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2017年11月21日(火) 園田競馬場 1400m

断然人気に応え好スタートから逃げ切る
血統馬がダート路線の有力候補に名乗り

 近年の2~3歳のダート路線は、ケンタッキーダービーまで視野に入り、以前にも増して注目度が高まっている。2歳の11月に行われる兵庫ジュニアグランプリJpnⅡも、12月の全日本2歳優駿JpnⅠをはじめ、翌年を占う意味でも興味深い位置付けとなっている。今年も将来を嘱望される砂の優駿が園田に駒を進めてきた。
 注目はJRAで2戦2勝のハヤブサマカオー。7月の札幌でのデビュー戦は2着に1秒7の大差をつけ勝利すると、10月京都のなでしこ賞では4馬身差の完勝。いずれも楽にハナに立って、直線で突き放す圧倒的な内容だった。血統も母の母にダートグレード8勝のプリエミネンスがおり、申し分ない。その底を見せない強さから、単勝1番人気は当然としても、最終的なオッズは元返しぎりぎりの1.1倍となった。
 2番人気は今年の地方も中央も含めた2歳戦で活躍している北海道のソイカウボーイが6.9倍。昨年のこのレースを6番人気で制したローズジュレップの田中淳司調教師と川原正一騎手が再びタッグを組んでの出走が不気味に映る。3番人気はJRAのアスターソードで13.6倍。4番人気以下は単勝20倍を超え、不確定要素の多い2歳戦ながら、オッズだけを見れば、一強で断然のムードを色濃く漂わせていた。
 レースはクリストフ・ルメール騎手のハヤブサマカオーが好スタートからハナに立って主導権を奪う。1コーナーを5番手で回ったアスターソードは2コーナーでは好位の外に進出し、チャンスをうかがった。中団の内6番手を追走したソイカウボーイは向正面で外に持ち出すと、一気に先行集団に襲いかかった。
 しかし、軽快に逃げるハヤブサマカオーのスピードは衰えない。4コーナーで外からアスターソードに馬体を併せられ、迫られても、前に出ることは決して許さない。クビ差リードを守って、デビュー以来、無傷の3連勝で重賞初制覇を飾った。「最後は(アスターソード騎乗の)和田さんが大きな声を出してたので、私はちょっと怖かった(笑)。でも馬が頑張ってくれた」とルメール騎手はジョークを交えながら、ゴール前の攻防を振り返った。
 2着が3番人気アスターソード、2馬身差の3着が2番人気ソイカウボーイで、3連複480円、3連単が1270円と平穏な結果に終わった。
 伊藤圭三調教師は母の母であるプリエミネンスも自らが育てた馬。プリエミネンスの子供と孫を合わせても、今回が重賞初制覇となったが、「厩舎ゆかりの血統で重賞を勝てて、本当にうれしい」と喜びをかみしめた。
 今後の予定については全く未定。伊藤調教師も「レースを使うのか放牧に出すのか、それも含めて、馬の状態を見てから決めたい」と即答を避けた。とは言え、砂の名牝の血を受け継いだ楽しみな2歳馬がダート路線の有力候補として名乗りを上げたことだけは間違いない。
C.ルメール騎手
好スタートを切って、リラックスして楽に逃げられましたし、追ってからの反応も良かったです。最後は砂が深くて詰め寄られましたし、JRAの浅い砂の方がいいのかも。でもよく頑張りました。これからまだ良くなってくるし、3歳になっても大きなレースを勝てると思います。
伊藤圭三調教師
圧倒的な1番人気でしたが、地方の深い砂が大丈夫かなと、レース前は正直、半信半疑でした。スピードがあるので前に行くと騎手も言ってましたし、レースは予定通りでしたが、最後に詰め寄られたのは、やはり深い砂のせいでしょうね。これが今後に向けての課題でしょうね。


取材・文:松浦渉
写真:桂伸也(いちかんぽ)