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連載第60回 1995~1997年 報知オールスターカップ

『同一重賞3連覇 伝説のマイラー』
1995~1997年 報知オールスターカップ アマゾンオペラ

 先頃、地方競馬歴代3位の通算6269勝を挙げた石崎隆之騎手が、騎手免許の更新を行わなかったことが発表された。3月末で現在の騎手免許が失効し、47年に及ぶ騎手生活にひとまずピリオドを打つことになった。
 石崎隆之騎手と言えば、アブクマポーロ、トーシンブリザード等数々の名馬に騎乗しているが、思い出に残る石崎隆之騎手の名馬を敢えて挙げるなら、この馬だ。
 1994年5月6日、4歳未出走戦(当時)でデビューしたアマゾンオペラ。春のクラシックには間に合わなかったものの、デビュー7連勝で初の重賞、戸塚記念に駒を進めたが、快速馬ドルフィンボーイに初めて後塵を喫し2着、続く3冠最後の東京王冠賞も再びドルフィンボーイに敗れ2着。その後東京湾カップ、川崎記念、金盃に勝ち、5歳(当時)にして南関東のトップホースの一角に数えられるようになる。
 おりしも交流元年の95年。帝王賞で中央勢を迎え撃つが、ライブリマウントの2着に敗れる。しかしこれは当時のダート界でもNo.2であることを意味する。アマゾンオペラは船橋在籍時、95年中山のオールカマー(8着)、96年フェブラリーS(5着)、97年南部杯(10着)と3度しか遠征しておらず、中央・地方交流競走は「迎え撃つ立場」での参戦がほとんどだった。地元でもこの2着が最高で、その後ホクトベガが現れ、さらに南関東にもアブクマポーロやコンサートボーイが現れて、結局勝つことは出来なかった。
 全17勝を石崎隆之騎手が挙げ、マイルは16戦7勝、2着1回、3着1回と最多の勝ち鞍を挙げている。中でも圧巻は報知オールスターカップの3連覇である。このレースは当時その名の通りファン投票(と推薦馬)により出走馬が選出されていた。

 1995年の第32回報知オールスターカップ。帝王賞2着の後、前走のマイルグランプリを2着に4馬身の差を付け快勝し1番人気に推されたアマゾンオペラ。激しい雨が降り、不良馬場のコンディション。プラス9キロとやや重めだったが、少頭数でバラけたレース展開の中、3番手、2番手と徐々に位置取りを上げ、直線で逃げるケーエフネプチュンを直線中ほどで交わし快勝、かと思われたが、重めのせいか意外にモタつき、大外を強襲するモガミキッカ、ジワジワと追いつめるヘイセイベルを辛くもクビ、ハナ差押さえての勝利。石崎隆之騎手も「馬体重が重かったというより、動きが重かった」と言うが、思ったよりも手応えには余裕があった様子。
 この後オールカマーに臨んだが結果は前述の通り。
 翌1996年の第33回報知オールスターカップ。オールカマーの後、グランドチャンピオン2000に勝ったものの、その後の中央・地方交流では今一歩の近況。しかし復調気配が伝えられてもいた。
 前年は1.1倍の断然1番人気だったが、この年は辛うじて2.6倍の1番人気に推されたものの、群馬記念でホクトベガの2着となったヒカリルーファスが同じく2.6倍と人気が割れていた。
 レースでも苦戦を強いられた。ヒカリルーファスが逃げ、カネショウゴールドとヘイセイベルが続き、アマゾンオペラは4番手。直線ではヒカリルーファスとカネショウゴールドが競り合い、その内を高橋三郎騎手が操るヘイセイベルが突く。「行けると思ったのに我慢できず、仕掛けが一完歩早くなってしまった」と高橋三郎騎手。アマゾンオペラは外からジワジワと差を詰め、ゴール前で抜け出したヘイセイベルをキッチリとクビ差交わし連覇を達成した。「三郎さんにやられたと思った」と石崎隆之騎手。仕掛けのタイミングが勝負の明暗を分ける、名手同士の名勝負であった。

