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レースハイライト
 
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2010年11月3日(祝・水) 船橋競馬場 1800m

競走成績Movie

思い切った作戦がピタリ的中
前走完敗した舞台での逆転劇

 JBCスプリントJpnIは07年に大井のフジノウェーブが制しているが、昨年まで9回を重ねたJBCクラシックJpnIは、いまだ地方馬の勝利がない。それは多くのファンや関係者が知るところ。
 そして今年、地方馬によるJBCクラシック制覇の悲願を現実のものとしようとしていたのが地元船橋のフリオーソ。帝王賞JpnIでは、これまで歯が立たなかったヴァーミリアン、カネヒキリを相手に勝利。前走、Road to JBCの日本テレビ盃JpnIIでも中央勢を寄せ付けず完勝というレースぶりだっただけに、そうした期待が高まるのは当然のことだろう。単勝1.7倍の圧倒的人気に支持された。
 しかしそれに待ったをかけたのが、昨年までヴァーミリアンでこのレース3連覇を果たしていた武豊騎手だった。武騎手は、怪我で療養中の岩田康誠騎手に代わり、スマートファルコンに前走の日本テレビ盃JpnIIから騎乗。その日本テレビ盃では、フリオーソが58キロだったのに対し、内容的に完敗のスマートファルコンは56キロ。それが今回、同じ57キロとあれば、普通に考えれば勝ち目はない。
 「同じレースをしたのでは逆転は難しいだろう」と考えた武騎手は、思い切った“逃げ”の手に出た。
 大外14番枠のアドマイヤフジが前日の段階で除外となり、13番枠から互角のスタートを切ったスマートファルコンは、武騎手が手綱をしごいて内に切れ込みながら一気に先頭へ。スタンドからはどよめきが起きた。おそらく武騎手以外の騎手も、ファンと同様、これにはアッと思ったに違いない。「してやったり」と思ったのは、もちろん武騎手だ。
 向正面に入っても軽快に逃げるスマートファルコンが単独先頭。2番手のフリオーソは、離されまいと戸崎圭太騎手が懸命に追う。
 4コーナーから直線に入ると、スマートファルコンはフリオーソとの差を広げにかかり、直線半ばではすでにセーフティリード。道中追い通しだったフリオーソに7馬身という決定的な差をつけ快勝。ダートグレード11勝目にして、念願のJpnI勝利となった。
 また武騎手にとっては、97年4月に施行された地方・中央統一格付けのダートグレード通算100勝目の区切りをJBCの大舞台で達成することとなった。
 「帝王賞は強いメンバーと走ったダメージがあり、その後は夏負けもありました。正直、前走(日本テレビ盃)は仕上がり途上でした。今回は、これで負けたら仕方ないと思うくらい、仕上がりに関しては自信を持って出走できました」とは、スマートファルコンの小崎憲調教師。
 対するフリオーソは、帝王賞、日本テレビ盃と完璧ともいえる強いレースをして、今回までピークの状態を保っていたのかどうか。「レース前、前回とは違って馬に気合がなかった」とは川島正行調教師。
 結果、帝王賞、日本テレビ盃で完敗だったスマートファルコンが大逆転。
 どのレースを目標として馬の状態をピークにもっていくか。今回、それはフリオーソ陣営にとっても、スマートファルコン陣営にとっても同じだっただろう。しかし必ずしも厩舎関係者の思い通りになるものでもなく、あらためて競馬の難しさと、奥深さを考えさせられる一戦だった。
武豊騎手
馬の状態は前走より今回のほうが断然いいと聞いていたので、(先手を)狙っていました。1コーナーに入るときもいい感じでしたし、向正面に入ったら折り合いもついて、いい走りだなと思って乗っていました。うしろはあまり気にせず、馬が気分よく走ってくれて、状態のよさも感じたので、ある程度粘ってくれるとは思っていたんですけど、それにしても強かったですね。
小崎憲調教師
前走は、まだ仕上がり途上だったので、1週先の白山大賞典も考えたんですが、やはりここを目指すには(同じ船橋を)一度使っておいたほうがいいかなと思ったので、それは正解でした。普段この馬は、一度使うと外厩に出してリフレッシュさせるんですが、今回はトレセンの中で作り直すという方法をとってみました。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、宮原政典、川村章子)、NAR

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