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レースハイライト

第42回 名古屋大賞典 JpnⅢ

2019年3月14日(木) 名古屋競馬場 1900m

人気集めた4歳馬のワンツー 兵庫マイタイザンが4着健闘

 武豊騎手のすごさが改めて浮き彫りになるレースだった。JRAから5頭、他地区1頭を迎えフルゲート12頭立てで行われた名古屋大賞典JpnIIIは、武騎手で1.9倍の単勝1番人気・グリムが優勝した。
 戦前の注目は“強い4歳世代”の2頭。前出のグリムと、ヒラボクラターシュが2番人気の単勝2.4倍で人気を分け合った。ヒラボクラターシュは前走・佐賀記念JpnIIIではJRAが代替開催の影響で、当初騎乗予定だった福永祐一騎手から山本聡哉騎手に急遽乗替わるハプニングもあったが完勝を収め、地方の馬場や小回りコースへの適応力を見せた。一方のグリムも昨年、白山大賞典JpnIIIをレコード勝ちするなど、地方の馬場への適性は証明済み。
 好スタートからダッシュを利かせ先頭に立ったのはマイタイザン(兵庫)。「6歳になりましたが、どんどんスタートに磨きがかかっています」と杉浦健太騎手。2番手にグリム、その内にヒラボクラターシュ、続いてアナザートゥルースという隊列でレースは進んだ。
 「もう少し速くなるかと思いましたが、ゆっくりしたペースで馬も息が入りました」と杉浦騎手。その流れを支配したのは2番手でグッと控えたグリムと武騎手だろう。最初のコーナーでは後方の地方馬でさえジョッキーがガッチリと抑えるペース。2周目3コーナー手前でJRA5頭とマイタイザンが一団となった。グリムは絶好の手応えながら、追い出しをギリギリまで我慢され、先頭に躍り出たのは残り100メートル手前。
 それを待ってようやく追い出せたのは内にいたヒラボクラターシュ。すでにゴールまでの距離はわずかで、1着グリムから1馬身半差の2着が精一杯だった。「内枠だったので動くに動けないかたちになってしまいました」と唇を噛んだ福永騎手。しかしながら、これまでは怖がりな面もあり、先行集団の外でレースを運ぶことがほとんどだった同馬が「最初から最後まで馬群でじっと我慢ができたことは収穫」と大久保龍志調教師は話した。
 さらに2馬身離れた3着にアナザートゥルース、逃げたマイタイザンは展開も味方して2馬身半差の4着で地方馬最先着。「3~4コーナーでは一瞬だけ夢を見ました」と杉浦騎手は悔しさの中にも清々しい表情を見せた。新井隆太調教師によると「次走は兵庫大賞典で、その後またダートグレードレースを使うかは馬の様子を見ながら慎重に考えたい」とのこと。
 グリムを管理する野中賢二調教師は「元々、緩さがあって、成長待ちということもあり地方のダートグレードレースを使っていましたが、獣医の話でも馬体も中身もかなり良くなっているということです。オーナーと相談して中央の重賞を狙いにいってもいいのかなと思います。まだセールスポイントと言えるほどのものがない、のびしろだらけというのがこの馬のセールスポイントじゃないでしょうか」と将来性を話した。
 ホワイトデーのこの日は武騎手の50歳のバースデーイヴでもあった。「40代最後のレースで勝てて嬉しいです」とはにかむ武騎手に競馬ファンから熱い声援と拍手が送られた。

地方最先着は4着のマイタイザン(兵庫)
取材・文:大恵陽子
写真:桂伸也(いちかんぽ)

コメント

武豊騎手

みなさんの期待を背負って、今日はいい騎乗をしたいという気持ちが強かったです。2番手で理想的な展開になりましたし、前走とは別馬のように状態が良くて強かったですね。まだ4歳でようやく本格化してきたところ。かなり素質を感じます。個人的には40代最後のレースを勝てて嬉しいです。

野中賢二調教師

前走の名古屋グランプリでは物見をしていましたが、2回目の今日はいい意味で落ち着いていて、いい状態でした。前走は先頭に立ってフワフワしていたので、2~3番手でもいいのかな、と騎手と話していました。4コーナーでは前進気勢もあり、安心して見ていられました。強い競馬をしてくれましたね。