dirt
2017年10月3日(火) 金沢競馬場 2100m

2番手から抜群の手応えで押し切る
骨折休養から7歳にして完全復活

 昼過ぎまで弱い雨が降り続いていた金沢競馬場。メインレースの頃にはその雨も止み、青空が見える時間帯もあったが、1レースから水の浮いた不良馬場でレースが行われていた。
 金沢競馬、年に一度のダートグレード・白山大賞典JpnⅢ。歴代の勝ち馬には後のジーワン馬が名を連ねており、昨年の覇者ケイティブレイブが今年の帝王賞JpnⅠを制したのも記憶に新しいところ。出世レースともいえるこのレースに、今年はJRAから5頭、地方馬5頭の10頭が集まった。
 対戦経験も少なく力比較が難しいメンバーだったが、最終的に1番人気に支持されたのは実績上位のインカンテーションで単勝2.0倍。クリノスターオーとコパノチャーリーが4.9倍で並び、タガノディグオが5.0倍とJRA勢4頭が混戦模様。地方馬の筆頭、名古屋のカツゲキキトキトは11.2倍で5番人気と続いた。
 ゲートが開くと先手を取ったのはクリノスターオーで、外からインカンテーションが2番手につけた。スタートで出遅れたコパノチャーリーが3番手まで押し上げ、4番手の内にカツゲキキトキト、その直後にタガノディグオ、ナムラアラシが続いた。
 向正面半ば過ぎ、インカンテーションがスッと前に並んだ。対するクリノスターオーの幸英明騎手は腕を動かし必死に応戦している様子で、手応えの違いは一目瞭然。「追い出した時には勝てると思いました」と岩田康誠騎手が振り返ったように、3コーナー過ぎで先頭に立ったインカンテーションは、直線に入ると後続との差を広げ、そのまま力強く押しきった。2馬身半差がついての2着争いは、粘るクリノスターオーをカツゲキキトキトが外からとらえ、半馬身差で制した。
 これで重賞5勝目となったインカンテーション。昨年は骨折のため長期休養を余儀なくされ、復帰後も成績不振が続いていたが、今年3月のマーチステークスGⅢを10番人気で制し復活を遂げると、かしわ記念JpnⅠで2着と健闘し存在感を見せていた。「骨折で休んでいたせいか、ちぐはぐな競馬になっていましたが、フェブラリーステークスGⅠの時に積極的なレースをしたことで目が覚めたみたいです。その後は順調ですね」と羽月友彦調教師。7歳にして完全復活となった。今後は条件やメンバーを考慮してレースを選ぶことになるようだが、次走以降も注目を集めることだろう。
 そしてレース後、勝ち馬以上にファンの声援が送られていたのがカツゲキキトキトだ。大畑雅章騎手は開口一番「4コーナーでは勝てるかもと思いましたよ!」と興奮した表情。「位置取りも予定通りで、3~4コーナーは手応え抜群でした。状態は前回が7割なら、今回は8割くらいで、徐々に良くなっています。昨年と比べると確実に力をつけていますし、特にスタミナがつきました。今日のレースぶりからも中央馬相手に1着目指せますね」
 今年は佐賀記念JpnⅢ・4着、名古屋大賞典JpnⅢ・3着と、ダートグレードで見せ場を作ってきたカツゲキキトキト。あとは先頭でゴールを駆け抜けるシーンを残すのみだ。次走については、今回のレース結果が出てから検討する予定だったということで、JBCへ向かう可能性もあるとのことだ。
 なお、今回の白山大賞典JpnⅢの売得金額2億8969万4700円は、昨年を上回るレコードとなった。
岩田康誠騎手
逃げてもいいと思っていたが、内に行く馬がいたので番手に抑えて自分のペースで行きました。後ろも気にしながらレースを進め、勝負どころではいい手応えでした。馬場も気にせず走ってくれました。前回、しぶとくて力のある馬だなと思いましたが、その時より状態も良く返し馬でも調子の良さを感じました。
羽月友彦調教師
1周半の競馬をしたことがなかったので不安はありましたが、掛かることなく走ってくれてホッとしました。7歳ですがまだ衰えてはいないです。1番のセールスポイントは賢さ。人間の言うことも良く聞いてくれるし無駄な力は使わない、とても可愛い馬です。距離は1800メートルがベストですね。

地方勢最先着の2着に入ったカツゲキキトキト

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)