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クローズアップ

2023年9月20日(水)

ダート競馬の未来 ~教えて古谷先生~

第1回 ネクストスターって?

先に発表された『全日本的なダート競走の体系整備』では、中央・地方交流のダート三冠をはじめとして、ダートグレード競走を中心に大幅に体系の見直しが行われました。まもなく始まる新たなダート体系についての疑問や、これから日本のダート競馬がどのように変わっていくのか、古谷剛彦さんに解説していただきました。聞き手は一瀬恵菜さん、司会は小堺翔太さん。第1回は、9月24日に金沢から始まる『ネクストスター』についてです。

小堺:今回の座談会は、今年の2歳戦から始まる新たなダート体系について、ファンの皆さんにも理解を深めてもらえるよう、わかりやすく解説していただこうということで企画されました。解説していただくのは、競馬評論家の古谷剛彦さんです。

古谷:よろしくお願いします。

小堺:そして競馬ファン代表として、タレントの一瀬恵菜さんに質問していただきます。

一瀬:ファン代表として頑張ります!よろしくお願いします。

小堺:一瀬さんは子供のころから競馬好きとうかがっていますが、自己紹介も兼ねて競馬を好きになったきっかけなどを教えていただけますか。

一瀬:家族全員、特に父親が競馬が好きで、私が生まれた頃から一口馬主を楽しんでいたこともあって、選んだ馬を家族で応援していました。競馬場に行くことはもちろん、家じゅうに競馬のものが飾ってあって、自然と競馬に興味を持ちました。それで馬事文化を応援するアイドルになって、今は“競馬大好きタレント”という肩書きで活動させてもらっています。

小堺:今は若い世代の方もどんどん競馬場に来ていただいているので、それもひとつ時代の流れかなと思いますが、時代の流れといえば昨年発表された全日本的なダート競走の体系整備について、本題に移っていこうと思います。一瀬さんはダートの体系が変わるという話を聞いて、どんな感想を持ちましたか。

一瀬:世代別に見ても、目標を立てやすくなったのかな、と思いました。

小堺:古谷さんはいかがですか。

古谷:僕が競馬を見始めたころはJRAにダートの重賞は極端に少なくて、徐々にダートの重賞が広がって、交流のダートグレードができて、それが発展してとうとうここまできたか……という感じで、感慨深いですよね。

小堺:地方競馬ではいよいよ新たな体系でのレースがスタートするわけですが、古谷さん、まずは『ネクストスター』について教えていただけますか。

古谷:2歳の最大目標は当然全日本2歳優駿ですが、南関東を除く8主催者が全日本2歳優駿に向けて短距離を中心に目標となるレースを作りました。1着賞金1000万円というレースを設定することによって、地区ごとに盛り上がりを作る。そして地方デビュー馬限定とすることで、地方生え抜きの強い馬をつくることが狙いです。また、このレースを勝った後は、兵庫ジュニアグランプリから全日本2歳優駿が目標となります。ネクストスターの距離は、名古屋が1500m、門別が1200mですが、そのほかは1400mになっています。これは、兵庫ジュニアグランプリが1400mである点からも路線がしっかりとできそうですね。

一瀬:2歳戦では、南関東にネクストスターがありませんが、何か理由があるのでしょうか。

古谷:(南関東は)もともと賞金が高いですよね。浦和と川崎では今年、準重賞から重賞に昇格したレース(ルーキーズサマーカップ、若武者賞)があり、2歳の重賞が充実しています。未来優駿のシリーズでは、ゴールドジュニア、鎌倉記念、平和賞、ハイセイコー記念があり、これがネクストスターと同じような位置づけになります。

小堺:3歳のネクストスターでは、目標が兵庫チャンピオンシップになると……。

古谷:そうですね。2歳戦は主催者ごとの設定ですが、3歳春は北日本、東日本、中日本、西日本の4ブロックで『ネクストスター』が行われ、ブロックごとの持ち回りになります。また兵庫チャンピオンシップが来年から1400mに距離短縮されることによって、3歳のネクストスターが一冠目のイメージで、そこから兵庫チャンピオンシップ、そして3歳短距離の改革のひとつで、北海道スプリントカップが8月に3歳限定の1200mとなり、地方競馬の短距離三冠のような位置づけとなりました。3歳戦はダート三冠ばかりがクローズアップされていますが、短距離、クラシックと2つの路線が作られたことが大きな特徴だと思います。JRAでもNHKマイルカップができたことで、マイルとクラシックの2つの路線に分かれましたし、ダート界もそのような図式にようやくなったということですね。

一瀬:兵庫チャンピオンシップがNHKマイルカップのイメージですかね?

