SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.11

期待高まるジャパンダートクラシック
短距離路線では地方馬も健闘

ダテノショウグン(黒潮盃)

ダテノショウグン(黒潮盃)

 新ダート体系の核となる、3歳ダート三冠。その最終戦となるジャパンダートクラシックJpnIに向けて、レパードステークスGIIIはミッキーファイトが重賞初制覇を飾った。東京ダービーJpnIの出走権を懸けて挑んだユニコーンステークスGIIIは、直線入口で不利があり、消化不良の3着に終わっただけに、タイトル獲得はまさに悲願と言えるもの。ジャパンダートクラシックJpnIでは、ユニコーンステークスGIIIで先着されたラムジェットに雪辱を期すとともに、フォーエバーヤングとの初対戦も楽しみだ。

 地方競馬を舞台としたレースは、黒潮盃をダテノショウグンが制し、デビューからの連勝を7に伸ばした。ダッシュがつかず、序盤は後方から運んだが、前半3F=38秒5、5F=64秒6のスローペースを嫌い、向正面で3番手まで押し上げていった。一気に捲っていかず、無理なくポジションを上げていったので、余力を持たせた形で3コーナーを回り、勝負所で御神本騎手がゴーサインを出すと、ダテノショウグンは鞍上の反応にしっかり応えた。

 「普段は上手にゲートを切ってくれる馬ですが、一度レースを使ったことでゲートの中で少し気負っていた雰囲気があり、それが出遅れの要因だと思います」と、森下淳平調教師はレースを振り返っていた。爪の具合も含め、レース後の状態次第ということだが、最後の一冠への出走意思をインタビューでも語っていた。

 JRA所属馬にとっても優勝馬にジャパンダートクラシックJpnIへの優先出走権が与えられる不来方賞JpnIIには、昨年のJBC2歳優駿JpnIIIで2着だったサンライズジパングが、カトレア賞以来のダート戦で2戦2勝と相性抜群の武豊騎手と挑む。また、海外帰りの復帰戦だったレパードステークスGIIIで2着と地力を見せたサトノフェニックスや、ユニコーンステークスGIIIで4着に追い込んだサンライズソレイユ、その5着だったムルソーなども登録している。

 JRA勢を迎え撃つのは8戦全勝、岩手の怪物・フジユージーンだ。地元重賞のみならず、地方全国交流の南部駒賞、東日本交流のダイヤモンドカップでも圧勝を演じている。ダートグレードで実績のある馬たちを相手に、地元の期待を背負うフジユージーンは、ダートグレードに昇格した最初の年の不来方賞JpnIIを大いに盛り上げてくれる。

フジユージーン(東北優駿)

フジユージーン(東北優駿)

 そして、9月1日に金沢競馬場で行われる西日本3歳優駿には、東京ダービーJpnIで地方最先着となる4着に健闘したシンメデージー(高知)が出走を予定している。北日本、東日本、西日本を代表する馬たちが、秋の大一番に向けて続々と始動する。

 JRA勢にとって、春の二冠は狭き門だったが、昨年までのジャパンダートダービーJpnIを受け継ぐジャパンダートクラシックJpnIは、春の二冠と違い、前哨戦の優先出走だけでなく、収得賞金順での選出もあるので、実績馬の出走が叶い、ハイレベルのメンバーが揃いやすい環境にある。現時点で報道されているメンバーがすべて揃えば、レースレーティングは間違いなくハイクラスのものになり、2028年から段階的に国際競走を目指す上で、GIに相応しいレースになるだろうし、来年以降もメンバーを揃える努力をしていかなければならない。

 一方、3歳ダート短距離路線は、8月15日に門別競馬場で行われた北海道スプリントカップJpnIIIをチカッパが鮮やかに差し切り、兵庫チャンピオンシップJpnIIで後塵を拝したエートラックスに雪辱を果たした。3着には大井所属のティントレットが差を詰め、4着は地元のヴィヴィアンエイトが食い込み、JRA勢の上位独占を許さなかった。

 兵庫チャンピオンシップJpnIIでは、ネクストスター東日本を制したギガースが地方最先着(5着)だったが、そのギガースを優駿スプリントで圧倒したティントレットが、古巣である門別を舞台とした北海道スプリントカップJpnIIIで出遅れながら3着。また、ネクストスター北日本で2着に追い込み、地元の短距離重賞を制したヴィヴィアンエイトが、ティントレットに次ぐ4着に健闘した。ダート路線の体系整備に伴って各地の重賞路線も充実し、その活躍馬が3歳ダート短距離で善戦したとなれば、改革元年の成果が窺える。

 JRA勢にとっても、ダート短距離馬の目指すべきレースは少なく、特に3歳馬においてこの路線が整備されたことの意義は大きい。北海道スプリントカップJpnIIIにはJRA所属馬の出走申込みも多く、前年のエーデルワイス賞JpnIIIを制したモズミギカタアガリが補欠になるほど。北海道スプリントカップJpnIIIは、3歳ダート短距離の最終戦という位置付けでもあり、今回の出走申込を考えても、JRA所属馬がもっと選定されても良かったのではないか。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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