dirt
2017年5月3日(祝・水) 名古屋競馬場 1400m

先手を主張して完璧な逃げ切り
JRA勢を圧倒し短距離の主役へ

 ダートグレードレースの多くにあてはまることだが、かきつばた記念JpnⅢもJRA勢が上位人気を占めることがほとんど。しかし今年は兵庫のトウケイタイガーが4.9倍の2番人気に支持された。
 トウケイタイガーはJRA所属時が1000万条件で頭打ちという成績で、兵庫所属として出走した2走前の黒船賞JpnⅢでは6着。それでも今年からハンデ戦に変更されたこのレースでは52キロに設定されたこと、前走が同じ名古屋1400メートルの東海桜花賞で圧勝したことなどが評価されたようだ。
 対するJRA勢は、5頭すべてが53キロ以上。もっとも重いハンデを課されたのは58キロのレーザーバレットで、一昨年2着、昨年3着という実績が評価されたのか、6.5倍で3番人気。連勝中の勢いがあるショコラブランが2.0倍で1番人気に支持された。
 1400メートルの経験が少ないタムロミラクルはパドックで尻っぱねをするなど落ち着きがなかったが、周回を重ねるとそれも解消。最終的には8.7倍で4番人気になった。名古屋大賞典JpnⅢに続いて当地に参戦してきたドリームキラリが9.2倍で、この5頭が10倍未満。JRAのタイニーダンサーと、昨年に続いて出走してきた岩手のラブバレットが10倍台前半で続いた。
 まさに五月晴れという空の下、たくさんのファンに見守られてのスタートは、トウケイタイガーがすぐに先手を主張。1コーナーでは単騎逃げの展開に持ち込んだ。その直後にはタイニーダンサーが追走し、ラブバレットも位置取りを上げ、先頭を射程圏に入れる形でレースを進めた。
 3コーナー手前の勝負どころ。中団から差を詰めにかかったタムロミラクルが外を回り、同じような位置からショコラブランはインを選んで進出開始。しかしショコラブランはそのあたりで一瞬、前の馬たちから置かれる感じになった。4コーナー手前からは進路を外に見つけて追い上げていったが、そこでのロスは大きかったようだった。
 その2番手以下の攻防を尻目に、トウケイタイガーは最後の直線に入る手前から後続を突き放しにかかった。その差は徐々に広がって、ゴール地点では2着のタムロミラクルに4馬身差。逃げた馬が上がり3ハロンを最速で走ったのだから、文字通りの完勝だ。
 「よかった。黒船賞のときは何もできなかったからね」と、川原正一騎手は満足そうな笑顔。ゴール後は快走の勢いのまま、馬場をもう1周してウイニングラン。3年前に優勝したタガノジンガロ以来となる兵庫所属の人馬には、大きな拍手と声援が贈られた。
 3着には最後の直線で伸びてきたショコラブランが入線。しかしゴール後は1コーナーを曲がらずに走ろうとして鞍上に抵抗。そこで肩ムチを入れたことが、「ムチの使用に関するガイドライン」に抵触することになり、デムーロ騎手には2日間の騎乗停止が発表された。
 ファンの期待を集めていた地方所属馬のもう1頭、ラブバレットは好位からの粘り込みを狙ったが、2着馬から0秒2差で5着。菅原勲調教師、山本聡哉騎手とも「状態面がもうひとつでしたから」と口をそろえた。それでも「次はさきたま杯を目指します」と菅原調教師。これから夏に向けて、上昇していくことを期待したい。
川原正一騎手
スタートがよかったら逃げるつもりでしたが、少し出負け。でも行き脚がついたので先手を取りに行きました。途中、直後にいるのがラブバレットだとわかったので、それなら流れはあまり速くならないだろうと判断したのですが、最後の直線では僕の気持ちに余裕がなかったです(笑)。
住吉朝男調教師
こういう馬にはなかなか巡り会えないですし、パドックは最後の1周だけ、気合を入れようと一緒に回りました。前回の東海桜花賞は園田から2時間で着きましたが、今回は連休中で5時間。でもなんとか輸送をクリアして、よく頑張ってくれました。今後は少し休ませて、秋はJBCに行きたいと思います。


取材・文:浅野靖典
写真:宮原政典(いちかんぽ)