3年目を迎えたヤングジョッキーズシリーズ。2日間計4レースにわたるファイナルラウンドは、12月27日、強風が吹き荒ぶ大井競馬場で決戦の火ぶたが切られた。

ファイナルに駒を進めたのは6月から11月まで各地の地方競馬場で行われたトライアルラウンドでポイント上位の地方7名、JRA7名の減量・見習騎手たち。パドックには地元の競馬場で掲げられている横断幕も登場し、各騎手の応援団にも力が入っている様子が伝わってきた。

第1戦は1800メートル。内枠に逃げ・先行脚質の馬が揃った。好スタートから逃げる構えを見せたのは最内枠の服部寿希騎手（JRA）。外から小林凌大騎手（JRA）が迫り、「馬もやる気になってかかりぎみでした」（服部騎手）と2頭が後続を離して逃げた。必然的にペースは流れたが、向正面で中団馬群がかたまる場面もあり、「ごちゃついたところで馬の集中力が切れてしまいました」とは1番人気の櫻井光輔騎手（川崎）。それに対し「一昨日からレースを見ていると前残り傾向ですし、4コーナーでリードをつくれれば」と坂井瑠星騎手（JRA）がいい手応えで直線に向いて先頭へ。しかし、その後ろからバンプファイアと松木大地騎手（兵庫）が一完歩ごとに差を詰め、残り100メートル手前で交わすと、3馬身半差で勝利。2018年のファイナル中山第2戦の勝利騎手は冷静な口調で「嬉しいです」と話した。

対照的に「悔しい～！」と声を出したのは単勝141.5倍ながら4着の山田敬士騎手（JRA）。「持っているのは一瞬の脚だと聞き、直線は馬のやる気を出させるためあえて併せに行ったのですが……」と3着・岩田望来騎手（JRA）とはアタマ差だった。一方、2番人気だった岩田騎手は「勝ち馬が外から来た時に怯むというか進んでいかなくて、砂も嫌がってしまって」と肩を落とした。5着の菅原明良騎手（JRA）も「自分から動いていれば3着争いに加われていたかもしれません」と悔やんだ。

悲喜こもごもだが、気持ちは次のレースに切り替えなければならない。中越琉世騎手（川崎）は馬具の手入れをしながら「山田騎手とは競馬場で会うとよく話すんです」と再会を喜んだ。同世代ということもあり、地方・JRAの垣根なく仲がいい雰囲気で、落ち込んだ気持ちを回復させた騎手もいることだろう。

第2戦はワンターンの1200メートル。坂井騎手が好ダッシュを決めたが、内から木本直騎手（兵庫）が主張し、3～4コーナーでは単勝1.7倍と断然人気のチチブリュウセイと岩本怜騎手（岩手）が大外を回って追い上げた。直線に向くと力強く伸びて、先に抜け出した長谷部駿弥騎手（兵庫）を1馬身半交わして岩本騎手が勝利。3着に石堂響騎手（兵庫）、4着に山田騎手、5着に「期待以上に馬が頑張ってくれました」と小林騎手だった。

岩本騎手は勝って大喜び……かと思いきや、引き揚げてくると関係者から指摘を受けている様子。まだまだ勉強中の若手騎手たちだけに、こうしたアドバイスは貴重なものだろう。

一旦は先頭に立った長谷部騎手は「直線では夢を見ました」と悔しがった。昨年のファイナルでは大井初騎乗でコースに「迷いがあった」というが、今回は「積極的にという指示もあって、出負けしましたが3番手を取りに行けたことがよかったと思います」と場慣れもあったようだ。同じ兵庫の石堂騎手は「1戦目はレース（で上位争い）に参加できなくて落ち込んでいたんですが、掲示板に載ってホッとしました」と緊張がほぐれた表情になった。

2レースが終わってやはり気になるのはポイントと順位。上位は勝ち星を挙げた騎手で、1位は第1戦1着、第2戦9着の松木騎手で32ポイント。「昨年の今頃は考えもしなかったですが、今年は幸先いいスタートで何とか優勝を目指したいです」と前年総合3位以上の結果を目指す。2位は1ポイント差で岩本騎手。「（第2戦での）1着ポイントは大きいですよね」と胸を弾ませた。また、「意外とポイントを持っているんですね」と喜んだのは山田騎手。13番人気と10番人気ながらともに掲示板内を確保しトップと8ポイント差の5位につけた。一方で、木本騎手は合計9ポイントで11位。「明日は2戦とも勝つつもりでいかないといけないですね」と意気消沈ぎみだったが、まだまだチャンスは残されている。

「同世代との戦いなので、優勝したい」と多くの騎手が口にするヤングジョッキーズシリーズ。いよいよ明日、JRA中山競馬場で3代目チャンピオンが決定する。