ダービーウイーク タイトル

 競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。

 全国各地の6競馬場(佐賀・盛岡・門別・大井・園田・名古屋)で行われる“ダービー”6競走を約1週間で短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。

 ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/9)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
 前年秋の「未来優駿」シリーズを皮切りに、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。今年もダービーウイークから競馬の未来が生まれる。

2014年ダービーウイークの総括はこちらです
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大混戦の直線を大外一気
高知勢ついに栄城賞制覇

 今年で9年目となる『ダービーウイーク』は、これまで同様に九州ダービー栄城賞からスタート。栄城賞はもともと日曜日の開催だったが、11年以降は地方競馬施設での場外発売を重視して月曜日または金曜日に移動していた。しかし、今年は地方競馬IPATでの発売を見込んで日曜開催に復帰。10年以来となる日本ダービーと同日開催となり、告知ポスターは日本ダービーと九州ダービー栄城賞の『W(ダブル)ダービー』を前面に打ち出し、場内は多くのファンで賑わっていた。
 佐賀のこの世代は、3月に佐賀デビュー馬限定戦として新設された佐賀若駒賞までは、2歳戦線で上位を争ったマツノヴィグラスやケンシスピリットらを中心に展開していたが、その両馬がともに休養入りしたため、4月以降は様相が一変。2連勝でここに臨むマサヤと、佐賀若駒賞を勝利したミスタージャックの2強ムードとなったが、佐賀でここまで行われたS1重賞勝ち馬が不在のメンバーだけに、高知重賞2勝のニシノマリーナにも勝機ありという構図となった。
 しかし、人気の一角のミスタージャックがゲートで立ち上がり、大きく出遅れる波乱のスタート。これが佐賀転入2戦目となるグライスの逃げを、マサヤが直後の2番手で追走し、ニシノマリーナは先行3頭を見ながらの隊列となった。
 向正面でニシノマリーナが後退。「距離なのか、輸送の影響があったのか、まったく手ごたえがありませんでした。高知ではこんなことは一度もなかったのですが」と鞍上の上田将司騎手が困惑する一方で、中団の馬も位置取りを上げ、直線入口では8頭が横に広がる大混戦に。内を突いたテッドが一旦は先頭に立ったが、大外から伸びてきたオールラウンドが優勝争いの馬群を一気に抜き差り、テッドに1馬身半差をつけての勝利となった。
 オールラウンドの鞍上に起用された佐賀の田中純騎手は、所属していた荒尾競馬の廃止で一旦は騎手を引退したが、12年に福山での期間限定騎乗で現役に復帰。翌13年から佐賀の所属となり、佐賀でのS1重賞初勝利が“ダービー”のタイトルとなった。
 同馬を管理する別府真司調教師は、騎手として佐賀所属の経験がある。また、この日の日本ダービーをワンアンドオンリーで制した橋口弘次郎調教師も騎手としては佐賀デビューと、「Wダービー」は両レースとも佐賀ゆかりの調教師の勝利となった。
 栄城賞がそれまでの佐賀所属馬限定戦から、九州地区交流戦となったのが00年。その後、交流範囲は四国・九州に拡大され、高知からは07年のスパイナルコード(7着)以降、昨年までに5頭(他に出走取消1頭)が栄城賞へ出走。今年は高知から2頭が遠征し、のべ7頭の挑戦でついに高知勢が栄冠を獲得した。
 一方で佐賀勢にとっては、花吹雪賞、ル・プランタン賞の2重賞を今回のオールラウンドと同じ別府真司厩舎のクロスオーバーに勝利され、栄城賞も地区交流化以降初めて他場所属馬の勝利を許すこととなった。古馬戦を含めて、これで今年佐賀で行われた交流重賞は6戦すべてで他地区、JRAが勝利と、ちょっと佐賀勢の元気がない状態だ。
 9月に行われるロータスクラウン賞も四国・九州交流戦だ。別府調教師は「機会があればまた佐賀に挑戦しに来たい」とのことで、佐賀勢にとってはクロスオーバーやオールラウンドとの再戦もありそう。休養中のマツノヴィグラスは同レースを目標としており、夏を越しての立て直しに期待したいところだ。
田中純騎手
出遅れてしまいましたが、ぎりぎりまで溜めてくれという指示だったので最後だけを意識して乗っていました。4コーナーで前の馬と自分の馬の手ごたえを見比べて、行けるかなという自信はありました。佐賀で(再)デビューして2年目で勝たせていただいて、これからも一生懸命乗っていきたいと思います。
別府真司調教師
馬の状態がすごく良く、ピークに持ってこれました。2000メートルは向いていると思い、ここを狙ってみましたが、勝てるとまでは思ってなかったですね。出遅れはありましたが、高知でも差しているので、中団より後ろの理想的な位置が取れました。ジャパンダートダービーにも挑戦したいですね。


取材・文:上妻輝行
写真:国分智(いちかんぽ)