~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~
文:古谷剛彦
サントノーレ(戸塚記念)
ジャパンダートクラシックJpnIの選定馬および補欠馬が17日、発表された。事前の段階からフォーエバーヤングとラムジェットが出走意思を示した上に、サトノエピック、ミッキーファイト、サンライズジパングなど、JRA勢は錚々たるメンバーが集う。そして、地方所属馬は、京浜盃JpnIIでJRA勢を完封し、秋の始動戦となった戸塚記念でも23キロ増と馬体が充実した上で6馬身差の圧勝を演じたサントノーレが、地方馬の中で唯一のダートグレードホルダーとして迎え撃つ。また、無敗で黒潮盃を制したダテノショウグン、東京ダービーで地方最先着を果たした高知のシンメデージー、不来方賞でJRA勢を相手に健闘した岩手のフジユージーンなど、南関東以外の強豪の名もある。
北海道市場では、9月17日からセプテンバーセールが開催されているが、フジユージーンを管理する瀬戸幸一調教師とお会いした。「正直、もっとやれるという思いがあったので、4着という内容には悔しさがあります。ただ、強い馬と戦っていくことで、フジユージーンがもっと逞しくなると思いますし、ジャパンダートクラシックは前向きに考えています」と話していた。
また、シンメデージーは元々ジャパンダートクラシックJpnIを目標に、秋は西日本3歳優駿から始動するローテーションを組み、大差勝ちと好発進。打越勇児調教師は「三冠を獲ったプリフロオールインと(調教で)併せて、一度も先着したことがないなど、『これは走る!』という思いをデビューするまでは正直抱かなかったんです。ただ、デビュー戦での内容から、実戦タイプだと認識し、こちらが思っている以上の成長を遂げています。東京ダービーでの走りも驚きましたが、ジャパンダートクラシックはさらに、JRA勢も強力になりますので、調整もさらに負荷を掛けなければ……と思っています。ただ、この舞台に自分が携わらせて頂いている馬で挑めることに、感謝しかありません。精一杯頑張ります」と、闘志を秘めている。
そして、ダテノショウグンは、黒潮盃を制した直後、サマーセールで森下淳平調教師と話をした。「雲取賞を目指していた中で、左前の爪の状態が思わしくなく、休養しました。ただ、長期離脱だったのに、筋肉が全く落ちていなかったんですよ。だから、立ち上げに思ったよりも時間を要さず、黒潮盃の前にひと叩きすることもできました」と、復帰前を振り返る。レースを含めた振り返りは、前回のコラムで書いた通りだが、前走で見せたゲートの課題を含め、大一番ではしっかりと修正してくるだろう。ハッピースプリントで大舞台を幾度となく経験している森下調教師だが「JRA勢のトップホースが揃い、地方馬も全国から強豪が集うのは、新たな一歩を踏み出すビッグレースの名を高める上で、大井の関係者も喜ばしいことだと思います。その中に、ダテノショウグンも名を刻むことができるよう、万全の態勢で仕上げていきたいと思います」と意気込んでいた。
ダテノショウグン(黒潮盃)
戸塚記念で圧勝した直後、サントノーレをNARグランプリ2歳最優秀牡馬受賞に育て上げた田中淳司調教師と話をした。「次を見据えているにしても、大幅に馬体が増えている中で、始動戦を圧勝したのは良かったですね。川崎のコーナーを考えると、内枠だったのでレースもしやすかったと思いますが、笹川翼騎手が上手にエスコートしていましたね」とレースを振り返る。荒山勝徳調教師は「馬体増は成長分はあるにしても、目標は次ということはオーナーサイドにも伝えていましたし、余裕残しの状態でどこまで戦えるかという形でレースを観ていました。休み明けの影響か、掛かり気味でしたが、その中で圧勝し、笹川騎手から次元が違うという言葉も出たように、JRA勢に割って入れるぐらいの力をつけていると思っています。ダテノショウグンとともに、JRA勢を迎え撃つ立場として頑張りたいと思います」と、レース後のインタビューで話していた。普段は弱気なコメントが多い荒山調教師から、打倒JRAを意識させたように、サントノーレにとってひと夏を越した成長ぶりは目を見張るものがある。
ライトウォーリアのコリアカップGIII参戦を含め、新ダート体系のスケジュールが進むにつれ、目的意識の高い地方競馬関係者が増えている印象がある。その中にあって、ダート三冠最終章となるジャパンダートクラシックJpnIへ、地方競馬関係者が強い意志を持って出走する姿勢は、我々も願っていたことであり、逞しく感じる。ダート三冠はもちろん、新ダート体系を競馬ファンに浸透させる上でも、豪華メンバーが揃うスケジュールとなったジャパンダートクラシックJpnIの意義は大きい。この日ばかりは、ファンの皆さんと同じような高揚感でレースの時を待つだろう。
写真:いちかんぽ
PROFILE
古谷剛彦
(ふるや たけひこ)
1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。