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ヤングジョッキーズシリーズ TR 船橋

2戦とも伏兵が逃げ切り勝ち
  復帰間もない大木騎手が歓喜

ヤングジョッキーズシリーズ・トライアルラウンドの東日本地区も後半戦。今回の舞台は船橋競馬場だ。これがトライアルラウンド最後の騎乗となる見込みは、木間塚龍馬騎手(船橋)、後藤蒼二朗騎手(大井)、谷内貫太騎手(大井)、横山琉人騎手(JRA)の4名。ファイナルラウンド出場に向けてなんとしてもポイントを稼ぎたいところだ。

一方で、トライアルラウンド初参戦は神尾香澄騎手(川崎)と、大木天翔騎手(大井)の2名で、両者とも全3鞍のみの騎乗見込みとなる。大木騎手は怪我のため1年以上休養しており9月8日に復帰したばかり。その復帰初戦を勝利して南関東の大きなニュースにもなった。「レースの感覚は徐々に戻っている感じです。3鞍だけなので厳しいとは思いますがワンチャンスをものにしたいですね」(大木騎手)。そして、第1戦はその大木騎手が主役となった。

先行しそうな馬は何頭かいたが、ハナを切ったのは大木騎手。少し離れて山田敬士騎手(JRA)、後藤騎手が、さらに関本玲花騎手(岩手)、横山騎手らが続き、縦長の展開。「かかり気味で馬任せでした」というハイペースの大木騎手は向正面でさらに差を広げた。後続からは中団を追走していた1番人気の水沼元輝騎手(JRA)が3コーナー手前で3番手まで上がった。

直線では、必死に粘る大木騎手に、山田騎手と水沼騎手が競り合いながら猛追したが及ばず、半馬身差で大木騎手が逃げ切り勝ちを決めた。2着は山田騎手、3着は、直線で末脚を伸ばしゴール前で水沼騎手を交わした佐々木大輔騎手(JRA)が入った。

ゴール後、力強いガッツポーズで喜びを表した大木騎手。「やりました!」と笑顔でレースから戻ってきた。これで大きな30ポイントを獲得し「あと2鞍、がんばりますよ!」と次のレースに向かった。

第1戦を終えて、各騎手から「前が止まらない」という言葉が次々に聞かれた。2着の山田騎手も、直線では勝てる手応えだったそうだが逃げ馬を捕まえることができずに悔しそうだった。唯一の地元ジョッキー、木間塚騎手は「もう少し前に行きたかったんですけど……」と残念そう。そこに師匠の川島正一調教師が来て「馬に合わせて乗らないとな」とエールを送っていた。

馬場傾向からも先行争いが注目された第2戦、佐々木騎手が、これまで一度も先手を取ったことのなかったシャトワイエーで逃げの手に出た。マークするように後藤騎手が2番手につけ、この2頭が後続を離して先行。単独3番手に水沼騎手、中団は各馬が固まってレースが進んだ。

前残りを警戒してか、向正面半ばすぎから後ろの騎手たちが追い出し始め前の2頭を追いかけた。その中でも、後方にいた木間塚騎手が外から一気に上がってその勢いのまま直線に入った。振り切りにかかる佐々木騎手に、水沼騎手と木間塚騎手が迫ったが、やはり前は止まらなかった。10番人気の佐々木騎手が1馬身差で逃げ切り快勝。馬自身の初勝利もあげることができた。2着は木間塚騎手、クビ差の3着に水沼騎手が続いた。

佐々木騎手といえば前週の24日に、JRAの新馬戦で単勝万馬券の馬を勝利に導き、話題になったばかり。「まだデビューして半年ですが、最近は能力のある馬にも騎乗させてもらえて、少しずつ落ち着いて乗れるようになってきました」。TR船橋で3着、1着と好成績をあげ、最終戦のTR浦和に繋げることができた。

地元の意地を見せた2着の木間塚騎手は「今何ポイントですか?1着だったら確実にファイナル行けましたよね?悔しい!」と何度もポイント表を確認していた。現時点で1位には立ったが「1位になったことは嬉しいしこのまま行ければいいなと思いますが、そう甘くはないですよね。でも、それで去年もファイナルいけましたから!」と自分に言い聞かせるように語っていた。

現在、地方東日本の1位は55ポイントで船橋の木間塚騎手、2位は大井の菅原涼太騎手で49ポイント、3位は大井の大木騎手で40ポイント。JRA東日本の1位は永野猛蔵騎手で63ポイント、2位は水沼騎手で58ポイント、3位は横山騎手で54ポイントと続いている。

このあと、東日本地区は10月12日のTR川崎、10月19日のTR浦和と2戦残されている。地方、JRAともに混戦なだけに、ファイナルラウンドに向けての勝負はまだまだ分からない。

取材・文秋田奈津子

写真国分智(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 大木天翔騎手(大井)

折り合い重視で臨んだのですが馬に引っ張られてそのまま勝ったという感じです。ペースもかなり速かったのですが4コーナーの手応えでは勝てると思いました。ただ後ろから足音も聞こえて……。最後まで粘ってくれという思いでいっぱいでしたね。復帰して間もないのに勝つことができて有難いです。

第2戦1着 佐々木大輔騎手(JRA)

第1戦の後、地元の木間塚騎手に馬場傾向について聞きました。返し馬からスピードがありそうな雰囲気を感じたので逃げる作戦に決めました。気を抜くところがあると聞いていたので道中、1頭ついてきたことも良かったと思います。最後まで気を抜かさないようにと僕自身も落ち着いて騎乗できました。