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レースハイライト
 
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2011年2月20日(日) JRA東京競馬場 ダート1600m


マイペースで逃げ切りGI連勝
フリオーソも末脚一閃の新境地

 1年前とはガラリ一変のメンバーで争われることになったフェブラリーステークスGI。なんと昨年に続いての出走は、たった1頭、ダイショウジェットのみ。オーロマイスターも2年連続でのエントリーだが、昨年は出走を取消していた。
 この1年でダート中長距離路線の顔ぶれには大きな変化があった。国内の主要ダートGI・JpnIのほとんどを制したカネヒキリ、ヴァーミリアンという同世代の絶対王者が相次いで引退。一昨年のこのレースの覇者サクセスブロッケンも、根岸ステークスGIIIで結果を残せなかった(13着)ことで引退が発表された。そして昨年の覇者エスポワールシチー、昨年のJBCクラシックJpnI、東京大賞典JpnIを圧倒的なスピードで逃げ切ったスマートファルコンの両馬は出走態勢が整わず不在。GI・JpnI勝ち馬は、昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnIを制したオーロマイスター、ジャパンカップダートGIを逃げ切ったトランセンド、そして久々の中央挑戦となるフリオーソと、わずか3頭というメンバーとなった。
 フリオーソは芝も含めて過去に4度、中央に遠征しているものの、いずれも掲示板にすら乗れずという結果。しかし今年は違う。昨年、6歳にして充実期を迎えたと言われ、7歳となった今年も早々と川崎記念でJpnI勝ち。GI・JpnIで5勝は断然の実績で、単勝5.5倍の3番人気となった。そして結果は2着。残念ながら勝利には至らなかったものの、新たに驚きの一面を見せた。
 心配された芝のスタートで完全に置かれてしまい後方2番手から。4コーナーでもまだ後方集団。しかし残り1ハロンで、外から猛然と追い込んだ。上がり3ハロンでは、メンバー中唯一36秒を切る35秒7を記録。勝利までは、惜しくも1馬身半及ばなかった。
 勝ったのは、1番人気に支持されたトランセンド。ジャパンカップダートGIに続いての逃げ切り勝ちとなった。
 好スタートから押してハナに立ったトランセンドは、途中3〜4コーナーでマチカネニホンバレに競りかけられる場面があったものの、淀みのないマイペースを崩さず、直線の坂で後続を振り切りそのまま逃げ切った。
 1000メートル通過が60秒1で、最後の600メートルは36秒3。ジャパンカップダートでのそれは、60秒0、36秒6と、距離は200メートル違うものの、まったく同じレースをしてのダートGI連勝となった。
 このあとは、すでに招待を受諾しているゴドルフィンマイルに遠征予定。「ジョッキーと話したんですが、距離は1800メートルか、もう少し長いほうがゆったり競馬ができていいようです」と安田隆行調教師。フェブラリーステークスを制したことで、登録のあるドバイワールドカップのほうにも選出されるかもしれない。
 それにしてもフリオーソにとっては、善戦の2着でもあり、残念な2着でもあった。
 実績的に断然であることは認められながらも、いくつも言われた不安のひとつ、「芝からのスタート」が現実のものとなってしまった。慣れない芝を気にしたのか、それともただタイミングが合わなかっただけなのか。ゲートが開いた瞬間、フリオーソは、隣の枠のトランセンドからすでに1馬身ほど遅れをとっていた。
 最初の1ハロンが12秒6だから、決して先行争いが速くなったというわけではない。明らかな格下馬が相手だった前走の川崎記念はともかく、その前の東京大賞典は12秒2、JBCクラシックはなんと11秒3、日本テレビ盃は11秒7というラップで、いずれのレースでもそれほど苦もなく2番手につけていた。
 「芝がダメというわけじゃないと思うんだけど」という川島正行調教師。しかしダッシュがつかなかったフリオーソは、外からも他馬にかぶされて行き場をなくし、終始大外を回される苦しい展開となった。
 フリオーソは、08年の東京大賞典でもダッシュがつかず後方からとなったことがあった。そのときはまったく見せ場をつくれず5着。先行して強さを発揮するフリオーソの姿を知っていればこそ、今回、4コーナーでも後方集団に位置していたところで、絶望的な気持ちになったファンや関係者も多かったに違いない。一方で、マイルはフリオーソにとってベストの距離ではなく、それがアウェーの中央の舞台であれば「無印」と予想したファンや予想家にとっては、「それ見たことか」と思ったことだろう。
藤田伸二騎手
安田隆行調教師
 しかし鞍上のデムーロ騎手にして、「最後の1ハロンで目覚めた」というフリオーソ。トランセンドにこそ逃げ切りを許したものの、2番手で粘っていたバーディバーディをクビ差とらえたところがゴールだった。
 「スタートがなあ。最後、あれだけの脚を使えるんだから、2番手あたりに行っていれば……」と悔しい表情を見せた川島調教師。まさにスタートが明暗を分ける結果となった。
 それでも7歳にしてまだまだ日本のダートではトップレベルであることを中央のファンの前ではっきりと示した意味は大きい。今回不在だったエスポワールシチー、スマートファルコンが加わってくるダートのGI・JpnI戦線では、今後も熱く激しい戦いを見せてくれることだろう。
取材・文:斎藤修
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)、NAR

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