 ファン投票1位、単勝1.6倍。3連覇を賭けて臨んだ第34回報知オールスターカップ。この年は「記録」の年となった。
 レースは地元川崎のマフィンが逃げ、アマゾンオペラは6番手。隊列は動かないまま4コーナーから直線へ。ベストンスイング、バンチャンプ、ダンディーハートと横一線に並んだ追い比べの真ん中を割って抜け出したアマゾンオペラが、2着以下に1馬身の差を付け、3連覇を達成した。
 同一重賞3連覇はカウンテスアップの川崎記念(第34、35、36回)に並ぶ2頭目。トチノミネフジの9勝を超える重賞10勝を達成。ちなみに、石崎隆之騎手と出川己代造調教師は翌年の第35回をバンチャンプで勝ち、騎手、調教師同一重賞4連覇を達成している。
 アマゾンオペラにとってこの勝利が最後の勝利となった。99年に北海道に移籍し、2000年11月23日の門別短距離特別7着を最後に現役を引退。通算53戦17勝、重賞10勝の輝かしい成績を残した。
文●日刊競馬 小山内 完友
写真●いちかんぽ

競走成績

第32回 報知オールスターカップ 平成7年(1995年)7月5日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金2,000万円 川崎 1,600m 雨・不良
着順 枠番 馬番 馬名 性齢 重量 騎手 タイム・着差 人気
1 2 2 アマゾンオペラ 牡5 58 石崎隆之 1.42.2 1
2 3 3 モガミキッカ 牡8 58 佐藤隆 クビ 4
3 6 6 ヘイセイベル 牡5 54 野崎武司 ハナ 3
4 5 5 ケーエフネプチュン 牝5 56 矢内博 1 1/2 2
5 4 4 アクアライデン 牝5 56 高橋三郎 5 5
6 7 7 セントミリオン 牡8 54 桑島孝春 1 1/2 7
7 1 1 キンコーバトラ 牡7 58 森下博 5 6
払戻金 単勝110円 複勝100円・230円・0円 連複430円
第33回 報知オールスターカップ 平成8年(1996年)7月31日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金2,000万円 川崎 1,600m 晴・良
着順 枠番 馬番 馬名 性齢 重量 騎手 タイム・着差 人気
1 6 6 アマゾンオペラ 牡6 57 石崎隆之 1.41.6 1
2 1 1 ヘイセイベル 牡6 57 高橋三郎 クビ 4
3 4 4 ベストンスイング 牡5 53 佐藤隆 2 3
4 8 9 カネショウゴールド 牡6 57 一ノ瀬亭 クビ 5
5 3 3 ヒカリルーファス 牡5 57 早田秀治 1 2
6 7 7 スペクタクル 牡6 57 内田博幸 ハナ 6
7 2 2 ハギノサーペン 牡7 57 佐々木竹見 1/2 7
8 8 8 フジノシライト 牡8 53 河津裕昭 大差 9
9 5 5 カミノキリンジ 牡9 53 佐藤喜良 大差 8
払戻金 単勝260円 複勝140円・170円・180円 枠連複1,170円
第34回 報知オールスターカップ 平成9年(1997年)7月3日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金2,000万円 川崎 1,600m 晴・良
着順 枠番 馬番 馬名 性齢 重量 騎手 タイム・着差 人気
1 2 2 アマゾンオペラ 牡7 57 石崎隆之 1.41.0 1
2 7 7 ベストンスイング 牡6 55 張田京 1 3
3 1 1 バンチャンプ 牡5 57 佐藤祐樹 クビ 2
4 4 4 カネショウゴールド 牡7 57 桑島孝春 1/2 5
5 5 5 ダンディーハート 牡6 57 的場文男 クビ 7
6 3 3 ヘイセイベル 牡7 57 野崎武司 2 1/2 4
7 8 8 マフィン 牝8 55 森下博 3 6
8 6 6 ケイアイパレス 牡5 53 一ノ瀬亭 1/2 8
9 8 9 ハネダリーディング 牡5 55 岩城方元 3/4 9
払戻金 単勝160円 複勝110円・120円・120円 枠連複710円

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