未来優駿 総括 タイトル

目立った新種牡馬産駒の活躍
デビューから連戦連勝も2頭

 7年目を迎えた『未来優駿』は、今年から北海道のサッポロクラシックカップが重賞に格付けされたことで、全7戦がすべて重賞となった。
 まずは昨年の未来優駿勝ち馬のその後を見ていこう。

ダービーグランプリで岩手三冠がかかるライズライン
 若駒賞(盛岡)を制したライズラインは、冬期に南関東に移籍して結果を残せなかったが、岩手に戻って今シーズンの成績が素晴らしい。やまびこ賞を圧勝し、岩手ダービーダイヤモンドカップ、芝のオパールカップ、そして不来方賞と重賞4勝。ただ一度2着に負けたのは古馬のA級一組特別。ダービーグランプリで、2010年のロックハンドスター以来の岩手三冠を目指すことになるのだろう。
 兼六園ジュニアカップ(金沢)のフューチャースターは、今シーズンは古馬B1級1組を1勝したのみ。
 兵庫若駒賞(園田)のトーコーポセイドンは、年末の園田ジュニアカップも制した。しかしその後の復帰が遅れ、3歳初戦として臨んだ兵庫ダービーでは僚馬トーコーガイアの3着に敗れたが、金沢に遠征したMRO金賞を制した。4歳以降も重賞戦線での活躍が期待できそう。
 九州ジュニアチャンピオン(佐賀)のマツノヴィグラスは、カペラ賞、年明けの佐賀プリンセス賞と連勝したが、その後は長期休養を挟んで勝ち星がない。
 サッポロクラシックカップ(門別)のドントコイは、シーズン終了後に川崎に移籍したが、残念ながら南関東では掲示板も遠いという状況。
 平和賞(船橋)のナイトバロンは、全日本2歳優駿のゲート内で立ち上がるなどして除外。さらに休養を挟んだ羽田盃も除外となるなど気性面で難しく、その後は結果を残せていない。

復帰が待たれるリーダーズボード
 無敗のままゴールドウィング賞(名古屋)を制したリーダーズボードは、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡで3着と好走。年が明けて新春ペガサスカップ、駿蹄賞を楽勝。地方馬には一度も先着されたことがないまま東海ダービーを迎える予定だったが、出馬投票直前に回避となった。馬房内でのアクシデントだったようで、放牧に出されて復帰の予定はたっていないようだ。
 というわけで、未来優駿2013の勝ち馬で今年のダービーウイークを制したのは、岩手のライズラインのみ。そればかりか、ダービーウイークの出走に辿りつけたのも、ほかには兵庫若駒賞のトーコーポセイドン、平和賞のナイトバロンと2頭だけ。実力はあっても無事にレースを使っていくことがいかに難しいことかをあらためて思わされる。

カネヒキリ(2009年川崎記念)
ヴァーミリアン(2008年JBCクラシック)
少ない産駒数ながら活躍馬を輩出しているルースリンド
(2008年東京記念)
 さて、未来優駿2014でまず目立ったのは、全7戦の勝ち馬のうち、3頭が新種牡馬の産駒だったこと。サッポロクラシックカップのコールサインゼロは父カネヒキリ、九州ジュニアチャンピオンのイッセイイチダイは父ヴァーミリアン、平和賞のストゥディウムは父ルースリンド。この3頭の種牡馬に共通するのは、現役時にダートで活躍馬したということ。カネヒキリとヴァーミリアンは同じ2002年生まれで、ダートGⅠ戦線で互いに鎬を削り、ともにNARグランプリでは特別表彰馬またはダートグレード競走特別賞を受賞し、JRA賞では最優秀ダートホースに選出された。ルースリンドは南関東で重賞4勝という成績で種牡馬となり、父仔ともに船橋の矢野義幸調教師による管理馬ということは、平和賞のレースハイライトでも詳しく触れられている。
 異色の種牡馬は、ゴールドウィング賞の勝ち馬ヒメカイドウのカルストンライトオだ。現役時はアイビスサマーダッシュを2回制するなど新潟の直線1000メートルで圧倒的なスピードを見せ、2004年のスプリンターズを制してGⅠ馬となった。しかし種牡馬としてはまったくの不振で、これまで重賞勝ち馬どころか、中央・地方を通じて重賞3着以内の入着馬すらいなかった。
 未来優駿シリーズを複数回優勝という調教師の活躍も目立った。東眞市調教師(佐賀)は3連覇(九州ジュニアチャンピオンが未来優駿シリーズではなかった2011年も含めれば4連覇)。千葉幸喜調教師(岩手)、吉行龍穂調教師(兵庫)は2年連続での勝利となった。
 九州ジュニアチャンピオンのイッセイイチダイはこれで4戦3勝だが、若駒賞のロールボヌール、兵庫若駒賞のトーコーヴィーナスは、ともにデビュー以来負けなしで未来優駿シリーズを制した。2歳戦に強い厩舎から、こうした連戦連勝の馬が出てくるというのは無関係ではないのかもしれない。
 また2歳戦で常に注目されるのがホッカイドウ競馬でのデビュー馬だが、門別のサッポロクラシックカップ以外では、兼六園ジュニアカップに北海道からの転入馬が6頭と目立っていたのは、レースハイライトでも触れられていたとおり。そのうち移籍初戦となる馬が2頭いて、その1頭、アロマベールが制することになった。
 一方で、兵庫若駒賞、九州ジュニアチャンピオンは地元デビュー馬限定となっていて、他地区や中央からの転入馬は出走できない。未来優駿シリーズに限ったことではないのだが、転入馬を排除してしまうと、重賞にもかかわらず実力上位馬は別のところにいる、という状況になってしまう可能性もある。地元デビュー馬に活躍の場を与えようという馬主や厩舎関係者への配慮もあるのだろうが、このあたりのバランスは難しい。

若駒賞(優勝:ロールボヌール)
サッポロクラシックカップ(優勝:コールサインゼロ 写真真ん中)
ゴールドウィング賞(優勝:ヒメカイドウ)
九州ジュニアチャンピオン(優勝:イッセイイチダイ)
平和賞(優勝:ストゥディウム)
兵庫若駒賞(優勝:トーコーヴィーナス)
兼六園ジュニアカップ(優勝:アロマベール)

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ、NAR



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