当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

名古屋では牝馬が圧巻のデビュー4連勝
北海道ではダートグレード好走の逸材も

2017年12月1日

昨年の勝ち馬からはダービー馬が2頭

 2017年の3歳戦線では、昨年(2016年)の未来優駿勝ち馬の活躍がまずまず目立っていた(以下、成績等は11月21現在)。
 未来優駿の勝ち馬でダービーシリーズも制したのは2頭。佐賀・九州ジュニアチャンピオンのスーパーマックスと、金沢・兼六園ジュニアカップのヴィーナスアローだ。
 特にスーパーマックスは佐賀を代表する存在となった。九州ダービー栄城賞に加え、ロータスクラウン賞と佐賀二冠を制覇。一時的に大井に移籍していた時期があったため、地元佐賀で行われた西日本ダービーの出走資格がなかったのは残念だが、地元佐賀に限れば古馬相手のS2重賞も含めて5戦全勝というパーフェクトな成績。他地区への挑戦もあり、高知優駿は残念ながら他馬との接触で落馬競走中止となったが、JRA小倉の芝に挑戦した小倉日経オープンは6着。佐賀の生え抜きとして、来年以降の古馬線戦でも中心的存在となりそうだ。
 ヴィーナスアローは、ダービーシリーズとして新設された石川ダービーを制覇。しかしその後はMRO金賞9着、サラブレッド大賞典8着、古馬A1に格付けされ苦戦が続いている。今後は牝馬限定戦などでの活躍を期待したいところ。
 北海道所属として川崎・鎌倉記念を制したストーンリバーは、移籍せずに北海道にとどまった。3歳になって勝ち星こそないものの、北海道三冠すべてに出走して2、5、2着。水沢・ダービーグランプリにも遠征してスーパーステションの3着と、全国レベルでも健闘している。
 盛岡・若駒賞のサンエイリシャールは、3歳シーズン幕開けのスプリングカップを制したものの、その後の重賞では岩手ダービーダイヤモンドカップ3着など入着まで。
 園田・兵庫若駒賞のナチュラリーは、兵庫三冠すべてに出走したものの、菊水賞での4着が最高という成績。しかし秋にはA2特別を制するまでになり、新設された兵庫ゴールドカップ(1230メートル)で2着と、短距離路線での活躍が期待される。
 門別・サッポロクラシックカップのフライングショットは、船橋に移籍し3歳特別まで3連勝と活躍の兆しを見せたが、優駿スプリントでは6着。夏以降は出走していない。
 名古屋・ゴールドウィング賞のミトノリバーは、その後勝ち星がなく駿蹄賞では11着。古馬B級格付けとなって苦戦している。

