真夏の牝馬短距離決戦
グランダム・ジャパン古馬シーズンで毎年7~8月に行われる一戦。舞台となる金沢競馬場は立地もコースの広さも全国的に中間にあると言え、過去10回の優勝馬は北海道や南関東、東海、兵庫と様々な地区から誕生している。2021年は新型コロナウイルスの影響で、8月の実施予定が11月に地元馬限定戦として仕切り直された。ここでは12~21年の過去10回から傾向を見ていく。
2021年は新型コロナウイルスの影響で地元馬のみの一戦となったため、所属別成績では20年までの過去9回で見てみる。強いのは大井で、17年から3連覇を果たした。そのうち19年ジェッシージェニーは5番人気、単勝オッズ13.1倍の勝利で、鞍上の藤田凌騎手は重賞初制覇となった。兵庫は2勝を挙げるものの、14年と16年のもので、近年は苦戦傾向。これは他の交流重賞でも言えることだが、近年は南関東から高レベルの遠征馬が増えたことにより、全国各地で南関東所属馬の活躍がさらに目立っている。[表1]
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
大井 | 3 | 2 | 2 | 4 | 27.3% | 45.5% | 63.6% |
兵庫 | 2 | 3 | 1 | 4 | 20.0% | 50.0% | 60.0% |
大井以外の南関東 | 1 | 2 | 0 | 7 | 10.0% | 30.0% | 30.0% |
東海地区 | 1 | 1 | 1 | 10 | 7.7% | 15.4% | 23.1% |
金沢 | 1 | 0 | 4 | 47 | 1.9% | 1.9% | 9.6% |
北海道 | 1 | 0 | 0 | 0 | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
高知 | 0 | 1 | 1 | 3 | 0.0% | 20.0% | 40.0% |
1番人気と2番人気の勝利が過去10回中8回と多く、人気の信頼度は厚い。最も人気薄での勝利は2015年エトワールドロゼ(金沢)で8番人気、単勝50.0倍。人気を集めた南関東所属馬が勝負所で脚を伸ばしきれず、地元馬の逃げ切り勝ちとなった。5番人気以下でも10頭が3着以内に入っており、伏兵も警戒した方がいいだろう。[表2]
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
1番人気 | 4 | 3 | 0 | 3 | 40.0% | 70.0% | 70.0% |
2番人気 | 4 | 2 | 1 | 3 | 40.0% | 60.0% | 70.0% |
3番人気 | 0 | 0 | 1 | 9 | 0.0% | 0.0% | 10.0% |
4番人気 | 0 | 2 | 3 | 5 | 0.0% | 20.0% | 50.0% |
5番人気 | 1 | 1 | 1 | 7 | 10.0% | 20.0% | 30.0% |
6番人気以下 | 1 | 2 | 4 | 54 | 1.6% | 4.9% | 11.5% |
金沢競馬場は2019年シーズン開幕前に路盤を改修して以降、内を空けて走るようになり、以前ほど明確な逃げ・先行有利の馬場ではなくなった。12~18年の7回では逃げ・先行馬が6勝を挙げたのに対し、路盤改修以降の過去3回では先行馬2勝、追い込み馬1勝。門別競馬場や大井競馬場に比べるとコンパクトではあるものの、1周は1200mあり、差し・追い込みも比較的届くコースと言えるだろう。[表3][表4]
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
逃げ | 0 | 0 | 0 | 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
先行 | 2 | 2 | 0 | 4 | 25.0% | 50.0% | 50.0% |
差し | 0 | 1 | 1 | 10 | 0.0% | 8.3% | 16.7% |
追込 | 1 | 0 | 2 | 5 | 12.5% | 12.5% | 37.5% |
1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 3着内率 | |
逃げ | 4 | 3 | 1 | 4 | 33.3% | 58.3% | 66.7% |
先行 | 2 | 1 | 3 | 13 | 10.5% | 15.8% | 31.6% |
差し | 1 | 2 | 3 | 23 | 3.4% | 10.3% | 20.7% |
追込 | 0 | 1 | 0 | 19 | 0.0% | 5.0% | 5.0% |
言わずと知れた金沢のトップジョッキー・吉原寛人騎手。地元馬のみでなく、読売レディス杯では遠征馬への騎乗依頼も多い。過去10回では4勝、2着2回(4着4回)と好成績だ。このコースを熟知し、時に騎手仲間でさえも「そんな進路取りのパターンがあったなんて!」と驚くこともある。騎手人気しやすいタイプではあるものの、騎乗予定があれば注目必至だろう。
まず注目すべきは大井からの遠征馬。牝馬重賞で上位入着歴のある馬だけでなく、牡馬混合でB級を勝っていればここでも期待ができる。2018年の勝ち馬エースウィズは「南関東で牡馬の上位クラスと戦うよりは牝馬同士の方が」と、B2B3選抜を勝って1戦を挟んだのちの重賞制覇で、19年ジェッシージェニーもB3を勝っての参戦。それら遠征馬に吉原騎手が騎乗となれば、鬼に金棒だろう。また、他の西日本の競馬場のように差し・追い込み馬だからといって割り引く必要はなさそう。
(文・大恵陽子)
注記
当ページの情報は、NARが特定の馬の応援や推奨などを行うものではありません。