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年度代表馬ラブミーチャン、JRA桜花賞へ向け地元凱旋


取材・文●斎藤修
写真●NAR

 笠松競馬場の3歳重賞としては年明け最初に行われるゴールドジュニア。過去にはオグリキャップ、マックスフリート、トミシノポルンガ、ミツアキサイレンスなど、笠松を代表する活躍馬が制した重賞だが、今年、2月12日に行われたゴールドジュニアも特別なものとなった。
 
 
 
 2歳馬として史上初の年度代表馬となったラブミーチャンの凱旋レースであり、またJRA桜花賞挑戦への壮行レースには、平日の昼間とは思えないほど多くのファンが訪れた。もはやその注目度は競馬ファンの枠を越えようかという勢い。それを象徴するのがテレビカメラの多さだった。
 何よりよかったのは、好天に恵まれたこと。前日の建国記念日は雨にたたられたが、この日は時おり晴れ間ものぞくほどに回復。こうしたこともラブミーチャンが持っている運の強さなのかもしれない。

 
多数のファンが集まったトークショー
 「神様に感謝したい」。これはNARグランプリの表彰式でオーナーのドクター・コパさん(小林祥晃氏)が語られた言葉だが、この日、レースを前に行われたトークショーでは、さらに「こんなにたくさん集まってくれたファンのみなさんにも感謝したい」と続けた。しかしファンも含めて地方競馬や笠松競馬の関係者からしてみれば、これほどの馬を地方所属として使い続けてくれることにこそ感謝したいという思いもあるのではないだろうか。
 
 
平日にも関わらず多くのファンがスタンドを埋めた
 パドックに出てきたラブミーチャンは、ときおりうるさいところを見せていた。濱口楠彦騎手が騎乗すると首を上下に振り、さらに元気なところを見せた。ただ、返し馬すらできなかった全日本2歳優駿JpnIのときほどではなかったようで、今回はスタンド前のラチ沿いにずらっと並んだファンに返し馬の姿を見せることはできた。
 普段、厩舎ではとてもおとなしいというラブミーチャンだが、パドックに入るとレースに向けてのスイッチが入るのか、目つきまで変わるという。今回はゲート入りも何度かイヤがった。「毎日やっているゲート練習では、一度で入ってくれるのに」と濱口騎手。もしかしてラブミーチャンは、レースに行くのがわかっていて、いざ走るための次のスイッチが入るのを待っていたのではなかっただろうか。
 
 
1周目 快調に飛ばすラブミーチャン(左)
 スタートこそいまひとつだったが、さすがにラブミーチャンの二の脚は他馬とはまったく違った。気合を入れることもなく、あっという間に先頭。競りかけていく馬はなくスローな流れとなり、2番手には4、5頭ほどが一団で追走する形となった。
 直線に入ったところで濱口騎手がうしろを振り返り、後続との差を確かめた。直線でもまったく手綱を動かすことなく、ゴールまでに計4回ほどうしろを振り返っただろうか。2着争いから抜け出してきたメモリーキャップとは2馬身の差を保って余裕のゴール。期せずしてスタンドのファンからは拍手が起こった。
 
 
楽な手ごたえでゴール板を駆け抜けた
 
 
ウイニングランで歓声に応える濱口楠彦騎手
 
表彰式に先立って行われた口取り撮影
 通常、笠松競馬場ではスタンド前の一角に設けられたウイナーズサークルで表彰式が行われるが、この日は特別にコース上での表彰式となった。
 「ディープインパクトの金子オーナーの気持ちが少しわかりました」と笑いを誘ったドクター・コパさん。負けるわけにいかないレースを前にしての正直な気持ちだっただろう。実力からすれば、普通に回ってくれば負けることはない。ただ競馬は実際にやってみなければ何が起こるかわからないのも事実。結果的に予想通りの楽勝だったとはいえ、関係者ばかりでなく、ラブミーチャンを見に来た多くのファンにとっても、「ホッとした」という思いのほうが大きかったのではないだろうか。

 
 最終レース終了後には、ドクター・コパさん、柳江仁調教師、濱口楠彦騎手が揃って共同記者会見も行われ、かねてから言われていたように、フィリーズレビュー(3/14・阪神)から桜花賞(4/11・阪神)を目指すことが確認された。
 
レース後に行われた記者会見
 当初、ラブミーチャンはコパノハニーという馬名で中央に入厩。しかし環境が合わなかったのか、仕上げることができず笠松に転厩してきた。普通ならそこで大舞台への挑戦は諦めてしまいそうなところだが、そこはさすがにドクター・コパさん。「方角的にも笠松は強い馬が出る場所なのはわかっていました。ただ、それがまさか自分の馬だとは思わなかった」と。柳江調教師にJRA桜花賞とオークスへの一次登録をしておくように指示していたというのも、ラブミーチャンが持っている強運なのだろう。
 
 
地元凱旋レースを制し、春の大舞台を見据える
 ここまで6戦全勝。中央の舞台も経験しているし、JpnIも勝った。気になるのは、やはり次は芝で一線級との対戦となること。しかし陣営にとっては、むしろ期待のほうが大きいようだ。実はラブミーチャンは、調教ではまだ目一杯に追われたことがない。「併せ馬で4〜5ハロン、びっちり追い切りができるようになれば、もっともっと成長してくれると思います」(柳江調教師)。「柔らかい馬で、飛びも低いので、芝の適性はあるんじゃないかと思います」(濱口騎手)。
 かつて笠松からは、ライデンリーダーが地元で10戦無敗のまま中央に挑戦。4歳牝馬特別(現・フィリーズレビュー)を制し、1番人気で本番の桜花賞に出走したが、中央の厚い壁に阻まれ4着だった。ラブミーチャンには、さらにその上へという期待がかかる。そうした期待について、ドクター・コパさんは次のように締めた。
 「フィリーズレビューでは、桜花賞の権利を獲るだけじゃおもしろくないんで、できれば無傷のまま……。たぶん人生で二度とこんなことは味わえないでしょうから、どこまで幸せになれるか、ラブミーチャンと喜びを突き詰めてみようと思います」
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