SPECIAL COLUMNSダート競馬、新時代へ

~新競走体系が与える効果を様々な角度から紐解く~

文:古谷剛彦

VOL.16

前哨戦で善戦した南関東勢
羽田盃での奮起を期待

ナイトオブファイア(’25スターバーストカップ)

ナイトオブファイア(’25スターバーストカップ)

 ダート三冠は2年目を迎えた。昨年の全日本2歳優駿JpnIは、牝馬のミリアッドラヴが優勝。エーデルワイス賞JpnIIIを制した時から、サウジダービーGIへの出走意思を見せていたので、ダート三冠は混沌とする印象はあった。しかし、年明けのブルーバードカップJpnIIIは、前々週の浦和・ニューイヤーカップに有力馬が出走していたこともあり、南関東勢は正直手薄な状況となった。他地区は北海道からウィルオレオールとバリウィール、高知からジュゲムーンが参戦。ウィルオレオールは、2歳時に船橋の平和賞を優勝し、全日本2歳優駿JpnIではロスのない立ち回りから3着ソルジャーフィルドに差のない6着に健闘していた。バリウィールは南部駒賞を逃げ切り、ジュゲムーンは全日本2歳優駿JpnIで5着に追い込んだ。積極的に遠征する他地区の馬たちは、精神的にも強くなっていく。JRA勢がワンツーを決めたが、3着にはウィルオレオールが追い込み、ジュゲムーンも短いスパンでの長距離遠征の中で5着とダートグレード2度目の入着を果たした。

 雲取賞JpnIIIは、昨年のハイセイコー記念を逃げ切ったスマイルマンボが、このレースから始動。特別戦を含め2連勝のペピタドーロなど、地元の有力馬が出走し、結果はこちらもJRA勢のワンツーだったが、先を見据えた立派な馬体で挑んだスマイルマンボが僅差の3着に粘り、ペピタドーロも重賞初挑戦で4着に頑張った。

 京浜盃JpnIIは、JBC2歳優駿JpnIIIを差し切った北海道のソルジャーフィルドが、ウィルオレオールとともに参戦。そのソルジャーフィルドを北海道で2度破っているリコースパローが、昨年のサントノーレと同じく雲取賞JpnIIIの雪辱を狙った。さらに、この段階で無敗だったナイトオブファイアもスターバーストカップ圧勝から中1週で挑んできた。結果はJRA・ナチュラルライズの独壇場となったが、リコースパローがブリーダーズゴールドジュニアカップ以来となる逃げの手を打って2着に粘り、ナイトオブファイアは3着に食い込んだ。ソルジャーフィルドは直線で猛追して4着と、ナチュラルライズ以外のJRA勢には先着を果たした。

 ダート三冠の前哨戦となるダートグレードを簡単に振り返ったが、ブルーバードカップJpnIIIは昨年に引き続き、他地区所属馬の遠征が頼りとなる状況は正直残念でならない。ただ、雲取賞JpnIIIと京浜盃JpnIIは、大井所属の有力馬が出走するケースが2年続いて見られた。ブルーバードカップJpnIIIに出走した他地区所属馬は、雲取賞JpnIIIだと間隔が詰まっているので、昨年は佐賀のウルトラノホシが万全の状態で挑めず、今年の雲取賞JpnIIIには他地区の出走はゼロ。ただ、2月の南関東は、3歳馬の中距離戦となると雲取賞JpnIIIしか重賞がないので、ニューイヤーカップ組も出走する可能性が生じ、頭数は揃いやすい。また、近年の競馬は、大一番に向けてゆとりを持ったローテーションを組む陣営が増えており、2カ月後に羽田盃JpnIを迎える上に、同じ距離で挑める雲取賞JpnIIIが本番を前に理想的な前哨戦と考えるのも頷ける。

 昨年の京浜盃JpnIIは、荒山勝徳厩舎所属のサントノーレが優勝し、今年は同厩舎のリコースパローが2着に頑張ったように、雲取賞JpnIIIでJRA勢との力量を測り、勝利を目指す形が見えつつある。また、ブルーバードカップJpnIIIに出走した他地区所属馬は、2カ月後となる京浜盃JpnIIに挑むのが、ダートグレード制覇を狙う上で出走しやすいスケジュールと言える。また、ソルジャーフィルドのように北海道三冠の前にレースを使うには、京浜盃JpnIIは、北海道のオフシーズンとなる真冬に調整しなければいけないブルーバードカップJpnIIIや雲取賞JpnIII以上に出走しやすい面も見受けられた。

 JRA所属馬は、フォーエバーヤングとミリアッドラヴに見られるように、全日本2歳優駿JpnI優勝馬は海外に目を向け、春にJRAを舞台に行われるヒヤシンスステークスと伏竜ステークスがケンタッキーダービーG1につながっていることから、春の二冠+前哨戦のダートグレードは地方所属馬にとって本来は大きなチャンスのはず。それでも3歳馬のダートグレードは、今年ここまですべてJRA所属馬が優勝したのは確かである。しかし、雲取賞JpnIIIのレース内容と当時の状態面を考えれば、今年は羽田盃JpnIと東京ダービーJpnIで地方所属馬が互角以上に戦えることをしっかりと示した。リコースパローは剥離骨折が判明し、戦線を離脱することをリコーファームのスタッフに聞いて残念だと感じたが、これも挑戦を経てのもの。そのリコースパローと差のないレースを見せたナイトオブファイア、そしてひと叩きされたスマイルマンボも上昇ムード。前哨戦で健闘した2頭を筆頭に、羽田盃JpnIでの南関東勢の奮起を期待したい。

写真:いちかんぽ

PROFILE

古谷剛彦(ふるや たけひこ)

古谷剛彦
(ふるや たけひこ)

1975年東京都出身。2001年からホッカイドウ競馬パドック解説者となり、北海道を中心に活動している。グリーンチャンネル『地方競馬中継』『アタック!地方競馬』『KEIBAコンシェルジュ』『馬産地通信』にレギュラー出演。ホッカイドウ競馬LIVE『なまちゃき』解説者。スポーツ報知『こちら日高支局です』毎週水曜掲載。フリーペーパー『うまレター』南関東競馬NEWS担当。監修・著書に『地方競馬完全攻略ガイド』。

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