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当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

経験を生かした地方騎手が躍進
2年連続で地方騎手がファイナル優勝

2019年1月16日

平均ポイントから上位着順4戦の争いに

 地方競馬では主催者ごとにさまざまだった減量騎手の規定が、YJSをきっかけにほぼ統一された。南関東だけは以前のまま3年もしくは50勝だが、それ以外の地区は細かなところでは違いもあるようだが、中央に倣って5年または100勝となった(中央は正確には101勝だが)。
 2017年にも減量規定の変更によって減量が復活し、このシリーズに出場した騎手が何名かいたが、2018年は塚本弘隆騎手が南関東から金沢に移籍したことで減量が復活し、5年目ながらYJS初出場となった。
 2年目を迎えたYJSでは、初年度から大きな変更点が2つあった。
 ひとつはトライアルラウンドのスタートが2017年は4月下旬だったものが、2018年は6月中旬と、2カ月近く繰り下げられたこと。4月下旬では、地方ではまだデビューして1カ月も経過していない騎手が出場する可能性があり、そうしたことに対応したのだろう。
 もうひとつはトライアルラウンドポイント。2017年は着順ポイントの合計を出場レース数で割るという平均点での争いだった。40名ほどの大人数が長期間で争うということでは騎乗数を統一することはほぼ不可能で、平均点というのはある意味公平ではあるが、シリーズが進むにつれてポイントが増えたり減ったりするというのはわかりにくかった。変更された2018年のトライアルラウンドポイントは、全騎乗のうち上位を得た4競走分のポイント合計で争うというもの。これはこれで騎乗数がひとつでも多いほうが有利という問題は生じてしまうが、ポイントが減ることはないのでわかりやすい。途中辞退や騎乗停止、怪我などの騎手を別とすると、騎手ごとに最少5戦、最大8戦という差があった。

トライアルラウンドは地方騎手が活躍

 今回のトライアルラウンドで目立ったのは、地方騎手の活躍だ。2017年は11場22戦で、地方・JRAが11勝ずつと星を分けたが、2018年は地方16勝、JRA6勝だった。
 トライアルラウンドに限ると、地方騎手は大井所属騎手以外、必ず地元での騎乗があり、さらに近年、若手騎手は他地区で期間限定騎乗を経験している騎手も少なくない。そういう意味では、乗り慣れた競馬場での騎乗が多い地方騎手のほうが好成績を残して当然ともいえる。
 期間限定騎乗の経験を生かして金沢で2勝を挙げたのが松木大地騎手(高知)。1戦目は馬の能力が抜けていて楽勝だったが、2戦目は5番人気。作戦通りの展開で勝てたことでは、会心の勝利となったようだ。
 1つの競馬場で2勝を挙げたのはもうひとり、渡邊竜也騎手(笠松)が名古屋で連勝。同じ東海地区ということでは騎乗経験も豊富だが、2戦目の騎乗馬が名古屋・弥富トレセンで調教に騎乗したことがあったという、普段からの積極的な姿勢が幸運につながった。渡邊騎手はデビューした2017年に地方騎手では最高ポイントでトライアルラウンドを通過したが、今回も地方・西日本1位でファイナル進出を果たした。
 トライアルラウンドでは、上記2名が所属する地方・西日本が高ポイントで上位拮抗の激戦区となった。渡邊騎手95pt、松木騎手92pt、長谷部駿弥騎手(兵庫)90ptで、3名が90pt台の争い。4位の石堂響騎手(兵庫)も1勝、2着1回、3着2回で80ptを獲得したが、地方全体で1位が東日本の騎手だったため、惜しくもファイナルには進めなかった。
 その地方全体で1位となったのは櫻井光輔騎手(川崎)。3勝、4着1回という成績で、唯一100pt超えとなる102ptを獲得。とはいえ8回の騎乗で1ptが2回、2ptが1回あったから、「上位4戦のポイント合計で」という今回のルールを最大限生かしての高ポイントともいえそうだ。
 対象的だったのは、地方・東日本2位となった山本咲希到騎手(北海道)。5回の騎乗ながら、1勝、2着2回、3着1回。ポイントには含まれなかった1戦も5着に入るという好成績を残した。
 JRAでは、前述のとおり全体で6勝(東・西3勝ずつ)という中で唯一2勝を挙げ東日本1位となったのが木幡巧也騎手。西日本では1勝、2着3回の義英真騎手が、JRA所属騎手では唯一90ptを獲得してJRA全体でも1位となった。


櫻井騎手が完全優勝

 ファイナルラウンドに2年連続で出場したのは、地方は渡邊騎手ただ1人。JRAでも横山武史騎手、荻野極騎手の2人だけ。一方でこの年デビューの新人が、地方では吉井章騎手(大井)、落合玄太騎手(北海道)、JRAが西村淳也騎手、服部寿希騎手で、各2名ずつと健闘が目立った。
 なお2017年にはトライアルラウンドすべてのレースで5着以内に入り、JRA東日本1位となった藤田菜七子騎手だったが、今回はファイナルには進めず、興行的にはやや残念だった。
 ファイナルラウンドでは、トライアルラウンドで印象的な活躍を見せた騎手の活躍が目立った。
 大井では2戦とも1番人気馬に騎乗という幸運もあり、櫻井騎手が1着、2着。中山では上位に入れなかったものの、大井での高ポイントで優勝となった。前述のとおりトライアルラウンドでは出場全騎手で最高ポイントを獲得しており、いわば“完全優勝”となった。2017年にデビューし、2018年末までで通算47勝。YJS優勝のあと、間もなく減量卒業となりそうだ。
 ファイナルラウンド2位は、大井第2戦を3番人気で勝ち、中山第2戦で5着に入った荻野騎手。2016年デビューで、2018年末でJRA97勝(ほかにJRA所属馬に騎乗して地方で1勝)。あと3勝で減量卒業となる。
 3位には、中山第2戦でJRA初勝利を挙げた松木騎手。4コーナー6番手から外に持ち出し、直線で差し切るという、まさに快勝。2017年のYJSでは地方・西日本5位でファイナル進出はならなかったが、今回はトライアルラウンド金沢で連勝した勢いをそのまま中山に持ち込んだようにも思えた。2015年のデビューで、2018年末までで地方通算71勝(ほかにJRA1勝)。デビュー5年目を迎える2019年がYJS最後の挑戦となる。
 JRAの新人、服部騎手が中山第1戦を制したが、総合ポイントでは松木騎手に1pt及ばず惜しくも4位。
 表彰台に立ったのは、トライアルラウンドでの印象的な活躍だけでなく、実績、経験豊富な騎手たちだった。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ

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