生え抜き馬限定のダービー
2016年に創設された西日本ダービーは、金沢、笠松、愛知(名古屋)、兵庫(園田・姫路)、高知、佐賀の各競馬場でデビューし、その後も原則として移籍経験のない“生え抜き馬”のみに出走資格がある。そのため必ずしも各場の世代最強馬が出走してくるとは限らないが、これまで地元のダービーと西日本ダービーの両方を勝った馬が4頭誕生している。佐賀では17年以来2度目の開催で、ここでは第1回の16年から22年までの過去7回から傾向を見ていく。
原則として各地区(場)の出走枠は2頭(出走1頭以下の地区がある場合は開催地区所属馬で充当)で、2017年佐賀での9頭立て(1頭競走除外)以外は12頭で争われている。最多は兵庫の3勝(16、18、21年)。次いで高知の2勝(17、19年)と、複数の勝利を挙げているのはこの2地区のみ。佐賀は20年、金沢は22年に勝利を挙げている一方、愛知、笠松の東海2場からは勝ち馬が出ていない。3着内率に目を向けても兵庫→高知の順となり、この2地区が他4地区をリードする存在だ。他の交流競走のように開催場の出走枠数が優遇されていないため、基本的には地元2頭vs遠征10頭の構図。開催地区所属馬【2-0-2-19】が地の利を活かして大躍進、というケースは考えにくい。【表1】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
兵庫 | 3 | 2 | 2 | 6 | 23.1% | 38.5% | 53.8% |
高知 | 2 | 2 | 1 | 9 | 14.3% | 28.6% | 35.7% |
金沢 | 1 | 1 | 1 | 10 | 7.7% | 15.4% | 23.1% |
佐賀 | 1 | 0 | 2 | 12 | 6.7% | 6.7% | 20.0% |
笠松 | 0 | 1 | 1 | 11 | 0.0% | 7.7% | 15.4% |
愛知 | 0 | 1 | 0 | 12 | 0.0% | 7.7% | 7.7% |
1番人気は4勝。ほか2、3、5番人気が各1勝と勝ち馬は上位人気から。1番人気は敗れた場合も2着2回、3着1回で3着内率100%と安定している。2~5番人気では、3番人気が馬券圏内5回、3着内率71.4%で抜けているが、まだ7回の開催でサンプル数が少なく、2~5番人気は横並びと考えてもいいかもしれない。【表2】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
1番人気 | 4 | 2 | 1 | 0 | 57.1% | 85.7% | 100.0% |
2番人気 | 1 | 1 | 0 | 5 | 14.3% | 28.6% | 28.6% |
3番人気 | 1 | 2 | 2 | 2 | 14.3% | 42.9% | 71.4% |
4番人気 | 0 | 1 | 1 | 5 | 0.0% | 14.3% | 28.6% |
5番人気 | 1 | 0 | 1 | 5 | 14.3% | 14.3% | 28.6% |
6番人気以下 | 0 | 1 | 2 | 43 | 0.0% | 2.2% | 6.5% |
各地区のダービーと西日本ダービーの関連を見ていく。過去7回中5回でダービー馬が出走(2017年は2頭出走で計6頭)。うち17年フリビオン(高知)、18年コーナスフロリダ(兵庫)、21年スマイルサルファー(兵庫)、22年スーパーバンタム(金沢)が勝利し、【4-1-0-1】と好成績を残している。【表3】
西日本ダービー開催場 |
16年 園田 |
17年 佐賀 |
18年 金沢 |
19年 高知 |
20年 笠松 |
21年 名古屋 |
22年 園田 |
西日本ダービー勝ち馬の所属 | 兵庫 | 高知 | 兵庫 | 高知 | 佐賀 | 兵庫 | 金沢 |
石川ダービー(金沢) | 実施なし | ▲ | - | ▲ | ▲ | - | ○1 |
東海ダービー(笠松・名古屋) | - | - | - | ▲ | - | - | - |
兵庫ダービー(兵庫) | ▲ | ○7 | ○1 | - | ▲ | ○1 | - |
高知優駿(高知) | ○2 | ○1 | - | - | - | ▲ | - |
九州ダービー(佐賀) | - | ▲ | - | - | ▲ | - | ▲ |
○1:ダービーを生え抜き馬が勝利し西日本ダービー出走(数字は西日本ダービーの着順)
▲:ダービーを生え抜き馬が勝利したが西日本ダービー不出走
―:ダービーを生え抜き馬以外(西日本ダービー出走資格なし)が勝利
佐賀所属馬の3着以内は、前回佐賀開催だった2017年のオヒナサマ(3着)、18年金沢・マイメン(3着)、20年笠松・エアーポケット(1着)の計3回。3頭とも佐賀三冠のいずれかで3着以内の実績があった。佐賀で2度目の開催となる今年、春の二冠で馬券に絡んだ生え抜き馬はミヤノウッドリー(佐賀皐月賞3着)だけ。三冠目・ロータスクラウン賞で生え抜き馬の躍進がなければ、他地区相手に厳しい戦いとなりそうだ。
今年のダービーシリーズ対象競走(西日本のみ)で、生え抜き馬が勝利したのは東海ダービー(名古屋・セブンカラーズ)、兵庫ダービー(スマイルミーシャ)、高知優駿(ユメノホノオ)、石川ダービー(ショウガタップリ)。どの馬も出走してくれば主役となりそう。もし各馬が勢ぞろいということになれば、ダービーグランプリへ向けても非常に注目度の高いレースになる。
(文・上妻輝行)
注記
当ページの情報は、NARが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。