重賞勝ち馬のきょうだいが活躍

 2017年の未来優駿は、九州ジュニアチャンピオンから始まった。一昨年までは10月下旬に行われていたが、昨年から10月上旬に時期が早まった。直線、3頭の争いからゴール前で抜け出したのはキングランシーン。デビュー戦を勝ったあとは3戦連続で3着が続いたが、距離が1750メートルに延びたシリウス特別から連勝。距離伸びての3歳三冠戦線で活躍が期待できそうだ。
九州ジュニアチャンピオン キングランシーン
鎌倉記念 リコーワルサー
 鎌倉記念では、今年も北海道からの遠征馬が上位人気に支持されたが、勝ったのは大井のリコーワルサー。新馬戦を勝ったあと2戦目で3着に敗れていたため7番人気に過ぎなかったが、大井所属ながら左回りを意識して船橋を使い、そして川崎の鎌倉記念で結果を出した。
 若駒賞は、逃げた1番人気ブレシアイルを競り落として勝ったのはニッポンダエモン。今年、岩手所属ながら北海道二冠を制したベンテンコゾウの全弟で、馬主も同じ大久保和夫氏。ベンテンコゾウは岩手デビューで北海道の三冠に挑戦したが、ニッポンダエモンは逆に北海道デビューで、JRA認定ではない未勝利戦を勝ったのみ、4戦1勝という成績で岩手に移籍しての初戦だった。
若駒賞 ニッポンダエモン
ゴールドウィング賞 サムライドライブ
 ゴールドウィング賞を勝ったのは牝馬のサムライドライブ。好スタートから2番手に控えるも、4コーナーで先頭に立つと直線では後続を寄せ付けず、圧巻のレースでデビューから4連勝。東海地区では例年、2歳から3歳前半の重賞戦線では牝馬の活躍が目立つが、この世代も東海ダービーへ向けてはこの馬が中心となりそうだ。
 サッポロクラシックカップは、翌週に北海道2歳優駿JpnⅢが組まれているため、2歳オープンクラスの2番手、もしくは短距離志向の馬たちが中心というメンバーとなるが、ここで圧倒的な強さを見せたのがソイカウボーイ。4コーナーでは先行集団のうしろ6番手という位置取りで、そこから一気に突き抜け、2着のデニストンに4馬身差をつけた。JRA札幌芝への挑戦では惨敗だったが、門別では3戦3勝。その後、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡに遠征して3着と善戦。今後、全国区での活躍が期待できる逸材だ。
サッポロクラシックカップ ソイカウボーイ
兵庫若駒賞 トゥリバ
 兵庫若駒賞を逃げ切ったのは、ここまで6戦未勝利だった牝馬のトゥリパ。昨年の兵庫ダービーを制したブレイヴコールの全妹で、馬主はこの年の1月に調教師を引退した橋本忠男氏。管理する平松徳彦調教師、そしてこの馬には初騎乗で勝利に導いた吉村智洋騎手は、ともにかつて橋本忠男厩舎に所属していたという、人と馬のつながりが話題となった。
 兼六園ジュニアカップは、1番枠から好スタートでハナをとったフウジンが逃げ切り勝ち。笠松デビューで1戦(2着)したあと金沢に移籍し、ここまで5戦2勝と、それほど目立った存在ではなかった。1番人気で2着だったノブイチが北海道からの転入2戦目だったように、金沢のこの世代はまだまだ混戦といえそうだ。
兼六園ジュニアカップ フウジン

ダート種牡馬の産駒が活躍

 今年の勝ち馬の血統はバラエティーに富んでいた。とはいえやはりダート路線で活躍している種牡馬の産駒が目立った。
 ニッポンダエモン(若駒賞)の父は、今年も地方のリーディングサイアーランキングで勝利数も賞金もダントツのサウスヴィグラス。サムライドライブ(ゴールドウィング賞)の父シニスターミニスターは、デビューから3連勝で兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを制したハヤブサマカオーも出している。フウジン(兼六園ジュニアカップ)のアッミラーレは、ハッピースプリントの父でもある。
 トゥリパ(兵庫若駒賞)は全兄にブレイヴコールがいることは先に触れたが、さらに全姉には2014年に名古屋・ゴールドウィング賞を制したヒメカイドウもいて、カルストンライトオ産駒はここまでのところこの3きょうだいのみが重賞勝ちとなっている。また母の父ユートカイザーは、サンデーサイレンス産駒ながら大井からのデビューで注目され、重賞こそ勝てなかったものの、東京ダービー2着、スーパーダートダービーGⅡ・3着など活躍した。
 ソイカウボーイ(サッポロクラシックカップ)はトビーズコーナーの2世代目の産駒で、初めての重賞勝ち馬となった。また、母のシャイニングサヤカはビューチフルドリーマーカップを制している。
 リコーワルサー(鎌倉記念)の父ブラックタイドは、今やキタサンブラックの父として有名。ディープインパクトの全兄でありながら当初は手頃な種付料もあって、地方にも重賞勝ち馬が多く、また中央の芝でも活躍するオールマイティな種牡馬となった。
 キングランシーン(九州ジュニアチャンピオン)の父ベーカバドは、これが3世代目の産駒。活躍馬のほとんどが地方で、今年の2歳馬からは、JRA札幌のクローバー賞を制し、札幌2歳ステークスGⅢでも3着に入ったダブルシャープも出している。

文:斎藤修
写真:いちかんぽ