各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第48回 ハイセイコー記念

10/14(水) 大井 1600m  トロヴァオ Movie競走成績

南関東競馬で今季初の2歳重賞「ハイセイコー記念」を、
北海道から転厩初戦のカネヒキリ産駒トロヴァオが快勝!

 南関東競馬で今季初めて行われる2歳重賞「ハイセイコー記念」。大井競馬場の内回り1600mが舞台となる今年で第48回(第33回までは「青雲賞」として実施)を迎えた歴史ある競走だ。レース名となっているハイセイコーは、第5回の優勝馬。その時に計時された走破タイム「1分39秒2」は、40年以上の歳月が流れた現在も破られていないレースレコードとして刻まれている(1分40秒を切ったのはハイセイコーだけ)。

 昨年は、船橋所属のストゥディウムが最後の直線で目の覚めるような末脚を繰り出して優勝。同馬は3歳になって「羽田盃」を制し、南関東クラシックホースとなっている。

 来年のクラシックへもつながっていくその重要な一戦に、今年は14頭がエントリー。その中で1番人気の支持を受けたのが、前哨戦の「'15ゴールドジュニアー」を楽々と逃げ切ったラクテ(牡、大井・寺田新太郎厩舎、父ワイルドラッシュ)だった。デビュー3戦目から破竹の4連勝。うち3戦は逃げ切り勝ちで、2着馬との着差も「大差」「4馬身」「1馬身半」「4馬身」と同世代の他馬を圧倒してきている。3年前にこのレースを制し、現在、南関東のマイル重賞で大活躍中のソルテと同馬主、同厩舎というのも、南関東競馬ファンの大きな期待を背負う一因となったのかもしれない。単勝オッズは、圧倒的な1.9倍を示していた。

 2番人気は、こちらもデビュー2戦目から3連勝中のグランユニヴェール(牡、大井・米田英世厩舎、父ネオユニヴァース)。昨年のセレクトセール1歳セッションで取り引きされた期待馬で、種牡馬ネオユニヴァースに惚れ込む生産者の田中裕之さん(ジョーメテオ、デスペラードなどのネオユニヴァース産駒を生産)が、自信を持って送り出した逸材だ。まだまだ底を見せていない大物感が漂い、単勝4.2倍の支持を受けた。

 差のない3番人気に、ホッカイドウ競馬からの移籍初戦となるトロヴァオ(牡、大井・荒山勝徳厩舎、父カネヒキリ)。ここまで3戦1勝、2着2回と経験は浅いが、敗れた2回は相手が共にタービランス。そのタービランスが前日の「サンライズC(門別)」に優勝し、「北海道2歳優駿(JpnⅢ)」の有力候補に名乗りを挙げていた。レベルの高いホッカイドウ競馬のトップホースと差のない競馬をしてきたことが評価され、初コースながら単勝5.2倍の支持を得た。

 その3頭が10倍を切るオッズで、地元生え抜きの連勝馬とホッカイドウ競馬からの転厩馬が注目を集めることになった「第48回ハイセイコー記念」。当日、稍重発表で始まった馬場も3レース以降は良馬場に回復し、ナイター照明が照らし出す絶好のコンディションの中、20時15分に運命のゲートが切られた。

 好スタートからダッシュをつけてハナを奪いに行ったのは、大方の予想通り1番人気のラクテ。前走の「'15ゴールドジュニアー」と同じく、自分の形に持ち込んでの逃げ切りを上田健人騎手は目論む。それに絡んでいったのが、石崎駿騎手鞍上のフォクスホール(牡、浦和・薮口一麻厩舎、父ホールウォーカー)。楽な逃げは許すまいと、ピッタリ馬体を合わせてマークしていく。少し離れてグランユニヴェールが3番手、トロヴァオも早め4~5番手を追走し、人気馬が揃って前の良いポジションにつけた。向う正面から3コーナーに差しかかってもその隊列は大きく変わらず、4コーナーではフォクスホールが手応え良くラクテを捕えにかかる。直線に入り、厳しいマークを受けつづけたラクテが脱落するかと思いきや、二の脚を使って必死に食らいつく。2頭の直後につけていたグランユニヴェールの笹川翼騎手が追い出しにかかったところ、少し内によれて行き場を失いそうになったが、そこから立て直して外へ持ち出して脚を伸ばす。その3頭を見るように外へ進路を取ったトロヴァオが、本田正重騎手の左ムチに応えて真直ぐに伸びてきた。残り100mあたりで4頭が横一戦に並ぶ手に汗握る激戦となったが、そこからトロヴァオが一気に突き抜け、南関東2歳初重賞のタイトルを転厩初戦で獲得。2着グランユニヴェール、3着フォクスホール、4着ラクテという入線順位となったが、それぞれが勝ちにいく競馬で全力を出し切った、非常に見応えあるレースだった。

 優勝したトロヴァオは、ノーザンファーム生産でクラブ法人・キャロットクラブの所有馬。父カネヒキリの2世代目産駒で、まだまだ成長力が見込める逸材だ。新天地でトップホースへの階段を上り、いつの日か北海道で2回土をつけられたタービランスと再び剣を交える日が来るかもしれない。その再戦を夢見て、門別と大井で2日連続重賞を制した2頭の今後を見守っていきたい。

 
文:浜近英史(うまレター)