SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.14

2歳戦ではダート系新種牡馬が活躍
JBC佐賀では3競走とも地方馬が好走

ソルジャーフィルド(JBC2歳優駿)

 JBC2024は、地方競馬では最も距離が離れた佐賀競馬場と門別競馬場での開催。JBC2歳優駿JpnIIIが2歳カテゴリーに加わって以降、私は門別競馬場でレースを見届けているが、レース当日の門別競馬場は雨に見舞われたものの、大一番を前に雨は上がり、寒風の中でも多くのファンが声援を送った。ソルジャーフィルド(北海道)が、4年振りに地元馬の優勝を飾り、新ひだか町静内出身の小野楓馬騎手が勝利したことでも、大歓声と拍手に包まれていた。新種牡馬・ルヴァンスレーヴは、2021年に最多となる223頭と交配した。この年は200頭を超える交配を行った種牡馬は、他にエピファネイア、ゴールドドリーム、サートゥルナーリアの4頭しかいない。エピファネイアを除く3頭が新種牡馬、そしてルヴァンスレーヴとゴールドリームがダートチャンピオンと、種牡馬の動向は様変わりしている。ダート系種牡馬の人気とともに、JBC2歳優駿JpnIIIはルヴァンスレーヴ産駒が優勝、ゴールドドリーム産駒のグランジョルノが2着という結果に終わった。

 ゴールドドリーム産駒は地方所属馬でも、JBCデーを締め括ったネクストスター佐賀を制したミトノドリームや、ネクストスター門別を差し切ったミラクルヴォイスと2着に粘ったベラジオドリーム、ハイセイコー記念で2着に健闘したシビックドリームなどがいる。これらの活躍から、ファーストシーズンサイアー地方ランキングでは、ルヴァンスレーヴを抑えてゴールドドリームが首位に立っている(11月15日現在、以下同)。ベラジオドリームは、ネクストスターを起点とする2歳短距離の体系を進むべく、北海道代表として兵庫ジュニアグランプリJpnIIに出走を予定している。

 新種牡馬が活躍する世代は、実績のある種牡馬も良質の繁殖牝馬と交配している傾向が強いことから、新種牡馬の産駒を凌ぐ仔の登場は十分にありうる。地方の2歳リーディングサイアーランキングは、首位がモーニン、2位はホッコータルマエ、そしてゴールドドリーム、エスポワールシチー、ルヴァンスレーヴと続く。出走頭数の多さでモーニンが着実に勝利頭数や入着回数を増やしているが、ホッコータルマエは大一番に強い。今年は、南関東でギャルダルがフジノウェーブ記念、ティントレットが優駿スプリントを制覇。ウルトラノホシは佐賀二冠馬、ナミダノキスは金沢二冠馬となり、北海道ではベラジオゼロが栄冠賞を制している。その他にも、ホッコータルマエ産駒は各地の2歳重賞で好走している馬が多く、まだ二世代しかデビューしていないモーニンに対し、JRA所属馬にも有力ダート馬がいる利があることを考えれば、首位奪取の可能性は十分にある。

 JBC2024で、地方所属馬の優勝はJBC2歳優駿JpnIIIのみだったが、JBCクラシックJpnIはキリンジ(兵庫)が3着、シルトプレ(北海道)が4着に食い込んだ。JBCスプリントJpnIは、アラジンバローズ(兵庫)が3着、連覇を目指したイグナイター(兵庫)は4着、パワーブローキング(船橋)が5着と、3頭が掲示板に入った。JBCレディスクラシックJpnIで5着だったドライゼ(大井)を含め、JBC佐賀で入着した馬たちはすべて、ダートグレードの出走経験がある。頂点を目指すべく強い馬に立ち向かい、遠征などのノウハウを会得するなど、陣営の努力が報われた結果だと言える。シルトプレは、そのまま佐賀・真島元徳厩舎に移籍し、佐賀記念JpnIIIを目指す運びとなった。石川倭騎手は佐賀で期間限定騎乗を行うので、コンビ継続の中で佐賀記念JpnIIIを迎えるが、エルムステークスGIIIでの2年連続入着など、ダートグレード制覇に手が届く走りを見せている。

 シルトプレの活躍とともに、ベルピット(北海道)にもファンから熱い視線が注がれている。昨年の北海道三冠馬で、今年は道営記念など北海道古馬中距離重賞をコンプリートした。道営記念の後、角川秀樹調教師は、12月19日の名古屋大賞典JpnIIIを視野に入れていることをコメントしていた。その中で「道営記念のような中団から進める形ではなく、横綱なら横綱らしい競馬をした方が、ベルピットらしさを見せられるのではと感じました」とも話していた。予定通り、ベルピットが名古屋大賞典JpnIIIに向かえば、ダートグレード挑戦は一昨年のJBC2歳優駿JpnIII(2着)以来、輸送競馬は昨年のダービーグランプリ(盛岡・3着)以来となる。口向きなどまだ改善が必要な若さはある中で、今季は無傷の6連勝を飾った。

 古馬中距離路線は、JRA勢が強いイメージが根強い。その中で、新ダート体系の中でライトウォーリア(川崎)が川崎記念JpnIを逃げ切り、サヨノネイチヤ(大井)が帝王賞JpnIとマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIに挑んで見せ場を作った。3歳馬ではシンメデージー(高知)が、東京ダービーJpnIとジャパンダートクラシックJpnIで入着を果たすなど、ダート中距離界における地方所属馬の層は厚くなってきた。ベルピットと同世代のJpnI馬であるミックファイア(大井)は、G/JpnIに敢然と挑戦し続け、12月1日に中京競馬場で行われるチャンピオンズカップGIに出走する意向が報道された。ベルピットも中距離界の新興勢力として、JRA勢に立ち向かう姿を観ることができるのは、ファンのみならず私たちも楽しみだ。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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