CROSS TALK

Vol.03女性競輪選手 × 女性騎手(前編)

まもなく年末。公営競技はビッグレースが続き、ファンにとっては楽しみな時期となる。競馬と競輪は女性アスリートが活躍する競技として知られており、今回、競馬界から宮下瞳(名古屋競馬)竹ケ原茉耶(ばんえい競馬)、ガールズケイリンから田口梓乃(山口)奥井迪(東京)が登場!競技に懸ける思いなどを、リモートで熱く語り合った。

――自己紹介をお願いします。

全員写真

(上段左から)奥井選手、田口選手
(下段左から)竹ケ原騎手、宮下騎手

田口今、山口県に住んでいて、102期、ガールズの1期生です。10年間走っています。競輪選手だった父の影響でこの世界に入りました。あと、子どもが2人います。

レース中の奥井選手

レース中の奥井選手

奥井ガールズの3期生、東京所属です。元々は中学校の教員でした。アルペンスキー出身で、少年団でも教えていました。とても楽しかったのですが、自分の体力がありあまっていて、何かやりたいと思ったタイミングでガールズケイリンを知りました。挑戦してみようと思い教員を辞めて、この道に進みました。

宮下名古屋競馬に所属しています。おじいちゃんが馬を飼っていたので、小さい頃から馬に乗ったり、世話をしていたりしたので、自然と騎手になろうと思っていました。兄が騎手だったので、その影響もあります。田口さんと同じで、私にも子どもが2人います。

竹ケ原ばんえい競馬所属です。父親がばんえい競馬の馬主だったので、調教師や騎手と関係があり、面白そうだなと思って目指しました。うちには犬が一匹います(笑)。

――互いの競技の印象はいかがですか?

竹ケ原コケたら痛そう(笑)。

田口交通事故と同じくらいだと思います。

奥井時速60キロ近く出ているので転んだら、コンクリートに打ちつけられているのと一緒ですね。

田口去年、鎖骨を骨折したんですが、手術をしたら普通に動けました。私は長い期間休みましたけど、すぐに走る選手もいますよ。

デビュー当時の田口選手

デビュー当時の田口選手

奥井私はレースで転んだことはないですが、練習で肋骨を骨折しました。競輪選手は本当にケガが大変。

竹ケ原ばん馬の背中から落ちても、馬に踏まれなければ、土なのでそんなに痛くないし、擦り傷くらいで済みますが、競輪はすごい怖いなって思いました。

宮下私はかっこいいと思いました!レースの展開は、競馬と似ているところも多いと思いました。私たちには騎手同士の駆け引きがあるけど、競輪も駆け引きがあって面白いです。

田口私は力がないので、強い選手の後ろを回って、最後にゴール勝負するかっていうのが持ち味。結構、頭を使って走っています。

奥井一緒に走る選手によって自分の走り方も変わって来るし、ペースとかも全然違ってきます。1レース1レース、しっかり考えないと難しいですね。どういうタイミングで距離を詰めていくか、どういう風に考えながらペースづくりをしているのか、コース取り、位置取りとか、競馬は競輪に似ていると思いました。

宮下その通りですよね。

田口私たちは自転車を好きなように調節できますが、騎手の皆さんは生きている馬をどういう風に扱うのですか。思い通りにならないことがあると思うので、凄いと思います。

宮下十人十色という感じで馬にもいろいろな性格の子がいますね。言うことを聞いてくれる子もいれば、聞いてくれない子もいます。子育てと似ていると思って接していますよ。馬の方が言うことを聞いてくれますが(笑)。

竹ケ原レースになると、いつも乗っている馬でもアレっという違和感がある時があったり、思った以上に動きがいい時もあったりします。そういうところが面白いですね。

竹ケ原騎手

宮下そして、調教の朝が早いですね。私の場合は、深夜12時半に起きて、1時前には1頭目の調教を始めます。

奥井・田口えー。寝ようかなっていう時間ですよね。

宮下そうですね。一般の方とは生活が真逆です。

田口競輪はミッドナイト競輪があるので、一日のレースが終わったくらいの時間ですね…。

竹ケ原ばんえい競馬は早い人でも調教は2時か3時かな。私は遅い人(笑)。4時半とか5時から調教が始まります。

田口それでも十分早いですよ。調教が始まる時間が早いのには意味があるんですか?