小堺:そのような位置づけかもしれませんね。2歳時から短距離路線ができたことでは、2歳馬のレース選択や移籍など、ネクストスターができたことによって変化はありそうですか。

古谷:北海道に関して言えば、ネクストスター門別ができて、エーデルワイス賞が11月上旬に繰り下げられたことで、牝馬もネクストスターからエーデルワイス賞という路線ができ、牡馬の強豪と戦って牝馬の交流戦に向かうことができます。これは対中央を考えた時に大きなメリットになります。どの主催者も生え抜きのスターホースを作りたいという思いはありますよね。そのなかで高額賞金の2歳戦が全主催者にできるわけですから、馬の流通という観点でも、今まで以上に活発になっていくと思いますし、地方競馬でデビューさせてみようという馬主の方も増えてくるかもしれません。

一瀬:2歳馬というと、やはり北海道でデビューした馬が全国の大きいレースを勝っていくなど、活躍が目立ちますが、ネクストスターができて傾向は変わったりしそうですか。

古谷:ネクストスターができて変わるかはわからないですが、長いこと北海道で見てきている肌感覚としては、北海道のレベルは(相対的に)下がってると思っています。なぜかというと、1歳市場で各地の馬主会の補助金による購買がたくさんあるので、北海道の調教師の方は、(馬主さんが希望する馬を)なかなか競り落とせないようです。北海道はもともと馬が売れない時代に、まずオーナーブリーダーが身近な北海道で鍛えて結果を出すことでアピールしていました。以前は1世代で600~700頭がデビューしていましたが、今年は481頭と、4分の1は減っています。そのぶん他の地区でのデビューが増えているのでレベルが上がっているわけです。今年の3歳でいえば生え抜きの馬が強いですよね。ショウガタップリ(金沢)やユメノホノオ(高知)、ミックファイア(大井)なんて言わずもがなですよね。特に北海道デビュー馬が強いかというと、そんなことはないと思います。

小堺:変わってきているということでは、北海道以外の地区の新馬戦も早くなってきてるではないですか。そのあたりも関係はあるんですか。

古谷:(北海道以外の地区でも)馬の頭数が確保できているので、早い時期からのデビューが可能になっています。あと昔のことで言うと、地方競馬では競馬場で馬を仕上げてデビューしていたのですが、今は育成牧場でしっかり鍛えられてから入厩するので、以前より早い時期からしっかり仕上げられた馬がデビューしています。問題なのはやはり“本州の暑さ”だと思います。その点では北海道にメリットがあるかなとは思います。

一瀬:ファン目線で楽しむ時に、今まではデビュー前に北海道の能力検査だけをしっかり見ていたのですが、それも変わってきそうですね。

古谷:変わってきますよね。最近では多くの主催者で能力検査の動画が見られますから、ありがたいです。

小堺:そういう意味では、素質を持った2歳馬が各地でデビューするので、北海道デビュー馬ばかりが強いわけではなくなってくるということですね。

古谷:北海道の強みは、6月の早い時期に栄冠賞という目標があるなど、“北海道といえば2歳戦”というレース体系が確立されていることだと思います。レース体系がしっかりしてるということは、目標のレースから逆算してデビューさせることができる、あるいは(JRA認定の)フレッシュチャレンジを勝ったら一旦放牧に出すなど、JRAに近い馬の使い方ができます。そういう面では、まだ北海道に利はあるかなと思うのですが、馬の質は間違いなく他の競馬場も上がっています。

小堺:新たなレース体系が始まって、来年以降、馬の動きに変化があるのか、注目となりそうですね。

一瀬:先々を思い描きながら2歳戦を追いかける、そういう楽しみ方ができそうで『ネクストスター』という名称はワクワク感一杯ですね。

構成サイツ

写真NAR