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2018年2月28日(水) 川崎競馬場 2100m

思い通りに運びゴール前差し切る
休養を挟んでの成長で充実見せる

 2017年JBCレディスクラシックJpnⅠの覇者、ララベルがフェブラリーステークスGⅠの出走を最後に引退。2月24日に大井競馬場で行われた引退式には多くのファンが訪れ、地元が生んだ名牝を見送った。さて、次に女王の座につくのはどの馬なのか。その候補たちが今回のエンプレス杯JpnⅡに集結した。
 昨年のクイーン賞JpnⅢを圧勝したプリンシアコメータ、今年のTCK女王盃JpnⅢの勝ち馬ミッシングリンク、このレース2連覇を狙うワンミリオンス、昨年3歳時のスパーキングレディーカップJpnⅢで古馬を一蹴したアンジュデジールと、ここ1年で牝馬ダートグレードを優勝した馬たちが出走。人気も混戦模様で、この4頭が単勝5倍以下にひしめきあっていた。地方馬では、牝馬ダートグレードで常に上位を確保しているラインハートや、NARグランプリ2017・3歳最優秀牝馬を受賞したステップオブダンスが注目を集めていた。
 ゲートが開いて真っ先に先頭に立ったのはサルサディオーネだった。2番手にプリンシアコメータ、3、4番手にアンジュデジールとミッシングリンクが続き、その後ろにラインハート、ステップオブダンス、ワンミリオンスが追走した。
 快調に逃げるサルサディオーネは、3コーナーあたりでペースを上げ逃げ込み態勢。直線に入ると、プリンシアコメータがそのサルサディオーネに迫ろうとしていたが、さらに外から鋭い脚で伸びてきたのがアンジュデジールだった。ゴール手前で2頭を交わし1馬身半差で優勝を飾った。
 2着争いを制したのはプリンシアコメータ。岩田康誠騎手は「3コーナーで少し離された分が響いたかもしれません。直線では思ったより反応が良くありませんでした。それでも自分の競馬はできました」と振り返った。
 3着のサルサディオーネは久しぶりに馬券圏内に入った。「自分の競馬に徹してリズム良く運べました。現段階では無理してでも逃げた方が良いと思います」と丸山元気騎手。昨年のレパードステークスGⅢ・2着の実績があるだけに、これが良いきっかけになるかもしれない。
 優勝したアンジュデジールはこれで重賞2勝目。今回は昨年のクイーン賞JpnⅢ・2着以来、約3カ月の休み明けだった。レース後、横山典弘騎手は「一息入れたことで、休む前よりすごく良くなっていました」と変わり身があったことについて語った。
 昆貢調教師によると「昨年の秋、体を大きくしようと試みました。幅は出たのですが逆に重くなったようで、走り辛そうだったので短期放牧に。キ甲もすっきり抜けた感じで、すごく良くなって帰ってきました」とのこと。まだ4歳になったばかりのこの馬にとって今回の休養は成長を大きく促す特別な期間になったようだ。さらに昆調教師は「もともと完成度の高い馬ですし、自分が狙っていた感じになっています。あとはジーワンを勝ってくれれば完璧ですね」とにっこり微笑んだ。今後、アンジュデジールが勢いそのままにトップを維持できるのか、牝馬戦線の行方から目が離せない。
 そして、地方馬最先着はまたもや大井のラインハート。直線は内から伸びて、3着馬とは1馬身半差の4着だった。「馬はいつもがんばってくれています。力差はそんなにないと思うので展開次第でチャンスはあるはず」と悔しさともどかしさが混じった表情の笹川翼騎手。どこかでそのチャンスを掴んでほしいと願うばかりだ。
 
横山典弘騎手
レースは大体こうなるだろうな、馬もこういう走りをするだろうなと思っていた通りの競馬ができました。違ったのは馬の状態が思ったより良かったこと。休み前はモタモタするところがありましたが、今日の最後の動きは想像以上に凄い切れ味でした。まだ若い馬なので伸びしろもあるし今後が楽しみです。
昆貢調教師
ポジションは最高の位置だったのであとは他馬の手ごたえ次第だと思いながら見ていました。中央だと1600メートルがベストですが、地方は小回りで息も入りやすいので距離も大丈夫でしょう。スパーキングレディーカップの連覇を狙いたいですが、そこまでのローテーションついてはこれから考えます。

地方馬最先着は大井のラインハート

取材・文:秋田奈津子
写真:岡田友貴(いちかんぽ)