10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


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素質の違いで他馬を圧倒
鞍上も念願の重賞初制覇

 2歳馬たちの夢舞台“未来優駿”の第6戦にあたる平和賞は、船橋の若手有望株・本田正重騎手がエスコートした2番人気ナイトバロンが完勝し、人馬ともにうれしい重賞初制覇を飾った。
 ナイトバロンは、デビューしたホッカイドウ競馬では廣森久雄厩舎の外厩馬(認定厩舎)としてノーザンファーム空港牧場で調整されてきた馬だ。フレッシュチャレンジを勝ち、続く2歳オープンは2戦とも2着で、9月中旬に船橋の出川克己厩舎へ転厩してきた。
 通常は調教試験免除のところ、門別での3戦目にゲート内で立ち上がったことから、10月15日に船橋競馬場で実施された調教試験を受けることになった。調教パートナーの本田騎手を背に、ゲートの中では特に問題なく、好内容の走りを見せた。そしてこの馬のクセを把握している本田騎手がレース本番でも大抜擢!!!
 ゲート前は気持ちが高ぶるところもあったようだが、すんなり中に入ってスタートを決めた。「後ろからいい脚を使えると思っていたので、位置取りは出たなりでどこからでもいいかなぁと思っていました」(本田騎手)
 アメイジアの半弟ファイトが逃げ、エスティドゥーラ、シオサイ、ソードオブホロウらがすかさず続いていき、ナイトバロンはその後ろから進めていった。道中は行きたがるくらいで引っ張り切れないほどの手応えだったそうで、3~4コーナーで進出していくと、直線に入ってからのエンジンが他馬とはあまりにも違った。逃げていたファイトを並ぶ間もなく一瞬のうちに交わし去り、最後は3馬身差をつける余裕たっぷりのゴール。2着にファイト、3着には4コーナーで大きく外にふくれながらも最後は猛追してきた北海道のリュウノワンが入った。
 見事ナイトバロンを勝利に導いた本田騎手は25歳、デビューして9年目に突入した。地方競馬教養センター82期生で、同期には高知の別府真衣騎手や名古屋の山本茜騎手など華やいだ面々がそろっている。出川克己厩舎をはじめとした重賞ウイナーたちに調教をつける機会が多く、そんな馬たちの貴重な背中を知る騎手のひとりだ。これまでも何度か重賞に騎乗したことはあるのだが、人気馬とのコンビはほとんどなかっただけに、こうして与えられたチャンスをしっかりモノにできたことには、大きな価値があった。「勝てる能力はあると思っていたので、結果を出すことができてとてもうれしいです。重賞をやっと勝つことができて、乗せていただいた馬主さん、厩舎関係者の皆さんに感謝しています」(本田騎手)
 今後は全日本2歳優駿JpnIを目指していく予定で、来年はもちろんクラシックロードを歩むことになるのだろう。ナイトバロンと本田騎手のフレッシュコンビに、どんな未来が待っているのだろうか。
 なお、4着に入ったソードオブホロウの父は浦和生え抜きの種牡馬ホールウォーカーだ。ホールウォーカーの母で東海地区で活躍したラッキーイソハルを繁殖としてお持ちになっていたオーナーが、その貴重な血を残していきたいという夢から、愛息を種牡馬入りさせた経緯がある。産駒数はわずかだが、勝ち上がり率がひじょうに高いことでも話題になっている。ソードオブホロウと同世代はほかに1頭。そんなホールウォーカー産駒が来年のクラシックロードに登場してくるかどうかも血のロマンであり、今後も見守っていきたい。さまざまな楽しみ方があることも競馬の醍醐味だと思う。

本田正重騎手
馬はまだまだ途上なのにこの強さで勝ってくれたので、これからが本当に楽しみですね。距離は長くても良さそうですし、砂をかぶっても大丈夫なので、2歳にしては競馬がしやすいです。馬に幅はありますがまだ背丈が小さいし、これからもっと馬が成長してきて良くなってくると思います。
出川克己調教師
馬体はまだ子供ですが、トモのハリはビックリするくらいで2歳には思えませんね。今日は転厩初戦で手探りの中でも強かったです。去年はジェネラルグラントが(全日本2歳優駿JpnⅠで)2着に入って悔しかったんですが、(ナイトバロンも)いい勝負をしてくれると思うし、期待して臨みたいです。


取材・文:高橋華代子
写真:国分智(いちかんぽ)