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九州スーパースプリントシリーズ考察

2011年03月16日
スプリント路線での交流活発化
 佐賀、荒尾の九州地区2場のみならず、全国的にここ数年は在籍馬が減少傾向にあるなかで、福山と高知が中四国競馬の枠組みを創設するなど、複数の競馬場で馬資源を共有して、出走頭数を確保する試みが行われている。
 九州地区では2000年6月から佐賀、荒尾、中津(01年3月廃止)で「九州競馬」をスタートし、地区内での日常的な人馬の交流を目指している。しかし、騎手の交流は進んでいるものの、馬の交流についてはなかなか進捗がみられなかったが、地区交流推進のモデルケースとして、佐賀と荒尾の両競馬場から出走馬を出し合う交流戦が創設されることとなった。
 これまでの九州交流重賞では、佐賀所属馬が荒尾所属馬を圧倒する成績を残しているように、両場の所属馬にはレベル差があった。この差を縮めるために、交流戦の舞台は佐賀900メートル、荒尾950メートルの短距離に設定(佐賀は最短距離)。 これらの距離は、従来の番組編成では2歳戦の初期やC級下級条件でのみ施行されていたが、A級からC級、2歳、3歳という多彩なクラスで、『九州スーパースプリントシリーズ』として、10年10月下旬から11年3月中旬にかけて計25戦(佐賀13戦、荒尾12戦)が組まれた。


スプリント戦で復活 ギオンゴールド
ギオンゴールド(荒尾そーにゃ速かスプリント)
 シリーズ初戦は、10月29日にA級戦で行われた『荒尾そーにゃ速かスプリント』。開催場の荒尾からはJRA所属時にアイビスサマーダッシュ(JRA新潟)を勝利しているサチノスイーティーら7頭、佐賀からは前年の九州3歳2冠馬ギオンゴールドら3頭の計10頭が参戦。両場の快速馬が集結し、シリーズ開幕戦としては申し分のないメンバーが揃った。
 九州地区では(おそらく)初となるA級馬によるスプリント戦は、スタート後の激しい先行争いから抜け出して逃げるメラトニン(佐賀)を、直線で2番手から猛然と追い詰めたギオンゴールドがゴール寸前でハナ差交わしての勝利。スプリント戦にふさわしいスピード感あふれるレース展開となった。
 翌30日には佐賀での初戦、3歳馬による『佐賀がばいスプリント』が行われ、ブラックガール(佐賀)が勝利と、まずは佐賀所属馬が連勝での幕開けとなった。
ブラックガール(佐賀がばいスプリント)
 ギオンゴールドは九州地区の2、3歳重賞を6勝したものの、3歳秋以降は勝ち星に恵まれず、荒尾そーにゃ速かスプリントが約1年2カ月ぶりの勝利となった。「3歳のときに1400メートルでオープンを勝っていますし、その後の勝てなかった時期は馬の調子というよりは、距離が相手かな?と思っていました」(倉富隆一郎騎手)と、念願の短距離戦で活躍の舞台を得たギオンゴールドは、その後もこのシリーズで連勝を重ね、4戦4勝(うちコースレコード1回)と完全復活を果たした。



倉富騎手がシリーズ最多勝
アビンニャー(荒尾ばってんスプリント)
 ギオンゴールドと並んでスプリントシリーズ4戦4勝を挙げているのがアビンニャー(佐賀)だ。シリーズ創設の報を聞いて「短いところには実績のあるアビンニャーがいるので、そういうレースが出来るのはいいと思いましたね。ここまで連勝するとは思いませんでしたけど」(土井道隆調教師)と、期待以上の成績を残した同馬の4勝の中には、B級格付からA2級以下への格上挑戦での勝利もあり、今後のA級戦での活躍の期待を膨らませるシリーズとなったことだろう。
 このギオンゴールドとアビンニャーの両馬に騎乗している倉富隆一郎騎手は、シリーズ8勝を挙げ、3戦を残した時点で、最多勝利騎手の座を確定している。「これまでの下級条件でのレースとA級では、同じ900メートルでもやはりスピードが全然違いますね。出遅れるとどうにもならないので、ゲートでは駐立を保つことに特に気をつけています。これまでも(中距離戦の)上のクラスで乗っていて、もっと距離が短ければいいのにと思っていた馬もいたので、これからもこういう距離のレースはやって欲しいですね」と、スプリントシリーズには大きな手ごたえを感じているようだ。


スプリント路線から新たな活躍馬も
 シリーズ22戦を消化して、荒尾所属馬の勝利は4勝(うち1勝は佐賀開催)と、佐賀所属馬の18勝に大きく離されているものの、18戦中、上位3着までを佐賀所属馬に独占されたのは6回と、一角崩しには成功しているレースは多い。現在の荒尾競馬は、ほぼ毎週出走するような番組編成となっているだけに、その合間を縫っての佐賀遠征という厳しいローテーションの中で結果を残している馬の存在は、シリーズ対戦成績の数字以上に健闘しているといえそうだ。
 約5カ月間で25戦という短期集中型のシリーズ構成は、レースの格付設定の関係で出走馬のローテーションがやや過密となる面も見受けられたが、シリーズが進むにつれ、スプリント戦のエキスパートが誕生していく過程を見せていき、まずは成功といったところだろう。
 今回のシリーズではギオンゴールド、アビンニャーといった従来からの佐賀所属馬の活躍が目立ったが、ピエナヴィブレ(佐賀)、クレイジードライブ(佐賀)など、転入間もない馬の参戦も多く見られ、これらの馬はスプリント戦を狙っての佐賀転入なのだろう。このような馬を集めるためにも、今後は年間を通してのスプリント、短距離路線の整備が望まれるところ。
 4月からの新年度では、6月に重賞『九州むしゃんよかスプリント』(荒尾950メートル)が新設される。この競走は新たなシリーズ競走として全国展開が予定される「スーパースプリントシリーズ」の参加レースとして、『習志野きらっとスプリント』(7月21日、船橋1000メートル)の九州地区トライアルに設定されており、九州スーパースプリントシリーズで活躍を見せた馬たちの今後の目標レースとなりそうだ。(成績は3月11日現在)

文・写真●上妻輝行
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