~注目レースを関係者の声から振り返り、新しい「道」へ~
文:中川明美
※本稿は2024年9月23日(振月)時点の情報を基に取材・作成しています。出走予定馬の最新情報は主催者発表をご確認ください。
ダテノショウグン(黒潮盃)
ダートの体系整備による新たなダート三冠。前哨戦の雲取賞JpnIII、京浜盃JpnIIからダートグレード競走に新たに格付けされ、一冠目の羽田盃JpnIはアマンテビアンコ、二冠目の東京ダービーJpnIはラムジェットが勝利して、いよいよ最終戦。三冠目のジャパンダートクラシックJpnIが10月2日に迫ってきた。
現時点(9月23日現在)の選定馬を見ると、サウジダービーGIII、UAEダービーGIIと海外でも勝利を成したフォーエバーヤング(JRA)をはじめ、東京ダービーJpnI優勝ラムジェット(JRA)、同2着サトノエピック(JRA)、同4着シンメデージー(高知)、レパードステークスGIIIを制したミッキーファイト(JRA)。不来方JpnIIを制したサンライズジパング(JRA)、高知の三冠馬プリフロオールイン、岩手二冠馬フジユージーンと実績馬が揃う。
そして南関東からは京浜盃JpnIIを制した後に骨折が判明したサントノーレが復帰緒戦の戸塚記念を勝って準備万端。さらには蹄の負傷で春を棒に振ったダテノショウグンが黒潮盃を勝って復活し、最終戦に間に合ったことで注目度を高めている。
-7戦無敗でジャパンダートクラシックへ
ダテノショウグンについては昨年11月(VOL.2)に第一章を書いたが、その後、予期せぬ事態に見舞われた。
ハイセイコー記念を8馬身で圧勝して5連勝。次はダート三冠の前哨戦に向かう調整をしていた際の出来事だった。
「朝、馬房を見るとトモの蹄鉄が前の蹄冠部に刺さって苦しむ姿がありました。どうやったらこうなるのか、あり得ないアクシデントで絶望的になりました」と森下淳平調教師。
すぐさま休養に入ると奇跡的なほどに患部が回復。春の出走は叶わなかったものの、約8カ月ぶりに3歳のオープン特別で戦列復帰すると、5馬身差をつける圧勝で復活の号砲を鳴らした。
「朝の馬房であの状態を見た誰もがもう競走馬として難しいと思ったでしょう。ところが調教試験の段階でもう左右のバランスが整っていたし、生命力には驚かされました。休み明け緒戦の勝ち方といい、2歳の頃に比べても数段筋肉量がアップしています」と担当する金成昭厩務員も人知を超えた回復に驚きを隠せない。
さらに圧巻だったのは前走の黒潮盃。スタートのタイミングが合わず後方からになったが、ペースが落ち着いた向正面で一気に動きポジションを上げると、息つく間もなく前を捕らえに行って直線半ばで先頭。そのまま突き抜けて7戦無敗のVゴールを成した。
予想外のレース展開にも対応する力の違いを見せつけた。
「スタートはヒヤっとした。これでヨーイドンの競馬だと分が悪いと思い早めに動きました」と好判断で勝利をつかんだ御神本訓史騎手。ダート三冠最終戦へ向け弾みをつけた。
-レベルアップを感じる新ダート三冠
「今までになく長い脚を使うかたちになったので8月一杯は軽めの調整にとどめると、しっかり疲れも抜けました。2回競馬を使って負荷が掛かっているので、さらに状態は持ち上がっているのを感じます。蹄の状態も伸びたものを削蹄しながら良化して違和感はなくなってきています。前走まであった歩様の硬さも見せなくなっていますね。ジャパンダートクラシックに向けて順調に速い時計も重ねているところです。3歳世代は例年にないくらい強いですし、実績馬ばかり。そういう馬たちと走ったことがないので胸を借りるかたちになると思いますが良い経験になるでしょう」と森下調教師は話した。
そして、こう続けた。
「ダート三冠が始まった初年度の最後の一冠に間に合ったのはありがたいこと。確実に日本のダート競馬がレベルアップしているのを感じますし、毎年参加できるようになりたいですね。中央の馬たちが海外のトップレベルと戦っている今、地方競馬からもチャンスを作っていきたい。厩舎の体制作りをして意識を上げていきたい」
森下調教師は44歳の気鋭でもあり、新体制のダート三冠についての想いはひときわ熱い。
写真:いちかんぽ
PROFILE
中川明美
(なかがわ あけみ)
競馬ブック南関東担当記者。新聞紙面にてコラム『南関こんしぇるじゅ』、週刊競馬ブックで『NANKAN通信』、競馬ブックWEBにて『南関あらうんど』等を執筆。週刊競馬ブック南関東S重賞本誌担当。グリーンチャンネルにて『アタック!地方競馬』『ダート競馬JAPAN』に出演中。