岩手3歳三冠の最終戦
難読レース名に挙げられても不思議ない不来方(こずかた)賞。かつて盛岡がそう呼ばれていたことに起因し、かの石川啄木も“不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心”と詠んだ。さて当レースは岩手所属馬にとって3歳秋のチャンピオンシップのファイナル・ダービーグランプリ(10月1日・盛岡2000m)へ向けても重要な一戦。なお今年は2009年以来14年ぶりに水沢競馬場での実施となるが。ここでは13~22年の盛岡開催だった過去10回から傾向を見ていく。
過去10回の勝ち馬は1、2番人気が各4頭、3番人気2頭と、すべて3番人気以内となっている。4番人気以下で勝ったのは2008年ピンクゴールド(6番人気)まで遡らねばならない。勝ち馬は基本的に人気上位から考えていいだろう。なお、4番人気以下は2、3着が計10頭。人気薄を狙うなら、こちらか。【表1】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
1番人気 | 4 | 2 | 2 | 2 | 40.0% | 60.0% | 80.0% |
2番人気 | 4 | 3 | 1 | 2 | 40.0% | 70.0% | 80.0% |
3番人気 | 2 | 1 | 1 | 6 | 20.0% | 30.0% | 40.0% |
4番人気 | 0 | 1 | 1 | 8 | 0.0% | 10.0% | 20.0% |
5番人気 | 0 | 1 | 2 | 7 | 0.0% | 10.0% | 30.0% |
6番人気以下 | 0 | 2 | 3 | 50 | 0.0% | 1.9% | 4.8% |
過去10回は盛岡で実施。脚質別に見てみると、逃げ・先行が7勝。2000mという地方重賞の中でも長い距離にカテゴライズされるが、基本は前に行ける馬有利というデータとなった。しかしながら今年は、距離はそのままに水沢競馬場に舞台を移す。向正面スタートでコーナー6回、ゴールまでの直線距離は盛岡より55m短い245mとなる。そこで、今年の不来方賞と同じ条件である「水沢ダート2000m」「3歳限定」で実施された東北優駿(2019年、21~23年)の脚質別データ【表2】を見てみる。母数は4回分と少ないが、勝ち馬はすべて逃げ・先行。対して追い込みは3着以内がなく、舞台替わりの今年は例年以上に前有利と考えていかもしれない。
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
逃げ | 1 | 0 | 0 | 5 | 16.7% | 16.7% | 16.7% |
先行 | 3 | 2 | 2 | 4 | 27.3% | 45.5% | 63.6% |
差し | 0 | 2 | 2 | 11 | 0.0% | 13.3% | 26.7% |
追込 | 0 | 0 | 0 | 11 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
騎手別では地方通算3800勝以上を挙げるベテラン・村上忍騎手がトップの4勝を挙げる。さらに、2022年は7番人気のオンラインボスで3着と、伏兵馬でも存在感を示す。高松亮騎手は22年マナホクで勝利。2番手につけた1番人気グットクレンジングが8着に敗れる展開を最後方から差し切った。【表3】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
村上忍 | 4 | 2 | 1 | 3 | 40.0% | 60.0% | 70.0% |
高松亮 | 3 | 1 | 0 | 4 | 37.5% | 50.0% | 50.0% |
山本聡哉 | 1 | 4 | 3 | 2 | 10.0% | 50.0% | 80.0% |
阿部英俊 | 1 | 0 | 0 | 3 | 25.0% | 25.0% | 25.0% |
高橋悠里 | 1 | 0 | 0 | 7 | 12.5% | 12.5% | 12.5% |
今年の東北優駿の1番人気は船橋から移籍初戦のロッソナブアで3着だった。不来方賞でも過去10回で毎年、移籍初戦の馬が出走(再転入馬を含む)。既存勢力との力関係がポイントとなるが、該当する20頭中7頭が3着以内に入っており【3-3-1-13】。勝率15.0%、連対率30.0%、3着内率35.0%だった。勝ち馬は2015年ダイワエクシード(前走JRA3歳1勝クラス16着)、19年ヤマショウブラック(黒潮盃7着)、22年マナホク(王冠賞5着)。また、19年ニューホープが岐阜金賞1着から2着に入っており、前走が南関東・門別の重賞で入着、またはそれ以外の地区の重賞勝ちであれば信頼度はグッと上がる。
人気を素直に信じていい一戦。移籍初戦馬も前述のように重賞上位実績が求められることから、過度に評価しない方がいいだろう。特に前走・JRA未勝利戦組はダートで掲示板の実績があってもなかなか好走は難しく、17年ウニオミュスティカの3着が最高だった。データからは逃げ・先行できる地元馬を中心に考えていいだろう。
(文・大恵陽子)
注記
当ページの情報は、NARが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。