SPECIAL COLUMNSダートの高みを目指して

~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~

文:中川明美

VOL.6

移籍初戦で一冠目の出走権獲得
3歳でも高みを目指すサントノーレ

サントノーレ(雲取賞)

サントノーレ(雲取賞)

 羽田盃への権利を懸けた2月14日の雲取賞JpnIII。中央から3頭、佐賀から1頭を迎え、羽田盃JpnIと同じ1800mで争われた。
 サントノーレは大井への転入戦。大外16番枠と不利もあったがダッシュ力良く3番手外を取る積極的な競馬をした。結果は先手を奪ったブルーサンが軽快なフットワークのまま1着でゴールし、白毛馬アマンテビアンコが最後は内から伸びたものの出遅れが響いて2着。サントノーレは3着に粘って羽田盃への出走権を獲得した。
 「二の脚のスピードがあるから良いポジションにつけることができた。そのあと1コーナー手前ではもう折り合ってくれた。それが強みですね」と服部茂史騎手は振り返った。
 移籍緒戦に収穫を感じた荒山勝徳調教師は「距離がどうかと思っていたが、ポジションを取りに行く競馬で1800mまで保ったので目処が立った。3着ではあったけど、内容は良かった」と前を向いた。そしてこう続けた。「右トモにまだ弱さがあるので雲取賞は手探りで、やりたい調整がすべてできずに向かった。使ってみて感じがわかったので、これならもっとやれるだろうと思っている。羽田盃直行するか京浜盃を挟むかは馬の状態を見て決めようと思っていたが、乗り出したら良い感じだったので、京浜盃に向かうつもり。雲取賞以上の状態で行けると思う」
 すでに権利を得ながらも間隔をあけることより状態の良さを選択した。

-光るものを感じた新馬戦

 サントノーレは北海道の田中淳司厩舎からデビューした。一貫して手綱を取っている服部騎手が初めてまたがったのは2歳の4月。ノドに気になる点があったことから予定より入厩が遅くなった。
 「最初乗った時に息づかいが気になったので、舌を縛ったらやらなくなった。だんだん鳴らなくなって、縛らなくなっても問題なくなった」
 そこからはトントン拍子で状態を上げ、6月のデビューに漕ぎ着けた。しかも6馬身圧勝の逃げ切り勝ち。「上にあがった時のために楽なレースをしたくなかったんですが、スピードの違いで行ってしまった。2戦目もそう。出るのはわかったのであえて抑えていったが、4コーナーでは先頭に立っていた」と服部騎手は振り返った。サントノーレに“光るもの”を感じたのは新馬戦の時。「道中ゆっくり自分のペースで行ければ最後は伸びると思った」と言う。
 その言葉通り、4戦目では川崎の鎌倉記念に遠征すると道中物見をする場面もありながら直線では南関東勢を振り切って優勝。この時の経験は全日本2歳優駿JpnIにもつながり、集中力を切らさないような乗り方で、JRAのフォーエバーヤングやイーグルノワールに続く3着に粘った。砂を被る競馬もこの時にクリアしたのは大きな収穫だった。
 いったん北海道に戻って牧場で緩めてから乗り出し、坂路を4本乗っている状態まで上がった段階で、大井の荒山勝徳厩舎に移籍した。

-三冠を意識して臨んだ雲取賞

 「1700mで惨敗もしていたし、まだ右トモは成長過程。雲取賞から使うと決まって距離には不安もあった」と荒山調教師。
 服部騎手がちょうど南関東で期間限定騎乗中とあって、引き続き手綱を取ることになり、小林分場での1週前追いにもまたがった。「雲取賞前に乗った時にコロッと変わっていて驚いた。トモの力が違っていた。これならもっと上に行けるだろうと思った。可動域の広い綺麗な跳びをする馬なので広い馬場は合うだろうし、三冠につながるよう勝ちにいく競馬したい」と感触を確かめてレースに向かった。
 雲取賞での積極策は新たに始まるダート三冠を意識してのものだった。
 「もちろん目指すはダート三冠。(NARグランプリ)2歳最優秀牡馬を田中淳司調教師のところから引き継いで、今度は荒山勝徳厩舎の馬として3歳最優秀牡馬を獲りたい」
 荒山調教師があえて京浜盃を使う選択をしたのはダート三冠に向けて経験値を高める目的があるのだ。
 サントノーレは地方競馬の2歳チャンピオンとしてさらなる高みを目指す。

写真:いちかんぽ

PROFILE

中川明美(なかがわ あけみ)

中川明美
(なかがわ あけみ)

競馬ブック南関東担当記者。新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。グリーンチャンネルにて『アタック!地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。

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