宮下例えば夏だと昼は暑いじゃないですか。そういう時に運動すると馬もバテてしまうんです。だから朝の涼しい時間に調教します。他の季節もその流れで、皆早く調教に乗ります。レースが昼前から始まるので、その前に終わらせてしまおうという感じです。

宮下騎手

――競馬は男女混合レースですが、意識することはありますか?

宮下あまり男性・女性は意識していません。斤量では女性は男性より2キロ軽く走らせてもらっていますが、レース中は、ただ負けたくないという気持ちです。

レース中の竹ケ原騎手

レース中の竹ケ原騎手

竹ケ原私も特に気にしたことがないです。周りも気にしないし。よく女性騎手で得したこと、損したことを聞かれるんですが、男性になったことがないので分かりません。競走馬にしろ、馬主さんにしろ、調教師さんにしろ、騎手は騎手。男・女だからといって騎乗を決めているわけじゃなく、結果を出してほしいと思って乗せているはずです。

――ガールズケイリンは1期がデビューして10年が経ちました。

田口デビューした時とは比べものにならないくらいレベルが上がっていると思います。最初は男子の世界で始まったことなので、それに比べて迫力に欠けると言われていたんですが、今は男子にも引けをとらないほど迫力があります。走っている立場としては、そのスピードにくらいつくのが精いっぱい。今は山口支部も女子が増えて女子だけで練習することもありますが、男子にアドバイスをいただくこともあります。

レース後の田口選手

レース後の田口選手

奥井さすがに競輪は体力などすべての面で男女では違います。競馬の話を聞いて羨ましいと思いました。同じ土俵で戦えるのは魅力ですよね。ただ、今のガールズはできた当時と比べてスピード、タイムなど、年々レベルが上がってきています。

――ここまでの選手生活で思い出に残ったことや印象に残っているレースはありますか? 奥井選手は、先行日本一と称され、2022年のティアラカップで優勝しました。

ティアラカップを制した奥井迪選手

ティアラカップを制した奥井迪選手

奥井大きいレースに挑戦してもなかなか勝てなかったので、そこで勝ててうれしかったです。また頑張ろうという気持ちになれました。

田口1番印象に残っているのは、1人目の子どもを産んで、復帰した初戦のレース。今でもゴールした後の光景が出てくるくらい印象に残っています。2年くらいブランクがあり、年々レベルの上がっている競輪の世界に戻るとなった時、まず集団でゴールできるのかという不安がありました。その時は4着でしたが、ああ帰って来られたんだなっていう安心とうれしさが大きかったです。周りから出産復帰1号と言ってもらえましたが、自分は必死で、とにかくがむしゃらにやってきただけ。今は産休から復帰する選手も多いので頑張ってきてよかったと思います。

宮下やっぱり(21年の国内女子騎手史上初の通算)1,000勝が思い出に残っています。(出産を経験して)騎手に復帰した時はまさかここまで来られると思っていなかったし、こんなに早く達成できるとは思わなかったので、凄くうれしい。かっこいいママの姿を家族に見せたかったので、その応援もあって頑張ることができました。

国内女性騎手初となる地方競馬通算1,000勝を達成した宮下騎手

国内女性騎手初となる地方競馬通算1,000勝を達成した宮下騎手

竹ケ原レースのときに、ばんえいの馬って膝を折ったり(ついたり)するでしょう。そういうことがあると他の騎手が「そうじゃない。こうした方がいい、ああした方がいい」って教えてくれて凄く勉強になりました。

(後編に続く)