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レースハイライト

第18回 兵庫ゴールドトロフィー JpnⅢ

2018年12月27日(木) 園田競馬場 1400m

3番手追走からゴール寸前で逆転 全兄ドリームバレンチノに続く勝利

 昨年は悪天候の影響で、北海道からの遠征馬が津軽海峡を渡れず出走取消が出たが、今年は昨年の2着馬であるラブバレットが公正保持のため競走除外となってしまった。
 兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢは、兵庫のダートグレードレースで唯一、地方所属馬が勝利したことがない。その点からもラブバレットの競走除外は残念だったが、しかし今年は地元に実績馬が2頭いる。エイシンヴァラーは高知で黒船賞JpnⅢを制し、エイシンバランサーは佐賀でサマーチャンピオンJpnⅢを勝利。新聞各紙の記事からも、地方勢で初の優勝への期待が感じられたが、人気の中心はJRA勢だった。
 冷たい風がゴールから4コーナー方向へと吹き抜けていくなか、ブラスバンドによる生ファンファーレに拍手が上がった。エイシンバランサーは10番枠でも先にゲートに誘導され、いやがりながらも枠入り完了。それを合図にほかの10頭も枠入りを開始したが、スタート直前にサンライズメジャーが前扉を突き開けてしまった。大野拓弥騎手は落馬を免れたが、馬体検査の結果、競走除外が発表された。
 JBCスプリントJpnⅠで2着に惜敗したマテラスカイは、目下地方全国リーディングの地元・吉村智洋騎手が鞍上で、単勝1.3倍と断然の支持を集めた。サクセスエナジーが3.8倍で続き、3番人気はウインムートで9.8倍。エイシンバランサーは13.4倍の4番人気。いったんゲート後方に出された各馬は再び、枠入りを開始。生ファンファーレから10分近くたって、ようやくスタートが切られた。
 先手を主張したのはサクセスエナジー。マテラスカイも気合をつけて前に行ったが、2番手で1コーナーを迎えた。その直後にはウインムートとサクラレグナムがつけ、エイシンヴァラー、エイシンバランサーなどは中団から。しかしエイシンバランサーは3コーナー手前で早々に失速。そしてマテラスカイも4コーナーあたりで手応えが悪くなり、5着まで沈んでしまった。
 その一方で先頭争いは白熱。逃げ切りを狙うサクセスエナジーにウインムートが少しずつ接近し、ゴール直前で態勢逆転。ウインムートが初の重賞勝利を果たした。
 ウインムートは逃げ先行で好成績を挙げてきて、今回は3番手追走からの差し切り勝ち。全兄のドリームバレンチノはこのレースを6歳時に勝ち、8歳時と9歳時に2着に入ったが、この馬も同様に息の長い活躍ができるかもしれない。
 アタマ差2着に敗れたサクセスエナジーの松山弘平騎手は「外枠のほうが良かったですし、最後は馬が気を抜いてしまいました」とコメント。もまれると力を出せないタイプだけに、先手を取りに行った分が最後の踏ん張りに響いたところもあるのだろう。
 地方馬の最先着は、2着馬から3/4馬身差で3着に入った地元のキクノステラ。岡部誠騎手は「もうすこしスムーズにエンジンがかかってくれたら、もっときわどかったかも」と話しながらも表情は笑顔。しかし4着に入ったサクラレグナム(高知)の赤岡修次騎手は「ゲートで待たされすぎて、馬がイライラしてしまって」と肩を落とした。9着に敗れたエイシンバランサーの下原理騎手も「2回もゲートに入って、それで道中はハミを取ってくれなくて」と残念そうだった。

地方馬の最先着は、3着に入った地元のキクノステラ
取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)

コメント

和田竜二騎手

最後の直線入口での手応えがよくて、前が開いてくれたら交わせると思ったんですが、サクセスエナジーも加速したのでちょっとあせりました(笑)。展開が向いたとは思いますが、3番手のインで進めて結果を出せたことで競馬の幅も広がるでしょうし、賞金を加算できたことで今後の選択肢も増えると思います。

加用正調教師

今回はなんといっても、補欠の2番手から出走できたこと。運がよかったですね。この秋の2戦はいまひとつでしたが、距離は1200メートルよりも1400メートルのほうが合っているんですよ。だからこの舞台は良かったし、3番手から競馬ができたことが今後につながると思います。和田騎手もうまく乗ってくれました。