女性騎手たちと親交のある、
競馬リポーターの大恵陽子さんが、
彼女たちの日々の様子や
最新ニュースなどを
発信していきます。
(毎週金曜 更新予定)

COLUMN

Vol.57 あぶみを世界の○○モデルに


今年1月、高知競馬場で全日本新人王争覇戦が行われた日のこと。

レース直後に鞍の手入れをしながら関本玲花騎手(岩手)が

「このあぶみ、岩手で私が最初に使ったんです」

と見せてくれました。



  •  

青い鞍からぶら下がっているシルバーの三角形のものが「あぶみ」。
ジョッキーはこの細いプレートの部分につま先を乗せ、馬上でバランスを取ります。
そこにほぼ全体重をかけるのですから、いかに重要な馬具かということが分かります。

このあぶみに革命が起きたのはコロナの前後。
とあるゴルフ雑誌と武豊騎手の共同プロジェクトで、国内のアイアンメーカーで履きやすさと堅牢性を追求した「武豊モデル」が製作されたのです。

武豊騎手といえば、数々の国内大レースのみならず海外でも活躍し、「世界の武豊」とも称されるレジェンド。
地方競馬においても、JRA騎手という立場でありながら、地方通算199勝を挙げ、メモリアルまであと1としています。

そんなレジェンドがこだわり抜いた、いわば「世界の武豊モデル」と言っても過言でないあぶみは、発売されるや地方ジョッキーの間でも話題になりました。
佐々木世麗騎手(兵庫)も昨春のデビュー時から「武豊さんのあぶみだと聞きました」と、取り入れています。

そして、関本騎手の場合は

「いつもお世話になっている茨城県の馬具屋さんから『こんなのがあるよ』と紹介してもらって、使ってみたらとても乗りやすかったんです。
岩手競馬のジョッキーでは私が最初だったのですが、その馬具屋さんは先輩の高松亮騎手も使っていて、ちょうど馬具を買い替えるタイミングだったみたいで高松騎手も全てこのあぶみに替えていました」

とのこと。



  •  

あぶみの足を乗せる部分を裏側から見ると、こんな形になっています。



  •  

ちなみに、川田将雅騎手のモデルもあり、「小林凌騎手が持っていたので使わせてもらいました。こちらは親指が引っ掛けやすかったです」とのこと。

Vol.51で関本騎手が騎乗フォームの改革に取り組んでいることをお伝えしましたが、こういった馬具もどんどんいいものを取り入れているんですね。



  • ▲全日本新人王争覇戦のレース後、関本騎手への取材風景。
    地方競馬アンバサダー唯一のカメラマンである稲葉訓也氏が撮ってくださいました。

しかし、残念なことに新人王の後、関本騎手は調教中に足の親指を骨折。
2月18日のレディスジョッキーズシリーズ名古屋は欠場することとなってしまいました。

ただ、調教には早くから復帰。
実は、そこには調教とレースでの違いがあるからこそ可能だったようです。

「足の親指はテーピングでグルグルに固定して、あぶみを深く履けば調教であれば乗ることができました。
それに、レースのブーツと違って調教用の靴は厚みがあるので、何とかなりました」

そう、調教で馬に乗れた=すぐレースでも騎乗可能ではない理由の一つがそこにあったのです。
ちなみに、あぶみを深く履くというのは、指の付け根ではなく土踏まずに近い部分であぶみを踏むということ。
関本騎手にとっては、骨折した親指をカバーする方法となったのです。

そして、厳冬期は休催していた岩手競馬が再開される3月11日の水沢競馬からレースに復帰することとなりました。
1日目は第3,6,7レースに騎乗予定。
ぜひご注目ください。

  • 大恵 陽子競馬ファン歴25年 女性競馬リポーター

    グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。

  • 大恵 陽子
    競馬ファン歴25年
    女性競馬リポーター

  • グリーンチャンネル「アタック!地方競馬」ウェストアタッカー(ゲスト)、 「地方競馬中継」コメンテーターなど競馬番組出演や、イベント MC、コラム執筆などで活躍中。