2025.09.24 (水) 園田
2025.09.24 (水) 園田
“ベリーベリー大井”な表彰台
矢野貴之騎手が初出場で優勝
9月24日、園田競馬場。通算2000勝以上の名手から選ばれた12名が腕を競う祭典、第32回ゴールデンジョッキーカップ(GJC)。御年58歳にして2025年の兵庫リーディングを突っ走る小牧太騎手が、出場騎手の紹介セレモニーで言った。
「今年は最年長ですね。JRAから同級生の横山典弘くんが来てくれて、あと何回一緒に乗れるかわからないので(笑)、今日は楽しんで乗っていきたいです」
そう言われてニコニコ微笑む横山騎手は、黒一色の勝負服――“シンコウ”の冠名で活躍した安田修オーナーの馬主服を身にまとう。自身の手綱で芝でもダートでも活躍したシンコウスプレンダは「すごく思い入れのある馬」だという。
JRAの岩田康誠騎手は兵庫所属時に着用した、白地に青襷の勝負服を着用。JRAの戸崎圭太騎手は大井所属時に着用した、青地に赤星散らしの勝負服を着用。初出場は大井の矢野貴之騎手、岩手の山本政聡騎手、高知の永森大智騎手の3名。ジョッキーレースならではのお祭りムードが高まるなか、名手の祭典の幕が開いた。
第1戦のファイティングジョッキー賞は、道中4、5番手でレースを進めた戸崎騎手&ディザーヴユーが、直線で鋭く脚を伸ばして1着。矢野騎手が半馬身差の2着に粘り、金沢の吉原寛人騎手が3着に追い上げた。戸崎騎手はこう振り返る。
「ワンペースなところがあると聞いていて、返し馬では、走る気持ちがすごく強い馬だなと感じました。だからゲートを出てからリズムを崩さないように、なるべく前々でと考えていました。ちょっと外をまわる形になって、あまり上手に乗れなかったんですけど、馬が応えてくれて勝つことができました」
第2戦のエキサイティングジョッキー賞は、抜群のスタートダッシュで先手を取った矢野騎手&リコーグロックが鮮やかに逃げ切った。戸崎騎手が差し込んで2着、大井の笹川翼騎手が3着に踏ん張った。5→10→11番人気の決着で、3連単は38万馬券という大波乱。矢野騎手は言う。
「砂をかぶらない位置が理想的と言われていたので、必死に先手を取りに行きました。リズムよく運べたので、最後までよく粘ってくれました」
2戦を終えた時点で、矢野騎手と戸崎騎手が35ポイントで同点のトップ争い。以下、18ポイントの小牧騎手、17ポイントの吉原騎手と岩手の山本聡哉騎手には逆転優勝の可能性がある。
矢野騎手は「優勝争いの相手はたぶん圭太さんなので、ユーチューバーには負けないぞという気持ちでやっていきたいと思います(笑)」と4歳年上の戸崎騎手をいじりつつ、先輩が開設したYouTubeチャンネルをPR。戸崎騎手もジョークを返しながら、泰然自若の自然体でバナナを頬張ってエネルギーを補給。15ポイントの笹川騎手は「3位争いは激戦ですね!」と闘志を燃やす。戸崎・矢野・笹川の“大井組”は軽口を叩き合いながら、不思議な団結ムードを漂わせている。矢野騎手が言った。
「せっかくだから、大井で表彰台を独占したいね!」
ラストの第3戦、チャンピオンジョッキー賞。馬場入場では田中学調教師が誘導馬に騎乗した。騎手時代に通算4754勝(JRA含む)を挙げ、GJC優勝3回を誇るとびきりのレジェンドが、勝負服姿で馬上の人となるのは約1年10カ月ぶり。ファンも関係者も、変わらぬ騎乗姿をうっとりと堪能した。現在イグナイターの主戦を務める笹川騎手が、かつてイグナイターの才能を引き出した田中調教師に導かれて返し馬へ向かう光景にも胸が熱くなった。
レースは3番手でレースを進めた笹川騎手&タンバブショウが3コーナー過ぎで堂々と先頭に立ち、そのまま力強く押し切った。兵庫の下原理騎手が猛追して2着、小牧騎手が後方から伸びて3着に食い込んだ。笹川騎手は言う。
「3位がかかっていたのでプレッシャーがありましたが、返し馬から出来のよさを感じていたので、自信を持って臨みました。想定通りの展開でしたし、折り合いが鍵だと思っていたので、流れに乗っていきました。馬がよく頑張ってくれて、勝つことができてよかったです」
そして優勝争いの行方は――。第3戦で矢野騎手は5着、戸崎騎手は9着。矢野騎手が45ポイントを獲得して、見事にGJC初出場初優勝を決めた。
矢野貴之騎手は、17歳のときに高崎競馬の騎手としてデビューした。20歳のとき高崎競馬が廃止となり、大井競馬へ移籍。乗り鞍を得ることにも苦労した期間を経て、いつしか南関東を代表するトップジョッキーへと成長した。
しかし試練は何度もやってきて、2年前には右足首を骨折し、GJC出場を辞退した。それでもくじけず復活を果たして、先日はディクテオン(大井・荒山勝徳厩舎)と共にソウル競馬場へ遠征し、コリアカップG3を制覇。さらには2年越しで出場を果たしたGJCを総合優勝と、絶好調な41歳である。矢野騎手は「最近はYouTubeを始めて方向性がちょっとよくわかんないんですけど」と、またまた戸崎騎手をいじりつつ敬意を伝えた。
「第3戦は完全に圭太さんを意識して、徹底マークして乗りました。圭太さんの背中を追いかけて頑張って来たつもりですし、これからも必死に追いかけていきたいと思います」
39ポイントを獲得して総合2位に入った戸崎騎手は、負けじと後輩をいじり返した。
「矢野には先輩をもっと立ててほしいなと思いますし、そうそうたるジョッキーがいて緊張しているとも言っていましたが、本当に緊張してんのかな?(笑)」
さらには表彰式を見守るファンに向けて「ベリーベリー園田でした!」と締めくくり、大喝采を浴びた。ダノンデサイルでドバイシーマクラシックG1を制した戸崎騎手から飛び出した名言「ベリーベリーホース!」は、かなり応用が利くようだ。
35ポイントを獲得し3位に入賞した笹川騎手は「今日は表彰台を大井出身のジョッキーで固められて、胸を張って大井へ帰れます!」と言って、爽やかな笑顔で園田をあとにした。
取材・文井上オークス
写真桂伸也(いちかんぽ)

第2戦を終えた時点では同点で、「矢野との戦いだな」と思いながら最終戦に臨みましたが、2位になってしまったのはちょっと悔しいですね。だけど大井のメンバーで表彰台に上がることができて、嬉しく思います。また来年もGJCに騎乗できたらと思いますし、ベリーベリー園田でした(笑)!

初めてGJCに出場させていただいた昨年は、自分の特徴を活かすことができなかったんですけど、今年は馬にも助けられていい騎乗ができたかなと思います。園田は南関東の次に“ホーム”の競馬場だと思っています。来年の優勝を目指して努力をしていきますので、みなさん応援をよろしくお願いします。
総合優勝 矢野貴之騎手
2年前のGJCにも乗りたかったんですけど、怪我をして園田へ乗りに来ることができなかったので、今回そうそうたるメンバーのなかで乗せていただいたことを嬉しく思います。なによりも優勝できたことが信じられないです。みんな各競馬場で頑張っていますので、これからも応援をよろしくお願いします。