイオライト記念JpnIIの前哨戦として考えることもできる。正月開催では、川崎マイラーズを5月から1月3日に移した。川崎マイラーズのそれまでは、かしわ記念JpnIとさきたま杯JpnIIの狭間に組まれていたので、南関東のスプリンターとマイラーが分散していた。ダート競馬の体系整備により、ダートグレードの配置が変わったことは、地元重賞のレース体系も改まり、よりスリリングなレースが期待される。川崎マイラーズにとっては、ここからフェブラリーステークスGIを目指す馬が出てきても不思議ない。

 そして牝馬ダートグレードは、大幅に改革されている。大井競馬場で行われていたTCK女王盃JpnIIIが園田競馬場に舞台を移し、兵庫女王盃JpnIIIというレース名とともに時期も4月4日に変わった。牝馬ダートグレードはそれまで、南関東と北海道のみで行われていたが、兵庫女王盃JpnIIIは西日本で行われる唯一の牝馬ダートグレードとなる。冬の時期には、クイーン賞JpnIIIが2月7日に移り、エンプレス杯JpnIIは5月8日へ移った。牝馬ダートグレードは、JBCレディスクラシックJpnIを頂点とし、中距離ばかりのレース体系となっているが、上半期の最大目標をエンプレス杯JpnIIに置き、各地から目指しやすい形となった。さらに、マリーンカップJpnIIIが3歳牝馬限定となり、距離は1800m、時期は9月26日に変わる。関東オークスJpnII、マリーンカップJpnIIIという3歳牝馬の路線が確立され、マリーンカップJpnIIIの勝ち馬にはJBCレディスクラシックへの優先出走権が付与されるようになった。また、地方全国交流として定着しているロジータ記念も11月13日にあるので、3歳牝馬の路線もかなり整備された。JBCレディスクラシックJpnIを目標にする上で、門別で行われているブリーダーズゴールドカップJpnIIIが8月27日に施行時期を少し遅らせた。

 3歳戦ばかりがクローズアップされているが、古馬のレース体系も大幅に変わった。国内のビッグレースは、メンバーの分散を極力減らすことができるようなスケジュールになったと言えるだろう。我々も、あらゆることが一気に変わったので、完全に把握するまで時間を要しているが、改めてスケジュールを眺めていると、よくできたものだなぁと感心する。もちろん、改善の余地はあるだろうが、まずは古馬ダートグレードの改革元年も、3歳同様に注目して頂きたい。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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