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連載第43回 1995年 ダービーグランプリ

『新時代の扉を開いた末脚 ルイボスゴールド』
1995年 ダービーグランプリ ルイボスゴールド

Movie(映像ファイルサイズ:20.5MB)
 1995年はエポックメーキングな年であった。中央・地方交流の幕開け。JRAのライブリマウントが全国を行脚し、笠松のライデンリーダーがJRAのクラシック・桜花賞、オークス出走。勢いは春シーズンだけに留まらず、夏を越してライデンリーダーはエリザベス女王杯(13着)へと駒を進め、さらにトライアルの神戸新聞杯3着で権利を得た笠松のベッスルキングも菊花賞(8着)へと駒を進めた。
 そしてダート路線でも笠松の勢いが止まらない。
 ルイボスゴールドはデビュー当初はそれほど目立つ馬ではなかったが、父ホリスキーの血か、距離が延びるにしたがって、その本領を発揮し始める。東海ダービーに勝ち、10月に金沢競馬場で行われた3歳馬の全国交流・サラブレッドチャレンジカップでも後方からレースを進め、直線で先頭に立ったツカサエスパーダを砂の深いインコースを突いて一気に交わし、ゴール前で1馬身半差を付ける快勝であった。そしてダービーグランプリに臨んだ。
 1985年に創設された3歳馬の全国交流・ダービーグランプリ。この年第10回を迎え、既に地方競馬3歳No.1を決するレースと認知されている。新盛岡競馬場・オーロパーク開場を翌年に控え、これが(その時点では)水沢競馬場で行われる最後のダービーグランプリとなった。
 人気の中心は全日本3歳優駿(当時)、羽田盃を制した南関東の快速馬ヒカリルーファス、そして2番人気に東海ダービー、サラブレッドチャレンジカップを制したルイボスゴールド、3番人気は高崎ダービー、しもつけ菊花賞を制したキタグニノホシ、サトヨフレンチ不在の岩手勢の期待は4番人気の不来方賞3着トウホクアスワンと、2歳チャンピオンの5番人気サカモトリードワン。他にも東北優駿、北関東オークスを制した女傑カガリスキーや、新潟皐月賞馬ツカサエスパーダーなど、好メンバーが揃った。
 予想通り、ヒカリルーファスが先手を奪うと、レースはスローに。鞍上は“鉄人”佐々木竹見騎手。安藤勝己騎手が操るカネミキングが2番手、3番手アサブキダイオー、トウホクアスワンと続き、後方から3番手の位置にルイボスゴールド。
 スローの流れをみて、サカモトリードワンが向正面に入って3番手まで位置取りを上げるが、他は動かず。
 残り600mの標識を過ぎてからペースが一気に上がる。トウホクアスワンがヒカリルーファスを捉えに行き、外からサカモトリードワンも襲い掛かり直線。ルイボスゴールドはペースが上がった時に動けず、一旦位置取りを下げるが、直線に向いて闘志に火がつく。
 残り100m。最内を突いたトウホクアスワンと粘るヒカリルーファスの間をルイボスゴールドが突き抜ける。
 「3コーナーで一旦下がってヒヤッとさせましたが、直線に向いて闘志に火がついたようです。改めて瞬発力に感心しました。」と坂口重政騎手。

 あっという間に3/4馬身の差を付け、ルイボスゴールドが地方競馬3歳No.1の座に輝いた。
 笠松のこの世代は本当に強かった。その中心はやはりライデンリーダー等を管理する荒川友司調教師だったが、その当時の笠松競馬全体にチャンレンジ精神というか、向上心というか、そういった気概の様なものが感じられたことを覚えている。

 暮れの東海ゴールドカップは遠征続きの疲れが出たか、1歳上の東海ダービー馬ライフアサヒの8着に破れたが、続くオープンを快勝。そして再びルイボスゴールドが、今度は世間を驚かせる。

 翌96年3月9日の阪神大賞典。あのナリタブライアンとマヤノトップガンによるマッチレースで、ハギノリアルキングなどを抑え3着に飛び込む。とはいえ上位2頭とは9馬身の差があり、最後の直線でもほとんど映っていなかったが。
 このレースの後さらなる飛躍を期待されたが、東海桜花賞の3着が最高でついに勝つことが出来ず、97年2月の白銀争覇5着を最後に引退、種牡馬となった。種牡馬としては残した産駒はわずか8頭で、これといった活躍馬もなく、2005年に亡くなっている。
文●日刊競馬・小山内完友
写真●いちかんぽ
競走成績
第10回 ダービーグランプリ 平成7年(1995年)11月19日
  サラブレッド系4歳 1着賞金5,000万円 水沢 2,000m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 1 1 ルイボスゴールド 牡4 55 坂口重政 2.16.1 2
2 3 3 トウホクアスワン 牡4 55 菅原勲 3/4 4
3 5 5 ヒカリルーファス 牡4 55 佐々木竹見 クビ 1
4 7 8 カガリスキー 牝4 53 小国博行 1 1/2 7
5 8 9 サカモトリードワン 牡4 55 三野宮通 ハナ 5
6 8 10 アサブキダイオー 牡4 55 佐藤雅彦 3/4 9
7 7 7 カネミキング 牡4 55 安藤勝己 大差 6
8 4 4 トナンセブン 牡4 55 千田知幸 大差 10
9 6 6 ツカサエスパーダー 牡4 55 大枝幹也 5 8
10 2 2 キタグニノホシ 牡4 55 内田利雄 大差 3
払戻金 単勝470円 複勝150円・180円・110円 枠連複2,330円