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LJS2023 盛岡ラウンド

2戦ともスローペースを積極策で勝利
  同ポイントも木之前騎手が首位に

今年のレディスジョッキーズシリーズも開幕戦は、今年度の盛岡競馬の最終日に実施。前日と前々日は寒かったそうだが、この日は同時期としては気温が高め。不良で始まった馬場状態は第3レースから重に変わった。

第8レースのあとの出場騎手紹介式も、暖かい日差しの下。そこには骨折のため盛岡ラウンドには出場しない関本玲花騎手(岩手)も参加した。出場騎手7名(川崎・小林捺花騎手は出場辞退)が名前を呼ばれて登場する際にブーケを渡す役割を担い、そして記念写真の列に加わった。

その後の装鞍作業が終了すると、各騎手は普段とは違う戦いを前にリラックスムード。濱尚美騎手(高知)は「勝負服の下に3枚着ているので暑いです。雨で寒かった一昨年の記憶があったので」と思案していたが、第1戦のパドックで騎乗合図がかかった16時48分頃は日没のおよそ30分後。17時ちょうどの発走時刻は空が完全に暗くなり、気温も一気に下がってきた。

その第1戦はダート1200メートル。断然人気は逃げ切りで3連勝中の馬に乗る濱騎手だったが、7頭のうち4頭が前走で逃げていたというメンバー構成。馬場入場のときに気合いを表に出す馬も多かった。

その状況で思い出されるのが昨年の第1戦。先行争いが激しくかなりのハイペースになり、縦長の最後方を進んだ馬が直線外から差し切った。

今回の7名は全員が盛岡のダートで2着以内に入ったことがあるとはいえ、盛岡ダートの騎乗回数は宮下瞳騎手(愛知)と神尾香澄騎手(川崎)の8回が最多。どういうペースで進むのかが最初の見どころになるところだったが、ゲートが開いた瞬間に深澤杏花騎手(笠松)が落馬し競走中止。そして鞍上不在となった馬が先頭に立つ形。その影響でスローペースになった。

そうなると逃げた濱騎手が有利。4コーナーではインコースから神尾騎手が並びかける場面もあったが、直線に入ると余裕の手応えで押し切り勝ち。5馬身差2着には3~4コーナーでは最後方まで下がっていた中島良美騎手(浦和)が浮上して、神尾騎手は2馬身半差で3着となった。

濱騎手はこれが盛岡での初勝利。「カラ馬が前にいましたが、こちらが通りたい場所を行けました」と笑顔。2着の中島騎手は「なんとか折り合いを付けられました」と振り返った。

一方、落馬してしまった深澤騎手は「ゲートのなかでうるさくて、スタートしたら左にヨレて、そこで左足のアブミが抜けてしまいました。次のパドックには出たくないです……」と苦笑いしつつも落ち込んでいる様子。しかし第1戦と第2戦のレース間隔は35分。深澤騎手も整列して、第2戦の騎乗馬にまたがって、他馬より先に馬場に向かった。

第2戦はダート1600メートルで、宮下騎手が1.9倍、木之前葵騎手(愛知)が2.6倍、佐々木世麗騎手(兵庫)が4.5倍。あとの4頭は離れた人気で三つ巴ムードでファンファーレを迎えた。

すると上位人気3頭と中島騎手が先行したものの、その鞍上4人が手綱を抑える形で最初の400メートルがかなりのスローペース。

その流れに耐えられないといった感じで木之前騎手が仕掛けて先頭に立った。その動きに佐々木騎手も呼応。しかし中島騎手は緩急の差が大きすぎたためか、早々に失速して最下位。宮下騎手も最後の直線に入ったあたりで粘り切れず、6着に終わった。

逆に向正面で加速した2頭はそのままの勢いで4コーナーを回り、先に仕掛けた木之前騎手が3馬身差で完勝。佐々木騎手が2着に入り、アタマ差3着には後方から差を詰めてきた深澤騎手が食い込んだ。

この結果、盛岡ラウンドでのポイント数は、1着と4着の濱騎手と、4着と1着の木之前騎手が同点。表彰式には『最上位の着順が同じ場合は、第2戦の着順が上位の者を優先する』という規定により1位の木之前騎手が向かった。

レディスジョッキーズシリーズはどの騎手もリラックスして臨む姿が見られるのが恒例だが、そのなかで特に楽しそうにしていたのが勝利を挙げた2人。レース前日に花巻市内で合流して観光を楽しみ、温泉に入って焼肉を食べて、岩手県を満喫したそうだ。

それを聞いて不満そうな表情に変わったのが南関東所属の2名。神尾騎手も中島騎手も当日の早朝から調教をこなし、盛岡は日帰りだそうだ。深澤騎手も笠松競馬が開催中のため、東京駅で新幹線を乗り継いで、そのまま調教をこなして翌日のレースにも乗るとのこと。

表彰式が終わり、勝った2人が「楽しかったね」などと笑い合っているところに加わってきたのが中島騎手。その盛り上がりの輪が解けたところで「焼肉を食べて帰ります」と言い残して去っていった。

取材・文浅野靖典

写真佐藤到(いちかんぽ)

Comment

第1戦1着 濱尚美騎手(高知)

カラ馬がどういう動きをするか、それを見ながらでしたが、この馬のペースで進められたと思います。4コーナーでインコースから1頭来ているなと思ったんですが、直線に入って追いはじめたら、後ろからの脚音が聞こえなくなりました。盛岡コースは広いので、距離が長く感じます。

第2戦1着 木之前葵騎手(愛知)

気持ちよく走らせてあげようと考えていて、3コーナーの手前での勢いがよかったのでそのまま行かせることにしました。正直、ちょっと速いかなという感じがしたので最後の直線では大丈夫かなと思いましたが、なんとか粘ってくれてよかったです。次は乗り慣れた笠松なので、優勝を目指していきたいです。