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第70回 2014年5月20日 イワミノキズナ

貴重なデビュー戦(優勝)の写真は、福山エース・樋本さんが撮影したものです。ありがとうございます
Profile
 2012年に福山競馬場でデビューしたイワミノキズナ。ヤングチャンピオンでは福山の怪物カイロスを打ち破り、最後の福山ダービーはカイロスにクビ差の2着。福山最後の時期に出現したカイロスとイワミノキズナが繰り広げた名勝負は、これからも語り継がれていくことになるでしょう。

「(イワミノキズナは)どれほど前との距離があろうとも、どんな馬場であろうとも、騎手がGOサインを出すと毎回懸命に追い上げて差をつめていく“真面目”で“頑張り屋”の印象です。実況していた立場では、最後の最後まで視界に入れておかないといけない馬でした」と、福山競馬で実況をしていた西田茂弘アナウンサー。

 イワミノキズナは福山競馬廃止後に大井競馬へ移籍し、自慢の末脚は健在。同じように南関東へ移籍したカイロスとの再戦を待ち望んでいた矢先に、右前脚の不安を発症して引退しました。奇しくも、カイロスもほぼ同じ時期に同じ右前脚を痛めて放牧休養へ。2頭の偶然を越えたものを、感じずにはいられませんでした。

 イワミノキズナは埼玉県川口市にある埼玉馬事会(埼玉馬事会乗馬クラブ)で新しい生活をスタートさせています。これまでの疲れを取るためにのんびり過ごしていましたが、今は少しずつ練習を開始。脚元がもっとしっかりしてきたら障害を飛越する訓練をして障害馬術と馬場馬術の両方の練習をしていきたいそうですが、「私は馬場馬術の方をやってきたので、(イワミノキズナは)体が柔らかくて向きそうな感じなので力を入れていく予定です」と、この道50年という埼玉馬事会の場長さん。

 乗馬の世界に転向すると、馬名を変更するケースも多いですが、イワミノキズナは女の子のようにかわいらしい顔をしているので、『マリアン』と呼ばれているそうです。乗馬の大会に参加する際も、この名前で登録予定とのこと。

 「体は小ぶりですがしっかりしているし、ものすごく性格がいいんですよ。頭もいいし、人間に素直で不信感を持っていません。これまでたくさんの人たちに愛されてきた馬なんだろうなぁと思います。国内の大会でかなり活躍してくれるんじゃないかと期待しているところで、こんなにいい馬がうちに来てくれてありがたいです」(場長)。

 イワミノキズナの末脚をもう見ることができないのは本当に寂しくてたまりません。でも、新天地でこれほどまでに期待をされているお話しを伺って、今度はこの世界でトップを目指して欲しいと心から思いました。新しい世界で頑張っていくイワミノキズナのこと、これからも追い続けたいです。

引退レースとなった2014年2月6日大井10R
(1着・撮影:高橋華代子)



高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に取材活動中。
<掲載媒体>
・南関魂
・TCKホームページ
・楽天競馬
・WEBハロン
・馬事通信
・netkeiba.com
・ターファイトクラブ会報誌
・SPAT4ザ・ウィナーズ
など