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レースハイライト

第69回 全日本2歳優駿 JpnⅠ

2018年12月19日(水) 川崎競馬場 1600m

幼さを能力でカバーし初タイトル 騎手・調教師もジーワン初制覇

 川崎1600メートルは、なかなかの難コースである。スタートから1コーナーまでの長い直線は簡単にペースを落とさせてくれず、全国屈指のきついコーナーは器用さを試される。若駒にとっては厳しい試練となるが、だからこそ2歳ダートチャンピオン決定戦にふさわしい舞台。加えて、この開催は全体的に時計がかかる、パワー優先の馬場。よりタフさが要求される一戦となった。
 そうであれば、本来は完成度が高い馬に有利であるはず。ところが勝ったのは新馬戦でコーナーを曲がり切れず競走中止となるなど、まだまだ幼さを残すノーヴァレンダだった。
 スタート直後に内の先行馬がごちゃついたが、12番枠からスタートしたノーヴァレンダはそれを見ながら2番手へ。ところが2コーナーで外にふくれ、新馬戦のことが頭をよぎる。それでもコンビを組んで2連勝中の北村友一騎手が懸命に修正。3コーナーで先頭に立つと、直後から追ってきたガルヴィハーラを振り切り、猛追してきたデルマルーヴルもゴール寸前でアタマ差だけ退けて、初のタイトルを手にした。
 北村騎手はデビュー13年目で初となるGⅠ/JpnⅠ勝利。晴れやかな表情で表彰式インタビューに臨み「コーナーリングが上手ではなく、少し曲がりづらそうにしていたけど、能力でカバーしてくれた。最後もしのいでくれてホッとした」と喜びを語った。多少ロスのある競馬だったが、それをものともせず勝ち切ったあたり、ポテンシャルの高さは相当なものがある。
 管理する齋藤崇史調教師も、開業3年目で初の重賞制覇となった。北村騎手とのコンビでは10日前の阪神ジュベナイルフィリーズGⅠ(クロノジェネシス)で2着に敗れており、ゴール前の攻防では「またダメなのかな……」と不安がよぎったという。しかし、この日はノーヴァレンダがしぶとさを発揮し、厩舎にビッグタイトルをプレゼント。「能力は高い馬。あとは精神的に大人になってくれれば」と目を細めた。
 2着のデルマルーヴルは中団から目をみはるような末脚を発揮し、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ勝ちの力を示した。「枠順が良くなかったし、1コーナーでハミをかんでしまったが、最後の直線で手前を替えたらすごく伸びてくれた」とミルコ・デムーロ騎手。スタート直後、掛かり気味に狭いところへ突っ込み、最後の直線でも内にササるなど、レースぶり自体は粗削りだったが、それで2着なら今後に期待を抱かせる結果。さらなる成長を待ちたいところ。
 一方、地方勢では北海道のウィンターフェルの5着が最高。森泰斗騎手は「出遅れたし、外を回ってこの着差。まだ幼さがあるので、順調に成長してくれれば」と話した。道中で遊ぶ面を残しているだけに、伸びしろはまだまだあるはず。今後は船橋の川島正一厩舎に移籍する予定で、新天地での活躍を期待したい。
 また、地元・南関東の筆頭格だったミューチャリー(船橋)は6着で、「スタートで2回ヨレてしまった。でも、しまいは伸びたし能力はある」と御神本訓史騎手。多少気難しい面はあるが、以前の走りからも能力は一級品。この一戦だけで評価を落とすのは早計だ。
 今年から国際交流となり、ケンタッキーダービーへの出走ポイントが20ポイントに倍増するなど、69回目にして進化を続けるこの一戦。しかし、若駒の完成度を試すという点では、今も昔も変わらないだろう。まだまだ課題を残すなかで、それを勝ち切ったノーヴァレンダ。全姉のブランシェクール(レディスプレリュードJpnⅡ・2着など)と同様、もしくはそれ以上の活躍が十分に期待できそうだ。

地方勢では北海道のウィンターフェルの5着が最高
取材・文:大貫師男
写真:築田純(いちかんぽ)

コメント

北村友一騎手

いいスタートが切れて、楽に前につけることができました。ガルヴィハーラを振り切って『勝てるかな』と思ったのですが、最後に詰め寄られてヒヤッとしました。心肺機能が高く、能力は高い馬。でも、まだコーナーリングが上手ではないし、精神的にも幼いから、それを一歩一歩クリアしてほしいですね。

齋藤崇史調教師

新馬戦でコーナーをうまく曲がれなかったのでそれを気にしていましたが、少しふくらみながらもちゃんと曲がってくれました。精神的に大人になってくれたらいいなと思いますが、まだ2歳だから、もっと良くなってくれるでしょう。今後は放牧に出し、様子を見ながら使うレースを考えたいと思います。