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ヤングジョッキーズシリーズ TR 金沢

雨・不良の悪コンディション
  長尾・中山騎手ともYJS初勝利

ここ1~2週間、北陸地方は猛烈な雨によって各地で土砂崩れや川の増水が相次ぎ、大阪と金沢を結ぶ特急サンダーバードは8月10日まで運休になった。ようやく全線で運転が再開されたが、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンド金沢当日は第3レースの出走馬が本馬場に入場する頃に大雨と強風で発走時刻が10分繰り下げ。稍重からスタートした馬場状態は第2レースでの重を経て、あっという間に不良馬場へと変わった。

それでも、この日は多くのファンで賑わい、場内のお寿司屋『金澤玉寿司』では12時半過ぎに「もうシャリがなくなっちゃったよ」と大将の嬉しい悲鳴。場内のそこかしこでは「今村聖奈騎手」という声が聞こえてきて、JRAで重賞初騎乗での制覇を果たし、GI騎乗が可能となる通算31勝へリーチをかけた女性騎手への注目の高さが窺えた。

そうした中、迎えた第1戦でスタートから気迫を見せたのは長尾翼玖騎手(兵庫)。出ムチを数発入れて外から先手を取ると、近2走は上のクラスで走っていたハクサンフラワーはスイスイ進んで行った。4コーナーでは内外から後続馬が追い上げてきたが、1馬身のリードを保って勝利。昨年は両親が金沢へ応援に駆けつけるも、結果を残せなかっただけに嬉しい1勝。しかし、「直線で後ろから誰かが来ている、と感じた瞬間、バランスを崩してしまって」と、本人は冷や冷やしながら、がむしゃらに最後まで追っていたようで、それもまたヤングらしいレースだったとも言えるだろう。

2着は兼子千央騎手(金沢)。「ズブとい馬だと聞いていたので、前に付けたいと思っていました」と話す通り、先行馬を見る4番手外から運び、4コーナーでは外から勢いよく迫ったが、届かなかった。2着20ポイントを獲得したが、「惜しかったし、勝ちたかったです」と肩を落とした。

3着に泉谷楓真騎手(JRA)、4着に今村騎手、5着は魚住謙心騎手(金沢)で「ここが今年のYJSラストとなる予定なので、少しでもポイントを獲りたくて意地の5着です」と次戦へ向かった。

第2戦は服部寿希騎手の騎乗馬が出走取消となって、やや混戦ムード。単勝オッズは最低人気でも46.4倍と割れた。ゲートが開いて積極的に運んだのは兼子騎手と細川智史騎手(愛知)。2頭がハナを競り合う形でやや速いペースで1コーナーを回った。同じくダッシュを利かせて3番手に収まったのは中山蓮王騎手(佐賀)。3コーナーで先頭に並びかけると、最後は2馬身の差をつけて勝った。

中山騎手は今年4月にデビューし、これが通算17勝目。初めての遠征となったこの日は所属の平山宏秀調教師も同行したのだが、第1戦を後方3番手から8着で終えると、「思い切って行け」と喝を入れていた。師匠から直々の言葉に中山騎手も「気持ちが変わりました」と、積極的に先行できたのだった。

2着は中団から抜けてきた泉谷騎手で、果敢にハナを奪った細川騎手は3着。「馬を怖がると聞いていたので、逃げるか2~3番手の外につけたいと思っていました」と序盤のポジション争いを説明。「もっと気持ちよく逃げさせられれば」と悔しがったが、ハナ争いをした相手は最下位なだけに、3着によく粘らせたというべきだろう。4着は「3~4コーナーの内は意外と深くないだろうと思って」とロスなく差し脚を伸ばした深澤杏花騎手(笠松)、5着に今村騎手だった。

JRA西日本の順位は大久保友雅騎手が10着、6着で9ポイントを得て、暫定1位。4着、5着で2戦とも掲示板に載った今村騎手は5位に順位を上げた。今村騎手は2レースともに人気に支持されてはいたが、専門紙や近走を見ると『今村騎手オッズ』に若干なっていた印象。いずれもロスなく立ち回ったことで、1つでも上の着順を狙う気持ちが伝わってきた。

地方西日本は魚住騎手が5着、10着で11ポイントを得て、引き続き首位をキープ。ここが最後の予定のため、ファイナル進出は他の騎手の結果待ちということになる。同じく中山騎手もこれでトライアルラウンドは最後の予定。今年が初のYJS参戦だったが「始まってからあっという間でした」という感想の通り、わずか2週間のうちに佐賀と金沢でトライアルラウンド参戦となった。現在3位で、こちらも他騎手の結果待ちとなる。

取材・文 大恵陽子

写真 早川範雄(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 長尾翼玖騎手(兵庫)

先生からは「2番手からでも」と言われていましたが、不良馬場なので逃げた方が有利と思い、行きました。地元の園田でいつも逃げている感じで、後続に脚を使わせるように乗りました。最後はバランスを崩してしまい、しっかり追うことができませんでしたが、なんとか勝てて嬉しいです。

第2戦1着 中山蓮王騎手(佐賀)

前に行ってほしいという指示で、その中で馬の邪魔をせず、最後に脚を使えるよう考えていました。ゴールの瞬間は頭が真っ白になるくらい、とても嬉しかったです。今回が初めての遠征で、トライアルラウンドはこれが最後の予定ですが、3位でファイナルへ残れる可能性があり嬉しいです。