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連載第47回 1998年　黒船賞

『地元の意地見せたリバーセキトバ』
1998年　黒船賞　リバーセキトバ

　中央、地方交流の波は高知にも押し寄せる。高知競馬初のダートグレード競走、第１回黒船賞ＧⅢ。
　その名の通り黒船の如きＪＲＡ勢が４頭来襲。ストーンステッパーは根岸Ｓ、ガーネットＳ、そしてその年の５月には高崎競馬場の群馬記念を制したスピード馬。フジノマッケンオーは根岸Ｓ、さきたま杯だけでなく、芝のダービー卿チャレンジＴ、セントウルＳにも勝っているオールマイティーで、鞍上は“天才”武豊騎手。ドージマムテキは３歳時皐月賞、日本ダービー出走の王道を歩み、短距離路線に的を絞ってからは京王杯オータムハンデ勝ち。活路を求めて今回２度目のダート挑戦。さらに、勝ち星からは遠ざかっていたものの、ガーネットＳ、平安Ｓに勝っている12歳の古豪ミスタートウジンが出走してきた。
　他地区勢も侮れない。笠松のトミケンライデンは、全日本サラブレッドＣでフジノマッケンオーを下して勝っている、地方屈指の実力馬。同じく“ワカオライデン軍団”のアメージングレイスと、東海地区で圧倒的な強さを誇ったライフアサヒが出走してきた。
　一方、迎え撃つ地元高知勢は、元中央オープンのマルカイッキュウ、北関東、中央、南関東で重賞８勝のヨシノキングなど名前を聞けばソコソコのメンバーだが、いずれも７歳、８歳の“峠を過ぎた馬”と思われているメンバー。リバーセキトバに至っては、中央、地方を通じて唯一の重賞未勝利馬であった。
　１番人気には５歳のストーンステッパー、２番人気に４歳のトミケンライデンと若い２頭に人気が集まるのも、ある意味当然だろう。

　ゲートが開いて激しい先行争い。トミケンライデンがダッシュ良く飛び出すが、内からリッコージョオー、外からヨシノキング、さらにはマルカイッキュウ、さらにストーンステッパー、ドージマムテキのＪＲＡ勢が加わり、７頭が広がって１コーナーから２コーナーへ。結果ドージマムテキがハナを奪うも、前半の３ハロンは手元の計測で37秒台のハイペースに。リッコージョオーとマルカイッキュウが続き、外からヨシノキングとストーンステッパー、その後ろに控えてトミケンライデンで向正面。

　隊列が固まりペースが落ち着くと思いきや、トミケンライデンを交わしてフジノマッケンオーが上がっていく。その後方ではライフアサヒ、リバーセキトバ、アメージングレイスが追走。ミスタートウジンとノルディクダンサーの２頭は離れた後方を追走して、縦長の隊列で早くも残り600メートルの標識を通過する。
　逃げるドージマムテキに、外からマルカイッキュウとストーンステッパー、フジノマッケンオーが並びかけようとするが、その外から一気に進出するリバーセキトバ。
　残り400の標識を過ぎて、ようやくドージマムテキを捉えたストーンステッパーが先頭に立つも、さらに外からリバーセキトバが並びかけようとして直線。

　リバーセキトバの勢いは止まらず、一気に先頭に立つと、実況の橋口アナのトーンが一段と高くなる、そのまま後続を引き離し、北野騎手の決勝戦より少し手前のド派手なガッツポーズとともに２着に２馬身１／２の差を付けゴール。レース上がりは手元の時計で推定39秒台。地元、そして展開の利があったことは確かだが、栄えある第１回を地元高知の馬が制したことは、今始まったばかりの交流時代に向け、明るい幕開けであった。その時は誰もがそう思っていた。
　リバーセキトバ自身も、デビュー71戦目で重賞初制覇の快挙。北野コールとウイニングランが場内の興奮を物語っている。

　２着は中団待機のフジノマッケンオー。リバーセキトバに交わされたストーンステッパーが前半のペースが応えたか終い伸びを欠き、迫るフジノマッケンオーにゴール寸前、クビ差交わされた。４着に後方２番手からミスタートウジン。速い流れを慌てず追走する、古豪らしい味のあるレースぶりだった。

　リバーセキトバはその後、珊瑚冠賞で重賞２勝目を挙げ、以降2002年までに５勝を挙げ、通算144戦18勝で引退。引退後は土佐黒潮牧場で余生を過ごし、2013年５月にこの世を去った。2007年には高知競馬場へ来場し、第１回黒船賞の肩掛けをまとい、ファンに元気な姿を見せている。
　黒船賞はその後ＪＲＡ勢の独壇場となったが、高知競馬の業績不振により、2007年は辛くも開催に漕ぎ着けたものの、翌2008年は中止に。2009年より再開され、2011年は東日本大震災の影響により中止となったが、以降は毎年開催されている。

第1回　黒船賞　平成10年（1998年）3月24日
サラブレッド系5歳以上 1着賞金3,000万円　高知　1,400m　曇・鞘重
着順	枠番	馬番	馬名	性齢	重量	騎手	タイム・着差	人気
1	6	7	リバーセキトバ	牡9	55	北野真弘	1:29.1	9
2	7	9	フジノマッケンオー	牡8	56	武豊	2 1/2	3
3	8	11	ストーンステッパー	牡6	57	熊澤重文	クビ	1
4	4	4	ミスタートウジン	牡13	55	村本善之	3/4	7
5	5	6	マルカイッキュウ	牡8	55	鷹野宏史	1/2	4
6	5	5	トミケンライデン	牡5	57	安藤光彰	アタマ	2
7	7	10	アメージングレイス	牡8	55	安藤勝己	1/2	8
8	1	1	ライフアサヒ	牡8	55	吉田稔	1 1/2	5
9	8	12	ドージマムテキ	牡9	56	蛯名正義	クビ	6
10	3	3	ノルディクダンサー	牡8	55	今村賢治	1 1/2	10
11	6	8	ヨシノキング	牡9	55	西川敏弘	4	11
12	2	2	リッコージョオー	牝9	53	中越豊光	9	12
払戻金　単勝6,150円　複勝560円・210円・110円　枠連複2,860円 馬連複7,190円