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第32回 2014年5月9日(金) 漬物各種(船橋競馬場)

船橋競馬場
「成田漬物本舗」 漬物各種(主に500円から)

 船橋競馬場の入場門を通過すると、正面に案内所と専門紙の発売所がある。それを横目に見ながらパドックの方向に進んでいくと、右側に競走成績の表示モニターが並んでいる一角がある。屋根がついているその場所には、ベニヤ板に白い布をかけた簡易店舗が併設されている。
競馬場のおみやげに漬物を!

 そこに並んでいるのは漬物の数々。競馬場の漬物屋さんは、船橋競馬名物として、もはや定着している感がある。
 その店主は篠塚清さん。成田山新勝寺の山門の近くに店を構え、船橋競馬場の開催日だけ、出張販売を続けている。
「最初に船橋競馬場でお店を出させていただいたのは、2010年のJBCのとき。千葉の物産展のなかのひとつとして声をかけていただいて、それがきっかけで競馬場にお願いして、おととしの春からずっと出させていただいているんです」
 それ以来、船橋競馬がある日は雨が降ろうが雪が降ろうが、成田から漬物を運んでは店頭に並べ、店を訪れるお客さんに明るく声をかけている。筆者が訪問した最終レースが始まる少し前の時間帯にも、次々とお客さんが立ち寄っていた。
「今日も負けちゃったけど、買っていくよ」
「ありがとうございます。次はがんばってくださいね」
 ご主人の周囲をなごませる笑顔を見て、競馬場に来るたびに何かを買っていく常連さんも多いようだ。かく言う私もすでに常連状態。いつもお世話になっています。
「一番人気は、きゅうりの浅漬けですね。どうぞ食べていってください。写真を撮るなら私が持ちますよ」  と、気さくに話してくれる篠塚さんには、競馬ファンからも声がかかる。それに対応して「お久しぶりです」とか「いつもありがとうございます」などと、明るく返してくれるのだから、また寄ろうという気にもなるよなあ。
 篠塚さんは、自宅にグリーンチャンネルを引いているほどの競馬ファン。「でも最近は忙しくなってしまって、あんまり競馬をやっていないんですよ」とおっしゃるが、それでも競馬場で営業している姿は楽しそう。その証拠に、このお店にはイスがひとつもないんです。ということは、開門前から最終レースまで、篠塚さんは立ちっぱなし!!
店頭には漬物がいっぱい

 競馬場と漬物は来場者の年齢層的にマッチしているからいいなあ、というのが、私がこの店を知ったときの感想だった。しかしそれだけではここまでお店は繁盛しない。ともすれば殺伐としがちな勝負の世界、その空気をやわらかくしてくれる篠塚さんの人柄が、船橋競馬場になくてはならない存在になっているのだろう。
 さあ、私も自宅に帰ってご飯を炊いて、きゅうりの浅漬けときゅうりの葉唐辛子漬け(ともに500円)を食べようっと!!


浅野靖典(あさのやすのり)
競馬キャスター・ライターとして活動中。「クリック!地方競馬」キャスターを務めているほか、JRAブリーズアップセール、八戸、九州の各競走馬市場にて司会進行を担当。ライターとしては、
・競馬総合チャンネル(netkeiba.com)
・POGの達人
・JRAホームページ
・週刊プレイボーイ
・WEBハロン
などに寄稿している。

※ 本文で紹介している逸品については、取材時点のものです。 その後、値段改定やメニューが変わっている場合もございます。