SPECIAL COLUMNSダートの高みを目指して

~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~

文:赤見千尋

VOL.1

ダヴァンティが無傷の
3連勝
金沢から目指すJpnIの
タイトル

ダヴァンティ(ネクストスター金沢)

ダヴァンティ(ネクストスター金沢)

 昨年発表された全日本的なダート競走の体系整備の中でも、大きな注目を集めていた2歳の新設重賞・ネクストスターが全国各地で始まりました。その先陣を切ったのが、9月24日、金沢競馬場で行われた第1回ネクストスター金沢です。
 勝ったのは1番人気に支持されたダヴァンティ(牝2、佐藤茂厩舎)。好スタートを切るとすんなり先手を取って、まったく危なげないレースぶりで快勝しました。これでデビューから無敗で3連勝。鞍上の栗原大河騎手(金沢)が、ゴール後に雄たけびを上げ喜びを爆発させている姿に、ネクストスターに懸ける熱い想いを感じました。
 その時のことを栗原騎手に伺ってみると、「恥ずかしいですけど、気持ちが高ぶって自然と雄たけびが出てしまいました。最初のネクストスターということで全国的にも注目されていましたし、佐藤先生もこのレースを目指して期待の馬を探して来たと思います。オーナーや関係者の皆さんに、勝って恩返しをしたいという気持ちもありました。重賞を勝たせてもらった時はいつも嬉しいですけど、なかなかここまで気持ちが出ることはないですね。とてもいい経験をさせていただき、頑張ってくれた馬にも、関係者の皆さんにも感謝の気持ちでいっぱいです」と話していました。
 今年の栗原騎手はここまで他に重賞3勝(6月18日・日本海スプリント/オヌシナニモノ、8月29日・石川テレビ杯/ダヴァンティ、9月3日・サラブレッド大賞典/ダイヤモンドライン)していますが、こんなに感情を爆発させる場面は見たことがありません。それだけネクストスターへの想いが強かったということですね。

-ネクストスターで意識に変化

 発表された当初から、2歳戦で1着1000万円の高額賞金が設定されたことで話題となったネクストスター。どんな効果を引き出してくれるか楽しみにしていましたが、栗原騎手のお話では金沢でも関係者の意識に変化があったそう。
 「ネクストスターが全国で新設されて、地方競馬からも“もっと強い馬づくりを”という機運が盛り上がっているのを感じます。賞金が高い分、より高額でより素質の高い馬をという意識が高くなっていますし、各競馬場でどんどん強い馬が出てきたら、地方競馬全体のレベルアップに繋がりますよね。今、すごくいい流れだと思います。これまで金沢では、2歳で地元重賞を勝ってもすぐに遠征に行くということは少なかったのですが、ダヴァンティはこの後、川崎の全日本2歳優駿を目指す予定です。ネクストスターを勝って全国へ、という展開はこれまでなかったことなので、僕自身もとても楽しみです」と、嬉しい効果があったことを教えてくれました。

昨年の全日本2歳優駿(デルマソトガケ/写真左)

昨年の全日本2歳優駿(デルマソトガケ/写真左)

 ダヴァンティはデビュー前から高い素質を感じていた馬で、2歳牝馬としてはとても大人びているそうです。操縦性が高く、素直で乗りやすいということですが、今後に向けて課題をあげるとしたらどんなことでしょうか。
 「3戦すべて逃げていますが、地元馬同士だとスピードが違い過ぎて逃げる形になってしまいます。このままだと不本意に競りかけられたり、展開に左右されてしまいますし、今は一本調子のレースしかしていないので、距離の幅を持たせるためにも砂を被ったり揉まれたりする経験も必要だと考えています。そういう意味でも、遠征でどんな競馬ができるか、どんな経験をさせてあげられるか、とても大事なレースになると思います。僕自身、川崎は初めての騎乗なので、馬と一緒にいろいろなことを吸収したいです」
 ネクストスターの後は小松の牧場で休養し、12月の川崎に向けて調整しているダヴァンティですが、少し先に目を向けると、3歳の春には全国4ブロックのネクストスターがあります。金沢所属のダヴァンティが出走できるのは、金沢、名古屋、笠松所属馬で争うネクストスター中日本。だいぶ気が早いですが、こちらについても栗原騎手に聞いてみると、
 「今はまだ先のことなので具体的には考えていませんが、名古屋や笠松の2歳戦は注目しています。ネクストスター名古屋はこれからですが、ネクストスター笠松を勝ったワラシベチョウジャは強いですね。それでもダヴァンティならいい勝負ができると思いますし、まだまだ伸びしろも大きいので、この先も順調に成長して欲しいです」ということでした。

 改革初年度から良い効果が見えるネクストスター。そしてこの世代は、新しく生まれ変わるダート3歳路線を目指す最初の世代です。それぞれの適性次第で、新ダート三冠を頂点とするレースや、兵庫チャンピオンシップJpnII、北海道スプリントカップJpnIIIへと続く3歳短距離路線を歩む馬もいるでしょう。地方競馬の新たな道を切り開く世代として、今後も注目していきます!

写真:いちかんぽ

PROFILE

赤見千尋(あかみ ちひろ))

赤見千尋
(あかみ ちひろ)

群馬県出身。1998年高崎競馬場で騎手デビュー。地方競馬通算2033戦91勝。2005年に北関東の競馬場がすべて廃止となり、騎手を引退。現在は競馬レポーターとして、グリーンチャンネル『アタック!地方競馬』『地方競馬中継』などに出演中。

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