SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.5

厳しいレースの経験は馬を成長させる
3歳短距離はネクストスターから

サントノーレ(雲取賞 パドック)

サントノーレ(雲取賞 パドック)

 2023年2歳~2024年3歳のダートグレード(雲取賞JpnIIIまで)は、エーデルワイス賞JpnIIIを除き、JRA勢がワンツーを決めるレースが続いている。

 ブルーバードカップJpnIIIは、出走したJRA3頭で上位独占となった。この結果のみを見ると、「やはりJRA勢は強い」と諦めムードになってしまうかもしれない。しかし、JBC2歳優駿JpnIIIを見れば、フォーエバーヤングが全日本2歳優駿JpnIも突き放し、抜きん出た実力馬だった。2着サンライズジパングはその後、ダートの番組を思うように使えず、芝へ矛先を戻すとホープフルステークスGIで3着に健闘し、若駒ステークスを豪快に差し切り、芝のクラシックを目指すことになった。後々考えれば、JBC2歳優駿JpnIIIのレースのレベルが相当高かったことが窺える。

 ブルーバードカップJpnIIIは、ウルトラノホシが4コーナー手前で躓く不利があったが、手応えが良すぎて外に出すタイミングで前にいたバロンドールに触れてしまったもの。自ら招いたものでもあるので、差のない4着まで追い込んだだけに残念だったが、この結果で陣営もJRA勢と戦える自信を深めた。

 雲取賞JpnIIIは、新星ブルーサンが逃げ切り、スタートで躓きながらもアマンテビアンコが2着に追い込んだが、2着争いに加わったサントノーレが3着に食い込んだ。サントノーレは、全日本2歳優駿JpnIでイーグルノワールに遅れを取ったが、雲取賞JpnIIIで逆転した。馬体が成長し、大外枠の不利を克服しての地方最先着に、羽田盃JpnIでの反撃が期待できる。

 厳しいレースの経験は、必ずや馬を成長させる。ウルトラノホシは、雲取賞JpnIIIこそ6着に敗れたが、全日本2歳優駿JpnIから3戦連続でダートグレードに挑み、川崎の小向トレセンに入厩した調整や、地方競馬教養センターを出走拠点にする新しい制度の活用など、遠方からの挑戦の中で様々な取り組みを行った。新制度においては、調整の難しさを感じて早々と佐賀へ戻る誤算はあったものの、新しい試みには課題がつきもの。前回のコラムで「挑戦なくして成功なし」と書いたが、挑戦する姿勢から生まれる課題は、次なる発展につながる。北海道からの遠征においても、常に海を渡る輸送を考えて遠征を続けた結果から、他地区にないノウハウを得て全国での活躍を続けている。サントノーレは、北海道で培った地力が、大井へ移籍した後に最高の形で花開いてくれれば嬉しい限りだ。

 さて、3月はいよいよ、3歳ネクストスターシリーズが始まる。3歳戦のネクストスターは、4ブロック(北日本、東日本、中日本、西日本)に分かれ、短距離戦で覇を競う。2024年は、北日本が門別、東日本は川崎、中日本は名古屋、西日本は園田で行われ、今後は持ち回りでの開催となる。なお、北日本はホッカイドウ競馬が4月開幕なので、4月18日に行われる予定。

 3歳ダート三冠がクローズアップされている中、短距離路線も整備された。兵庫チャンピオンシップJpnIIが1400mに距離短縮され、4月29日に行われる。そして、北海道スプリントカップJpnIIIは、今年から3歳限定の1200mに生まれ変わり、8月15日に施行される。ネクストスターと併せ、短距離も三冠ロードのような体系が作られた。各ブロックのネクストスターから、兵庫チャンピオンシップJpnIIへ向かう流れができたことは、短距離馬にとって大きな改革と言える。

 JRAでは、クラシックと並行してNHKマイルCを目指すスプリンター及びマイラーの頂点がある。格の違いはあれど、そのレース体系に近い形で、地方競馬を舞台に3歳ダート短距離の路線が確立されたことは、早い段階でスペシャリストを生み出す下地とすれば、今後に向けて非常に大きい。

 前回のコラムでも触れたが、短距離路線はJRA所属馬と地方所属馬の差はそれほど感じない。JRAのダート番組で短距離となると、オープン特別とリステッドは多いものの、重賞は非常に少ない。芝スタートのレースが多いので、オールダートの地方競馬、しかも小回りでいきなり結果を出すことも簡単ではない。しかも、短距離戦なので序盤から馬群がバラけることが少なく、ゴールまでせめぎ合いとなる分、枠順や精神力も問われる。

 地方所属馬ではイグナイターの他にも、過去にフジノウェーブ、ブルドッグボス、サブノジュニアがJBCスプリントJpnIを制した。短距離路線はダートグレードが各地にあり、地方所属馬の層は厚い。ぜひとも、3歳ダート短距離のチャンピオンが、秋のJBCスプリントJpnIを目指して欲しい。

写真:NAR

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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