東海地区の3歳王者決定戦
東海ダービーは、東海地区の3歳王者を決める一戦で、同地区三冠ロードの2戦目にあたる。1971年の創設以来、名称や競走条件は変遷を辿ってきたが、2013年以降は東海・北陸交流として、17年以降は東海所属馬限定として、毎年6月に実施されている。また、昨年春の名古屋競馬場移転に伴い、それまで旧競馬場の1900mに設定されていた競走距離が、昨年は新競馬場の2000m、今年は更に2100mに変更された。このような事情に留意しつつ、東海ダービーの過去10年をデータを紐解きながら振り返っていく。
1番人気馬が8勝2着1回と、信頼度は一目瞭然。データの上では、無理に逆らうことは得策とは言えない。とは言え、2~5番人気の好走率は殆ど互角。3連単平均配当は、ハナノパレードが断然の1番人気を裏切ってしんがり負けした2015年を除いても11,013円と、ヒモ荒れの形であれば十分好配当も狙えるレースと言える。【表1】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
1番人気 | 8 | 1 | 0 | 1 | 80.0% | 90.0% | 90.0% |
2番人気 | 0 | 3 | 2 | 5 | 0.0% | 30.0% | 50.0% |
3番人気 | 1 | 1 | 1 | 7 | 10.0% | 20.0% | 30.0% |
4番人気 | 1 | 1 | 2 | 6 | 10.0% | 20.0% | 40.0% |
5番人気 | 0 | 2 | 2 | 6 | 0.0% | 20.0% | 40.0% |
6番人気以下 | 0 | 2 | 3 | 64 | 0.0% | 2.95 | 7.2% |
過去10年で牡63頭・牝54頭と、出走数に大きな差はない。しかし好走率では明確に牡馬が優勢だ。牝馬の勝ち馬3頭は全て重賞4勝の高実績馬で、当レース1番人気での勝利。2着馬も、10戦10勝の戦歴で臨んだサムライドライブや、重賞で数々の好走があったエムエスオープンなど相当の高実績の馬。牝馬の取捨には戦歴中心に慎重な検討が必要と言える。【表2-1】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
牡 | 7 | 6 | 7 | 43 | 11.1% | 20.6% | 31.7% |
セン | 0 | 0 | 1 | 1 | 0.0% | 0.0% | 50.0% |
牝 | 3 | 4 | 2 | 45 | 5.6% | 13.0% | 16.7% |
また、所属別の成績では、笠松所属馬が率の上では意外と健闘。実績的に勝負になりそうな馬が敢えて挑戦してきているところも窺われ、この点の目こぼしは予想の上では禁物だ。【表2-2】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
愛知 | 7 | 7 | 7 | 63 | 8.3% | 16.7% | 25.0% |
笠松 | 2 | 3 | 2 | 19 | 7.7% | 19.2% | 26.9% |
金沢 | 1 | 0 | 1 | 7 | 11.1% | 11.1% | 22.2% |
出走馬のデビュー地を調べると、成績がいいのはJRAからの転入馬。とりわけこの2年はトミケンシャイリとタニノタビトが続けて直前の駿蹄賞との二冠を達成しており、地方転入後の実績もあるJRAデビュー馬はやはり目が離せない。とは言え、名古屋デビューのいわゆる“生え抜き馬”も、この3年に限っても2着2回に3着3回。これは十分な奮闘と言える。 注目すべきは、春先辺りまでは重賞戦線を席巻することが多い門別出身馬が、地元名古屋所属馬と同程度かやや劣勢という成績に留まっていること。デビューからの消化レース数も併せて見たとき“多すぎない方が良い”という結果が出ていることからも、ダービーの季節はもう、早期デビューが可能な門別出身馬の優位性は薄れる頃なのかもしれない。【表3-1,2】
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
JRA | 5 | 3 | 1 | 21 | 16.7% | 26.7% | 30.0% |
名古屋 | 2 | 5 | 4 | 24 | 5.7% | 20.0% | 31.4% |
門別 | 2 | 2 | 4 | 32 | 5.0% | 10.0% | 20.0% |
笠松 | 1 | 0 | 1 | 9 | 9.1% | 9.1% | 18.2% |
大井 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
金沢 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
9戦以下 | 2 | 2 | 1 | 3 | 25.0% | 50.0% | 62.5% |
10~12戦 | 5 | 4 | 3 | 17 | 17.2% | 31.0% | 41.4% |
13~15戦 | 2 | 3 | 3 | 22 | 6.7% | 16.7% | 26.7% |
16~18戦 | 1 | 1 | 0 | 20 | 4.5% | 9.1% | 9.1% |
19戦以上 | 0 | 0 | 3 | 27 | 0.0% | 0.0% | 10.0% |
東海地区の三冠ロードの一冠目となる駿蹄賞は、当レースの最重要ステップレース。データ的には、当レース3着内の活躍馬はやはり駿蹄賞出走組から多く出ていると言える。とりわけ、駿蹄賞1着から当レースに臨んだ馬9頭の成績は【6-1-1-1】。駿蹄賞勝ち馬は当レースでは不動の中心と言って良い。 一方、相性が良くないのが牝馬の重賞・東海クイーンカップ。牝馬がやや劣勢な当レースとは言え、出走馬の活躍率は牝馬全体を大きく下回る。とりわけ、東海クイーンカップから当レースへの直行は、そこで勝って当レースに臨んだ2頭を含めて【0-0-0-8】と全滅。これは一度疑ってかかるには十分なデータだろう。 隠れた「好相性レース」は、例年4月初旬に笠松競馬場で行われる新緑賞。3着内率36.0%は見逃せない数字だ。2018年のビップレイジング(4番人気)のように、新緑賞勝利の後、駿蹄賞をパスして地元戦経由で当レースに挑み勝った馬もおり、穴探しのひとつの観点として提案したい。
1番人気の馬を素直に信頼。とりわけ、駿蹄賞勝ち馬が出走してくれば、よほどの事情がない限り不動の中心と捉えたい。穴探しは人気の盲点になりがちな笠松勢から。
(文・坂田博昭)
注記
当ページの情報は、NARが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。