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2017年12月3日(日) JRA中京競馬場 ダート1800m

名手の手綱でゴール前末脚一閃
JRAダートGⅠ同一年制覇は3頭目

 今年のダートGⅠ/JpnⅠ戦線は、ここまで複数のレースを制したのが、かしわ記念JpnⅠとマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠを制したコパノリッキーだけ。そのコパノリッキーは前走がJBCスプリントJpnⅠ(2着)で、このレースでは過去3年いずれも着外に敗れているだけに、確たる主役不在でファンの評価も分かれた。
 昨年の東京大賞典GⅠを制していたアポロケンタッキーが右前肢跛行のため当日朝に出走取消。それでもGⅠ/JpnⅠ勝ち馬が6頭というメンバーながら、1番人気に支持されたのは、前走みやこステークスGⅢが重賞初制覇だったテイエムジンソクで単勝4.8倍。前走JBCクラシックJpnⅠを制して、このレース連覇を狙うサウンドトゥルーが5.4倍、ケイティブレイブ、アウォーディー、カフジテイクまでが単勝一桁台のオッズだった。
 最内枠で包まれることが懸念されたコパノリッキーだが、互角のスタートからハナをとった。外枠からテイエムジンソクが2番手につけ、内の3番手にケイティブレイブ。競りかけてくる馬もいなかったため、1000メートル通過は61秒6とペースは落ち着いた。
 不安視された1番枠も、マイペースの逃げという、これ以上ない展開に持ち込んだコパノリッキーは、手ごたえ十分のまま直線を向いて追い出された。なかなか並びかけられないテイエムジンソクだったが、ゴール前でようやくとらえたと思ったところ、外から一気に差し切ったのがゴールドドリームだった。
 直線を向いて先行3頭が一旦は4番手以下との差を広げ、明らかな前残りの展開。ゴールドドリームは4コーナー11番手という位置取りから、1頭だけ次元の違う末脚を発揮。上り3ハロン35秒2は出色だが、特にゴール前100メートルの伸びが際立っていた。
 2着テイエムジンソクの古川吉洋騎手は「GⅠ初挑戦で、勝ちに行って最後に負けた感じなので仕方ない。自分の競馬はできた。勝ったと思ったけどね。いつもの状態でスーッと行けたけど、なかなか(コパノリッキーを)交わせなかった。それがGⅠ馬ばかりが相手の競馬なのかも」。3着コパノリッキーの田辺裕信騎手は「短距離を使ったからか、行き脚も良くて折り合いもついた。理想的な競馬ができた」。ともに能力を出し切っての結果だ。
 クビ、クビという差の接戦だが、ゴールドドリームの完勝と言っていいレース内容。スローに流れて直線の上り勝負で、最下位入線のロンドンタウン以外、14着馬までが勝ち馬から0秒9差。「予想外にペースが落ち着いて、馬群が固まって直線ごちゃついたところがあったので」(大野拓弥騎手)というサウンドトゥルーは、デビュー以来初めての二桁着順となる11着だった。
 勝ったゴールドドリームは、今年フェブラリーステークスGⅠも制しており、チャンピオンズカップGⅠとの同一年制覇(旧ジャパンカップダート時代も含む)は、2000年ウイングアロー、2011年トランセンドに続いて史上3頭目の快挙となった。
 ドバイワールドカップGⅠで14着に大敗したあと、帝王賞JpnⅠ・7着、マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ・5着と結果が出なかったのは、「いろいろなところで噛み合わないことがあって」と平田修調教師。「帝王賞はしっかり競馬をしてあの結果だったので、2000メートルは長いのかもしれない。南部杯はゲートの中で落ち着かず、大きく出遅れました」。もともとスタートに難があり、ゲートの中で落ち着かせる練習をして臨んだ一戦。今回も必ずしもいいスタートではなかったが、「ダートではギアを上げるのがゆっくりな馬が多い中で、最後に切れるのがこの馬の一番の武器」と話したライアン・ムーア騎手が、その持ち味を存分に発揮しての勝利だった。
 「JRAでは強いレースをしてくれるけど、地方の小回りではあまりいい競馬ができないので、真のダートチャンピオンになるにはそれを克服しないと」という課題も挙げた平田調教師。次走は「おそらくフェブラリーステークスになるでしょう」とのこと。

ライアン・ムーア騎手
平田修調教師


取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智、早川範雄)