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第74回 2014年9月19日 アローハマキヨ

写真提供:藤原直樹氏(2点とも)
 先日、ビッグニュースが飛び込んできましたね。長野県佐久市のスエトシ牧場にいるシャルロットが、五冠馬シンザンが持つ35歳3か月11日のサラブレット国内長寿記録を更新したと!!!

 シャルロットは1979年5月14日生まれ。競走馬として走っていた時の名前は『アローハマキヨ』で、大井競馬場に所属していました。当時のデータを見ると、1981年11月にデビューし、10戦目で初勝利を挙げ、通算2勝。1985年夏までの間コンスタントに走り続け61戦をし、最後は右前球節炎を発症してそのまま現役を引退したようです。

その後のシャルロットは、いくつかの乗馬クラブを渡り歩きました。24歳になり年齢的にも余生を過ごす場所が心配されていた頃、以前シャルロットに乗ったことがあるという女性オーナーが「自分が引き取って面倒を見たい」と申し出たそうで、そこからスエトシ牧場にやって来たそうです。今から11年前のことで、女性オーナーとの出会いがなければ、このような記録更新も生まれずに、シャルロット自体も脚光を浴びることがないまま生涯を終えていたと言っても過言ではありません。

 「最初に会った時から若々しくて長生きするだろうなぁとは思っていましたが、今でも若いですね。アバラは見えてきましたが筋肉は落ちないし、腰や、脚、蹄も悪くないのでピンピンしています。食べるスピードはゆっくりになりましたが食欲は変わりません。ヘイキューブはお湯でふやかしておかゆのようにしてあげていますが、あごの力は衰えていないので太いニンジンでもバリバリ食べます。風邪や大怪我もないし健康状態は良好ですよ」と専務取締役の藤原直樹さん。

 この走っている写真を何人かの厩舎関係者に見せると、「えっ?35歳なの?!」とその若々しさに衝撃を受けていました。「人間もそうかもしれませんが、馬に良くないのはストレスです。特別にいいエサをあげている訳ではないのですが、安心できる環境で自然の中で穏やかに過ごせているのもいいのかもしれません」(藤原さん)。性格は少々臆病な所はあるそうですが至って穏やかなタイプ。放牧時間帯になると、33歳になるセン馬のお友達とのんびり過ごしているそうです。

 最後に、シャルロットに望むことを伺いました。「このまま長生きをして欲しいというのはもちろんありますが、最後に苦しまないで幸せな亡くなり方をして欲しいというのが一番ですね。それはみんなに言えることだと思います」(藤原さん)。

馬の養老院牧場として90頭近くの馬やポニー、またさまざまな動物と暮らし、避けては通れない死の部分と常に向き合っている藤原さんが言う言葉だからこそ、重かったです。


 スエトシ牧場ホームページ⇒http://www.bokujo.co.jp/




高橋華代子(たかはしかよこ)
元NHK山形放送局キャスター。
現在は南関東競馬を中心に取材活動中。
<掲載媒体>
・南関魂
・TCKホームページ
・楽天競馬
・WEBハロン
・馬事通信
・netkeiba.com
・ターファイトクラブ会報誌
・SPAT4ザ・ウィナーズ
など