レースハイライト タイトル
dirt
2012年10月2日(火) 金沢競馬場 2100m

タイレコードで昨年の雪辱
地元の期待ダイキチも健闘

 1997年に白山大賞典がダート交流重賞となって以降、地方馬の優勝は一度もない(馬インフルエンザの影響で地元馬限定で行われた2007年を除く)。これまでの最高着順は2着。いずれも金沢勢が好走したのだが、人気はいずれも5番人気以下で大健闘といったレースだった。しかし今年は、地方馬初の勝利という大きな期待を背負った馬がいた。地元の4歳馬、ナムラダイキチだ。
 それはオッズにも表れていた。ナムラダイキチが1番人気だった時間帯もあり、その後も締め切りまで2番人気をキープしていたのだ。ファンは単なる応援だけで馬券を購入したわけではない、ということだろう。勝った二ホンピロアワーズは圧巻のレースだったが、この日のもう1頭の主役は、このナムラダイキチだったといえる。
 ゲートが開くと、予想通りエーシンモアオバーがダッシュをきかせ先手を取り、大外枠のニホンピロアワーズは外目2番手にぴたりとつけた。その後ろにジャングルスマイルが続き、ナムラダイキチは好位の内でレースを進めた。
 向正面の半ばあたりを通過したところで場内から歓声が上がった。ナムラダイキチの畑中信司騎手が仕掛けたのだ。外に持ち出し、先行した2頭に並びかけた。しかし、この動きを見てエーシンモアオバーとニホンピロアワーズがペースアップ。ナムラダイキチは前に出ることができず、畑中騎手が必死に追う姿がビジョンに映しだされ、スタンドからは悲鳴と溜め息が聞こえた。その間にニホンピロアワーズは楽な手ごたえで先頭にたち、差を広げていった。
 しかしこれで終わりではなかった。このまま後退かと思われたナムラダイキチが、再びエーシンモアオバーに迫っていたのだ。場内からも再び大歓声。ニホンピロアワーズの勝利が確実なものとなると、「ダイキチがんばれ!」と大きな声援が飛びかった。驚異の巻き返しを見せたナムラダイキチは2着を確保。場内からは拍手が沸き起こったのだった。
 畑中騎手は「やりきりました」と清々しい表情を見せた。「交流戦の流れにも苦しがらずについて行けた」と、あらためてこの馬の能力の高さと、今後の手ごたえを感じたようだ。しかし、「ここからが、強い馬との底力の違いになってきますよね」と、勝ち馬との力差も痛感した様子。ファンにとっても、ナムラダイキチの力を確信したレースだったに違いない。この馬にかける期待は一層強くなったといえよう。来年、金沢競馬場で行われるJBCに向けて、さらなる進化を見たいものだ。
 そして、コースレコードタイとなる好タイムで圧勝したニホンピロアワーズは、昨年2着の雪辱を果たす結果となった。2、3着馬とは斤量差が3キロあったことを考えると、今回のメンバーの中では力が一枚抜けていたといえる。「今日は負けられないと思っていた」と酒井学騎手。これまで着外が1戦しかない超堅実派が、5歳秋にいよいよ本格化だ。今後は昨年と同じく、みやこステークスGⅢからジャパンカップダートGⅠという路線を予定しているとのこと。そして陣営から、「来年のJBCは、金沢に勝ちに来たい」という言葉も聞かれた。1年後、今回の差がどれだけ変わるのか、ナムラダイキチとの再戦も今から楽しみだ。
酒井学騎手
もともと力があるので信頼して乗りました。予定通りの位置取りでしっかり折り合って進めましたね。余裕たっぷりで先頭に立って、直線では逆に遊んで走っている雰囲気もありました。自分自身ケガで騎乗できない期間がありましたが、またチャンスをいただけて、それに応えることができて嬉しいです。
大橋勇樹調教師
休み明けでしたが、乗り込みもしっかりしていたので良い状態でした。このレースかシリウスステークスを使うつもりで仕上げていました。昨年2着だったので雪辱ですね。レースは強かったです。枠にも恵まれました。500キロを超える大型馬ですが、小回りコースは得意なんですよね。器用な馬です。

 なお、この日(10月2日)から予定されていたJRAインターネット投票(IPAT方式)における地方競馬の発売は、台風の影響で阪神競馬が代替開催となったことで、開始日が翌3日に延期となった。地方競馬IPATの導入によって、競馬界全体がより活性化されることを期待したい。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)