3歳秋のチャンピオンシップ

 本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の3歳王者の座を争うもので、カテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。

 充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。

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高知の期待馬が直線一気で完勝
初遠征を克服し連勝を9に伸ばす

 第2回西日本ダービーの舞台は佐賀競馬場。接近していた台風21号の影響が心配されたが、南寄りの進路を通ったため九州北部はほとんど雨に降られることもなく、良馬場での開催。しかし風は強く、馬場が乾いていたため、時折砂が巻き上げられるようなこともあった。
 注目となったのは高知から遠征のフリビオン。高知二冠制覇に加え、前走では古馬相手の珊瑚冠賞も制し、目下8連勝中。1週前には黒潮菊花賞が行われたが、高知三冠のタイトルには見向きもせず、より高みを目指しての西日本ダービー挑戦。また、デビューから6月の高知優駿まで手綱をとっていた中西達也騎手が調教師となり、前走の珊瑚冠賞から管理する立場となって初の遠征競馬ということでも話題となっていた。
 そのフリビオンの単勝は1.4倍。兵庫ダービー馬ブレイヴコールが4.9倍、金沢のMRO金賞を逃げ切ったムーンファーストが5.7倍。地元佐賀勢では世代最強のスーパーマックスに出走資格がなく、花吹雪賞を制したオヒナサマがやや離れた4番人気に続いた。
 発走直前、ほとんどの馬が枠入りを終えたところでロイヤルピンクが立ち上がり、馬体検査の結果、競走除外となるアクシデントがあった。
 好スタートから逃げたのはブレイヴコールで、笠松のグレイトデピュティがぴたりと2番手。スタートいまいちだったムーンファーストだが、すぐに位置取りを上げて外めの3番手、その内にはオヒナサマがつけた。人気のフリビオンはいつもどおり中団からレースを進めた。
 スタンド前の直線ではペースが落ち着いて馬群が凝縮したが、隊列はほとんど変わらないまま。そして向正面、前4頭が固まったまま徐々にペースアップすると、やや離れた5番手のフリビオンには早くもムチが2発、3発と入った。フリビオンを初めて見る人には、すでに手ごたえ一杯に見えただろう。しかしフリビオンが真価を発揮するのはレース終盤だ。
 3~4コーナー中間で一気に先頭に立ったムーンファーストが直線を向いても単独先頭で、そのまま押し切るかに思えた。しかし4コーナーでもまだ5番手だったフリビオンが、佐賀の短い直線で前の4頭を難なくとらえると、そのまま突き放しての完勝。2着のムーンファーストに2馬身差をつけた。さらに4馬身離れての3着に地元のオヒナサマが入り、ブレイヴコールは7着に沈んだ。
 「先頭に立ったときは勝ったと思いました。あそこから差し切られては仕方ないです」というムーンファーストの吉原寛人騎手の言葉がフリビオンの強さを物語っている。
 フリビオンで戦前言われていた不安が、初めての輸送と佐賀コース。しかし裏を返せば、負けるとすればそれくらいしか要因がなかったということでもある。「初めての輸送でも思った以上に落ち着いていました。(馬体重)マイナス10キロくらいまで覚悟していましたが、プラス3キロを見たときに、うまくいったと思いました」と中西調教師。輸送の不安を払拭したフリビオンが、期待どおりの強さを見せる結果だった。
 フリビオンの次走には、「状態次第ですが、当然ダービーグランプリに向かう予定です」と中西調教師。「折り合いにも心配がなく、距離は長いほうがいい」とのことから、年末の高知県知事賞まで視野に入っている。
西川敏弘騎手
包まれるのが嫌だったので、馬の力を信じて外を回しました。吉原くんの馬がいいレースをするだろうと思い、そのうしろにつければ間違いないと思ってマークして乗りました。エンジンのかかりが遅いので、行きっぷりが悪いのは想定内でした。力はあると信じていたので、それに馬がこたえてくれました。
中西達也調教師
自分が乗っていた時も、向正面では合図を送っても動かないんですが、終いはきっちり伸びてくれます。それがわかっていても、見ているとハラハラしますね。道中は本気で走っていないので、勝負根性というか、そのぶん余力を残していて、4コーナーあたりの加速の感じで勝てると思いました。


取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)